スウェーデン国立美術館 素描コレクション展

スウェーデン国立美術館 素描コレクション展
eye catch

2025年9月13日に鑑賞した、「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展」国立西洋美術館の感想

  • アソビューにて、「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」チケット取り扱いあり

目次

展概要

  • 展題:スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで
  • 日付:2025年7月1日[火]-9月28日[日]
  • 場所:国立西洋美術館

本展は国立西洋美術館の企画展示室を使用しているが、階段を利用して移動する部屋は閉鎖されており、フラットな展示室となっている。

展示の章立ては以下の通り。

  • 0章 素描とは
  • 1章 イタリア
  • 2章 フランス
  • 3章 ドイツ
  • 4章 ネーデルランド

会場内は全作品撮影可能となっているが、作品撮影をがんばるくらいなら図録(税込み2500円)を買うのがよい。
図録は2025年9月13日現在、美術展ナビの通販は売り切れになっているが、美術館では購入可能で、9月13日に購入した際の本は2刷り目に入っていた。
初刷りが無くなるほどに売れているようなので、会期終了間際になると売り切れている可能性がある。
ISBNが付いている一般図書だが、どの程度の札数を刷るかは不明。

作品の鑑賞方法は人それぞれだが、順番にベルトコンベアー式で鑑賞すると、作品点数は84点あり、小さい作品も多いことと、鑑賞の進みが他の鑑賞者に左右されるため、列の後ろから作品をざっと眺めて気になる作品の細部まで集中してみるのもよいかもしれない。

感想「芸術作品の根源をみる」

0章 素描とは

ここでは、素描という概念について、その目的、画材、技法について丁寧に説明されている。

とりわけ印象的な記述について引用(「」内、展示説明より引用)するとは、素描の制作目的は「絵画など美術作品の構想にかかわるものです。」と素描が鑑賞を主目的としたものでないと綴られたあとに、「コレクター向けの売り絵として手がけられることもありました。」とつづく下りを読んで、現代でも完成作品ほど手間をかけずに収入を得る手段としてドローイングの販売がおこなわれているので今も昔もそれほど変わらない。

本コレクションの特徴などは、公式図録を見るのがもっともよく、館内のキャプションなどは国立西洋美術館の公式ページが配布しているPDFに詳しく載っている。ここでは印象に残った作品について記す。

1章 イタリア

・《若い男性の立ち姿》アンニーバレ・カラッチ

黒チョークによるあたり付けがいかにも構想段階のスケッチで、人物の所作、服装が見事に表現されており、これが作品となった姿を見てみたいと思わせる作品だった、

2章 フランス

・《蛙男》ニコロ・デッラバーテに帰属

この作品は、蛙の頭部塘路湖を持ったヒトが描かれており、造形の奇抜さがとても印象に残った。

フランス作品は素描とは言え完成度の高い物が多く、見応えがある展示コーナーになっていた。
ジャック・カロが描いた《聖アントニウスの誘惑》はドローイングとエッチングが並べて展示されており、構想と作品の違いを見比べることができた。

3章 ドイツ

・《三編みの若い女性の肖像》アルブレヒト・デューラー

デューラーは版画で作品を目にすることが多い作家だが、今回展示されていた黒チョークと木炭で描かれた女性像は、版画とは異なる温かみを感じさせる作品で瞳の表現とても印象的だ。

4章 ネーデルランド(オランダ、ベルギー付近)

・《アランデル伯爵の家臣、ロビン》ペーテル・パウル・ルーベンス

ルーベンスは工房による大作のイメージがつよいが、ここではそれを支える緻密な下絵を見ることができる。作中に注意書きがあるなど、ルーベンスの創作に一端に触れることができる。

《空飛ぶ雀・Flying Sparrow》ジョヴァンニ・ダ・ウーディネ
《空飛ぶ雀・Flying Sparrow》ジョヴァンニ・ダ・ウーディネ の切抜き装飾

余談:現代ドローイング事情

コンピュータ制作が普及し電子データでドローイングをおこなう場合は、それを価値あるものとして流通させるのは難しい。一時はやったNFTは電子データとしての作品に価値を与える可能性はあったが、複製とオリジナルが限りなく一致するデジタルデータにおいて、所有者の証明だけでは最終的に物としても価値に繋がらなかったという事実があり、それは焼け野原になったNFT市場が今も語っている。

以前、お話をした某先生が、コンピュータドローイングする生徒に「実際に手で描いたものを残しておくと、それに価値が出たりするので物で残した方がいい。」と言っても若者には響かないとぼやいていたのは印象的だ。最近の若者が恵まれており金銭的に不自由していないのか、物を残さないことに対する人の考え方はそれぞれ違うので、一概には言えないが世代ギャップの一端が感じられるエピソードだ。

また、ギャラリーで作品をみていると、ドローイングなどの習作を販売しているのは、作家の作品価値がライト層が買える一線を越えたことにより、作品の入手性の悪さを補い作品を鑑賞者へ届ける手段としているケースも見られる。

参考情報

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撮影

  • LEICA T typ701 +SIGMA 20mm DG DN
  • PANASONIC LUMIX DMC-LX7

更新履歴

  • 2025.9.14

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