情緒ある色合い FUJIFILM S3Pro

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目次
ギャラリー
作例の撮影は以下のレンズを使用した。
- Voigtlander ULTRON 40mm F2
- TAMRON SP 17mm F3.5 151B
- TAMRON SP 180mm F2.5 63B
- SIGMA 50mm EX DG HSM
レビュー

1.概要
FUJIFILM FinePix S3 Proは、2004年11月に発売された、スーパーCCDハニカム SRIIを搭載したデジタル一眼レフカメラ。
詳細な仕様は表に載せているが、主な仕様を抜粋すると以下の通りである。
- 有効1234万(S画素617万+R画素617万)画素、総1290万(S画素645万+R画素645)画素
- APS-Cサイズ スーパーCCDハニカム SRIIセンサー搭載
- 単三電池4本駆動
- ニコンFマウント
- XDピクチャーカードとコンパクトフラッシュの2スロット
すでに20年前の一眼レフカメラで、動作のゆったりさに時代が感じられる。
画像センサーがフジフィルムオリジナルのハニカムセンサーを搭載しており、一般的なベイヤーセンサーがほとんどを占める一眼レフカメラの中ではFOVEONセンサーと並んで貴重な存在だ。
ハニカムSR IIはAPS-Cサイズセンサーなので、レンズの焦点距離は35mm判換算で1.5倍となる。
2.使用感
FUJIFILM FinePix S3 Proの精製画像の特徴は、記録されるJPG画像の色に独特の情緒があり、この特徴的な画像はフジフィルムがフィルム時代から培ってきた個性と言える。
データはセンサーの基本画素数が600万画素なので、1200万画素で記録した画像は拡大していくと、解像感が失われていることがわかる。
このカメラRawデータも1200万画素、600万画素、300万画素と記録画素数を選択可能で、1200万画素を選択した場合、4256×2848ピクセルでRawデータ(RAFファイル)のファイルサイズは約26MBとなる。
一般的な1200万画素センサーの非圧縮データが12MB程度になるためデータ量は約2倍となっており、S画素1200万画素、R画素1200万画素のデータを保存していることになる。
しかし、カメラのセンサーそのものはS画素とR画素それぞれ600万画素しかないため、1200万画素モードで記録したRawデータは補完したデータを保存していることになるため、センサーの素データを保存するのであれば、600万画素モードが適正で十分と言うことになる。
S3ProのRawデータを現像可能なソフトウェアとして、RAW FILE CONVERTERがあり、これは汎用Raw現像ソフト SILKYPIXのFUJIFILM専用版で、こちらも対応カメラにS3Proがある。
RAW FILE CONVERTER EX 3.0 powered by SILKYPIX 対応情報
RAW FILE CONVERTERはS画素、R画素を個別に処理するような機能はなく、ほかに所有しているRaw現像ソフトウェアはHASSELBLADのPhocus、Affinity Photo2がS3ProのRaw画像に対応している。
3つのソフトのデフォルト現像の結果の見た目に顕著な違いを確認することができなかった。データをバイト単位で覧れば違っているのかもしれないが、そこまで微細な差違を追求する気にはならない。
一点気になるのは、これらのソフトウェアはメインのS画素データのみ処理しているかもしれないと言うことだ。
それは、s7rawというWindows専用の現像ソフトを使うと、S画素とR画素の混合比率を変えたりできる。
このソフトはMac用はないのが残念な点で、Intel(AMD)-CPU向けに32bitと64bit版が用意されている。
公式ページのダウンロードリンクは切れているが、SOFTPEDIAからはダウンロードできる。もちろん古いフリーソフトなので動作させる場合は自己責任でお願いする。
ダウンロードしたソフトをWindows 10で使用したところ、問題なくFinePix S3Proのデータを処理できた。S側には通常の色データ、R側にはダーク側のデータが記録されていることが確認できた。これは従来のハニカムCCDセンサーと同様に黒つぶれにはつよいが、白飛びにはほとんど効果がないことを示している。


また、先ほどの懸念に繋がるS画素データのみを処理しているのでは?という懸念に対して、S画素データとSR画素混合データの比較をみると、色の深みにわずかな違いがあり、SR画素混合データの方が深みが濃いことがわかる。


他の3つのソフトで処理したデータは、S画素のみを処理したデータに近い印象があるため、汎用ハニカムSRデータを処理するRaw現像ソフトはS画素しか見ていないのでは無いかと思うところである。ギャラリーにAffinity Photo2のストレート現像データを置いてあるので、圧縮画像だが色味の違い程度は確認できる。
このカメラ、バッテリーに単三形電池4本を使用する。1.2Vのニッケル水素電池でも400枚の撮影が可能であり、この電圧で動作するならば、非常時はアルカリ電池4本でもそれなりの枚数を撮影することができると考えられる。
ときどき、無性に使いたくなるハニカムセンサー一眼レフカメラだが、レンズマウントが他社レンズを使いづらい、ニコンFマウントのところが使用を躊躇わせる。
3.まとめ
結論としてFUJIFILM FinePix S3 Proをまとめると、大判ハニカムSRセンサーのつくる画像は個性的で20年経過した今でも一部に人気があることは理解できる。しかし、カメラそのものがかなり古いわりに中古価格は高値安定している割には、実際の使用にはストレスが溜まる部分も多いため、撮影者のスタイルに合うカメラか考える必要がある。
仕様・考察など
一眼レフ形式のFinePix Sシリーズは、ニコンのカメラをベースに4機種が発売された。
最初のS1 Proはフィルムカメラ Nikon F60がベースのデジタルカメラで、S2 Pro、S3 Proはフィルムカメラ Nikon F80をベースにしている。S5 ProはデジタルカメラのNikon D200がベースになっている。
いずれのデジタルカメラも、ボディ外装やシャッターなどのメカ機構はニコンから提供を受けているが、カメラの画像を処理する基板類はフジフィルムのオリジナルで、ボディ形状も液晶ディスプレイの搭載、内部基盤などに合わせて変更されている。フィルムカメラベースのS1 Pro、S2 Pro、S3 Proは電力消費の激しいデジタルカメラ向けに、単三電池4本を搭載するためにボディ下部が大型化している。
S5は元々がデジタルカメラベースなので、ベースカメラと大きな違いは無い。
その後、FUJIFILMは一眼レフの展開を諦め、レンズ交換式ミラーレスカメラに活路を見いだし、APS-CサイズセンサーのXシリーズと中判デジタルセンサーのGFXシリーズを展開しているの周知の通りだ。
S5 Pro以降ハニカムセンサーの新型は登場していないが、これはベイヤーセンサーの画素数向上と画像処理のノウハウが上がったことにより、ベイヤーセンサーでもフジフィルムの色再現が可能になり、コストをかけてセンサーを新開発するメリットがなくなったためと考えられる。
しかし、フィルムメーカーの矜持かセンサー前に置くカラーフィルターを「X-Transカラーフィルター」に置き換えたセンサーを一部のカメラに搭載している。これも画像処理と組み合わせてフジフィルム独自のカラーを出しやすいようにしているとのことだが、GFXで採用していないところを見るに、他者との差別化のためのマーケティング要素も大きいと感じられる。
ハニカムセンサーと比較されることも多いFOVEONセンサーだが、両社はまったく異なる思想で作られている。端的に表現すると、FOVEONはひたすらドット間の色分離を追求し、正確さや解像感を重視した絵作りを指向している。それにたいして、ハニカムセンサーは最終的に記録される画像が人が見たときに心地よい印象を与える絵画的な絵作りを指向している。
両者ともにベイヤーセンサーにはない欠点が存在しており、ハニカムセンサーの画像はモニター上のドット バイ ドットであら探しをすると、ヘンな模様がでたり、クッキリとした境目が滲むなど問題が見えてくる。FOVEONは部分的な色分離は正しいが、カラーバランスを含め全体として破綻することもある。
ベイヤーセンサーも完璧ではなく、色が飽和しやすい、解像度が落ちるなど欠点があるため、学術的な記録写真を撮るのではなく、趣味的な撮影者の立場からは、最終的な絵作りの好みで判断すればよいと、様々なカメラを使って経験から感じる。
項目 | S1 Pro | S2 Pro | S3 Pro | S5 Pro |
カメラ有効画素数 | ハニカム配列 304万画素 | ハニカム配列 617万画素 | 1234万画素(S画素:617万画素、R画素:617万画素) | 1234万画素(S画素:617万画素、R画素:617万画素) |
センサー | スーパーCCDハニカム | スーパーCCDハニカム III | スーパーCCDハニカム SR II | スーパーCCDハニカムSR Pro |
センサーサイズ | APS-C | APS-C | APS-C | APS-C |
マウント | Nikon-F | Nikon-F | Nikon-F | Nikon-F |
背面液晶 | 2型 20万画素 | 1.8型 11万画素 | 2型 23.5万画素 | 2.5型 23万画素 |
ファインダー | 光学式アイレベル式(視野率:上下約90%、左右約93%) | アイレベル式ペンタプリズム使用、視度調節機構内蔵 | アイレベル式ペンタプリズム使用(視野率 上下約93%、左右約95%)、視度調節機構付き、ファインダー倍率約0.8倍 | アイレベル式ペンタプリズム使用(視野率上下左右約95%) 、視度調節機構付き、ファインダー倍率約0.94倍 |
バッファメモリ | – | – | グレーバッチ 128MB ブルーバッチ 256MB | – |
画像処理エンジン | 名称無し | 名称無し | 名称無し | 名称無し |
バッテリー | 単三 x4 3V リチウム電池CR123A 2本 ボタン型リチウム電池CR2025 1個(時計用) | 単三 x4 3V リチウム電池 CR123A 2本 | 単三 x4 | NP-150 |
記録メディア | コンパクトフラッシュ スマートメディア | コンパクトフラッシュ スマートメディア | コンパクトフラッシュ XDピクチャーカード | コンパクトフラッシュ |
外形寸法(mm) 幅 x 高さ x 奥行 (LCD部、突起部含まず) | 148.5 × 125 x 79.5 | 141.5 × 131.0 × 79.5 | 147.8 × 135.3 × 80.0 | 147.0 × 113.0mm × 74.0 |
重量(g) (本体のみ) | 約800g | 約760g | 約815g | 約830g |
リリース年 | 1989.7.8 | 1991.6.21 | 2004.11.30 | 2007.1.31 |
価格 | 375,000円 | 310,000円 | オープン | オープン |
参考情報
- FinePix S3Pro・フジフィルム公式
- FinePix S5Pro・フジフィルム公式
- s7Raw公式ページ
- s7Raw Download ページ for Windows
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更新履歴
- 2025.9.1
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