DIC川村記念美術館
最後の企画展?
西川勝人「静寂の響き」鑑賞の記録
目次
展覧会概要
- 西川勝人「静寂の響き」
- 2024年9月14日(土) - 2025年1月26日(日)
- 時間:9:30-17:00(入館は16:30まで)
- 休館日:月曜(ただし祝日の場合は開館)、9月17日(火)、9月24日(火)、10月15日(火)、11月5日(火)、12月24日(火)-1月1日(水)、1月14日(火)
- 主催:DIC株式会社
- 後援:千葉県、千葉県教育委員会、佐倉市、佐倉市教育委員会
鑑賞記録
2025年の3月で休館となる、DIC川村記念美術館を訪問した記録をまとめた。
訪問日は2024年10月30日水曜日、記録は訪問日のものであり、会期末になると混雑などのため美術館の利用システムが変わることは十分に考えられるため、訪問前には美術館公式情報の確認をお勧めする。この美術館はコロナ禍において完全予約制を実施していたこともあり、予約受付などに関する運用のノウハウは持っている思われる。
<目次>
美術館へは神奈川県から車で向かった。首都高の渋滞が恐ろしいので6時にうちをでて、コメダ珈琲・佐倉王子台店に7時30分くらいに到着して朝食にした。こちらからDIC川村記念美術館までは下道で30分程度の距離で、8時50分に出発して9時20分くらいに現地に到着した。
すでに数名が入場券購入待ちをしていた。また、9時25分くらいに最初の無料送迎バスが、京成佐倉駅、JR佐倉駅から20名程度をのせて美術館にやってきた。
美術館の入口は、券売機横と庭側にあるが、券売機横の入口で待っていると9時半前に警備員がやってきて門を開けて、「門は開けますが、チャイムが鳴ってから入場をお願いします。」と案内をされた。
<西川勝人「静寂の響き」>
展示は大きく2つのブロックに分かれており、1つは以前はバーネット・ニューマン《アンナの光》、現在はサイ・トゥオンブリー、彫刻《無題》、絵画作品《無題》が置かれる部屋が企画展示室として使われている。
この部屋は外光が入るため時間によって作品が変化するのが特徴で、今回の鑑賞では小雨が降る薄暗い午前中、日の差してきた昼間で展示室の雰囲気は大きく異なっていた。
展示作品である、正面のパネル作品《静物》は何層かのパネルが重ねられており、みる角度、部屋の明るさでパネルの色に変化がみられる。そして、床に置かれた5つのガラス作品《フィザリス》は、部屋が薄暗いときは作品が周囲の木々をのみ込み、部屋に日が差し込むと光を拡散して輝く。
太陽の動き、雲の動き、天気の移り変わりによって時々刻々と変化する作品、一度の鑑賞ではなく、会場を一回りしてから再び部屋を訪れるときっと違う景色を見ることができる。
最初の展示から次ぎの展示に続く通路に、絹の作品が並べられ、歩きながら鑑賞すると繊維に反射した光が表情を変えていく。
通路を越えた先の展示室は大きく二つにわけられており、1つめの部屋は教会のようで、いくつかのオブジェ、両サイドに写真とドローイング、背面には貝をあしらった扇形のオブジェ、正面のパネル作品《静寂の響き》白は白だが黒に見えるパネルは近寄っていくと紺であることがわかる。視覚の不思議を感じる。
次の部屋は、今回の展示は基本的に自然光のみとなっており、外光の量によって空間そのものの明るさが変化する。午前にみたとき、食事後の午後にみたときで、展示室の色がまったく異なることに驚きをおぼえた。作品は目線の高さを変えることにより、作品の重なりから生まれるフォルムを見いだすことが楽しかった。
シナガチョウ、白鳥、鴨がくつろいでいる、池の中に作品No.73《佐倉の月》があるので忘れずに鑑賞したい。
茶室の予約をして展示室に向かったので、ほぼ無人で作品を鑑賞できる時間があったのは贅沢だった。作品展示にゆとりがあるため、鑑賞者がそれなりにいる時間でも、静けさを楽しむことができた。この企画展が最後とならないことを願う。
<屋外>
秋薔薇は見頃、紅葉はまだまだ、あと1ヶ月くらいするともみじの葉が見事に赤くなるが見に来ることができるかな?ここ数年は秋にこちらに訪問できていない。
屋外にもいくつか、パブリックの作品が置いてある。こちらもどうなることやら。
鳥たちも、餌を貰ったりしているようだが、こちらは研究所の管轄なんだろうか?
<茶室>
9時半のチャイム後に入場をして、茶室が予約制とのことではじめに茶室の予約に行った。
茶室の予約は、茶室前の看板に貼られたQRコードをスマホに読み込んで、茶室利用枠を予約する必要がある。茶室は1回の枠が30分の利用時間で、茶器の片付けのための時間がとってあるため、、1日6回か7回の利用枠がある。
10時半の枠が取れたので、茶室利用時間まで1時間程度あるため館内を鑑賞してまわる。10時25分くらいに茶室に行くとすでに人が並んでいた。窓側の席を取るためには、事前に並ぶ必要があるようだ。
ここでの支払いは、現金かPaypayで、携帯キャリアによっては電波の入りが悪く、Paypay決済で詰まることがあるようなので、DIC川村記念美術館のフリーWi-Fiを設定しておくのが無難なようだ。
窓側の席は先客様に陣取られたため、後ろ側の席で茶菓子「光の華」800円、企画展コラボメニュー「フィザリス」1000円をいただいて、窓側の人が去った後、最後になるかもしれない茶室の景色を楽しんだ。
<レストラン>
お昼ご飯の予約ために、10時くらいにレストラン「ベルヴェデーレ」に行ってみたが、まだ扉が開いてなかった。予約の開始はもう少し後のようだった。11時の開店後に予約に行くと7組待ちだったので、ちょうど昼過ぎに食事ができそうなので予約した。
館内で作品を見回っていると、12時過ぎに席の準備ができたと案内が来た。予約時に発行される紙に記載されたQRコードから席の準備ができた案内メールを受け取ることができる。
案内を受けてからレストランに向かうと、平日にもかかわらず、レストランは昼時ということもあり混んでいた。その混んでいるにもかかわらず、ちょうど窓側の席に案内されて景色を眺めながら昼食をとることができた。
ローストビーフとカジュアルコースのパスタ料理を頼んだところ、ローストビーフはすぐにサーブされたが、パスタの到着にはそれなりに時間がかかった。こちらのレストランも最後の利用かもしれないので、「西川勝人 静寂の響き」展の特別メニュー「ほおずきのカッサータ」を食後に頼んだ。
食事後に案内人数をみると12人待ちになっていた。向かいのショップは臨時休業だった。
<休館について>
2024年8月27日に、DIC川村記念美術館の親会社、DIC株式会社より、「美術館の運営方針を見直すために、2025年1月下旬より休館する。」との案内が発表された。
DIC株式会社の「価値共創委員会」とやらの提言によるものらしい。
美術品の価値に対して、資本効率が悪いという美術鑑賞者からすると驚きを感じる提言だが、現実的には、いまの場所で運営し、無料送迎バス、館を維持するための人員などなどを、入場料でまかなって黒字がでるような状態にすることは難しいだろう。なので「価値共創委員会」の提言する運営方針の見直しというのは、「企業のために金を生まない、含み益のある資産は今すぐ現金化しろ。」と言っているように思えてしまう。
それに以前からこの会社は業績が悪いときに作品売却して会社の利益補填をした実績があり、代表的な例で、2013年のバーネット・ニューマン《アンナの光》を海外企業に売却、2017年に所有する20点あまりの日本画作品の売却はニュースにもなった。今回はより大規模に事態が進行しているように感じられる。
美術館の設立者である川村勝巳氏が、作品を美術館を運営する財団に寄贈して財団が所有して美術館を運営する形であれば、このようなことになる可能性は低かったのだろうし、運営の手助けをすることも比較的容易であったと思われる。しかし、作品が会社の資産となっているため、資本の論理を押しつけてくる株主に対抗するには、企業を買収して株主になるしかないわけで、美術館のためにそれを実現するのは難しいような気がする。
過去にも企業や個人が持っていた作品が、金の切れ目と共に散逸していった例はたくさんあり、今回の事態がどうなるかわからないが、作品が残り観賞場所が残る方向で収束してくれることを願わずにはいられない。
ギャラリー
使用機材
- LEICA S Typ007 +VARIO SONNAR 45-90 CONTAX645
- CANON G1X-Mark-II
- iPhone 12 mini
関連リンク
更新履歴
- 2024.1031
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