「岡本太郎に挑む 淺井裕介・福田美蘭」展
川崎市市制100周年・開館25周年記念
岡本太郎《明日の神話》と淺井裕介・《在処》
目次
感想
淺井さんの展示は、岡本太郎作品と正面に対峙し見つめ合っているように感じられる。
金津で多くの人に踏みしめられ、展示の最初に壁画として生まれ変わった《星、飛ビ散ル》をこえて現れる、《在処》と《残響》は《明日の神話》と対峙している。
《在処》は鑑賞者が靴を脱いで作品を踏みしめながら鑑賞することができ、作品をあるきながら横目に《明日の神話》をみながら、正面の《残響》に近づいていくのは、作品世界へ入り込んだような気分になる。
山梨の展示から作品に道を作ることからはじまった、作品に入り込む試みは、金津で作品の好きな場所を移動できるようになり、今回も同様の試みとなっている。金津よりも多くの人が訪れるであろうこの場所で作品がそのままなのか?変化するのか?行く末を楽しみにしている。
本展では制作ボランティアとして15日ほど作品《在処》の制作とその他もろもろ手伝いに関わらせていただいた。作品《在処》は作り始めから、ほぼ制作完了まで間近で見ることができた。
金津の壁画《太陽の一番近くへ》は部分を再構築して《太陽のルデラル》として展示されている。
山梨では作品内の通路が歩けた《命の寝床》は岡本太郎の作品と共に一部が展示されている。
組作品である、《その島にはまだ言葉がありませんでした 2020 愛知県美術館》、《野生の星 2020》、《組み合わせの魔法》はそれぞれ部位を入れ替えても作品が成立するようになっている。今回は3作品がすべて揃っているため、会期中に入れ替えがあると面白いと思うが、実施されるかは不明である。
《組み合わせの魔法》は、動物のタンパク質から精製して作る「プルシアン・ブルー」で描かれている。淺井さんの作品の中では、マスキングテープ作品には青が使われていたが、ペイント作品に使われることはあまりなかった。油彩画を描いているときにどんな色でも使えるのも善し悪しのようなことをうかがった気がする。泥という比較的限られた色の世界から、さらに豊かな色彩に踏み出す一歩のような気がする。今後の作品も楽しみだ。
《在処》は開催館への収蔵はないとのことで、展終了後にどうなるのかわからないが、2025年1月13日まではここに在るので、ときおり見に来ようと思う。
ボランティア活動については、こちらにまとめページを作成している。
福田さんの展示は、岡本太郎作品と寄り添い同居しているように感じられる。
岡本太郎のオリジナル作品を再構築、オリジナルを尊重した新作の制作を通じ、自身のインスタレーションとして展開している。
岡本太郎の《重工業》を回転させた作品は、物の見方は一様ではないことを示唆しており、解なき現代を象徴しているように感じられた。こちらは、エディション100枚の版画になっており、物販で売られているので興味のある方はお求めいただきたい。
岡本太郎の《戦士》を《輪投げ》の的として再構築した作品の発想は見事だ。作品キャプションにもあるように残念ながら、実際に輪投げをして遊ぶことはできない。これは美術館として守るべき一線がありそれに遵っていることはもちろん理解できる。個人の勝手な思いだが、岡本太郎の生き方や考え方から想像すると、ご本人がいれば笑いながら許可してくれたような気がする。
ギャラリー
淺井裕介 作品
福田美蘭 作品
常設展示(淺井裕介と福田美蘭が作品を選択して展示)
展覧会概要
- 展名:「岡本太郎に挑む 淺井裕介・福田美蘭」展
- 展示内容
- 淺井裕介 約15点(平面、立体、インスタレーションなど)
- 福田美蘭 約15点(平面、インスタレーションなど)
- 岡本太郎 約30点(平面、立体、写真など) ※福田美蘭によるインスタレーション内で展示の作品を含む
- 場所:川崎市岡本太郎美術館
- 淺井裕介《在処》・制作期間:2024.8.22〜9.29
- 会期:2024.10.12〜2025.1.13
- アーティスト:淺井裕介,福田美蘭
淺井裕介は、今回の展示のために、川崎市岡本太郎美術館に構えた仮アトリエに1ヶ月間通い、《在所》《残響》《環魂》《いのちの手触り1》《いのちの手触り2》《命の足音-生田の森》《組み合わせの魔法》《マスキングプラント》8点を新たに制作した。
過去に作成した、《命の足音》3作品《その島にはまだ言葉がありませんでした /2020 愛知県美術館》《野生の星 /2020》《星、飛ビ散ル /2024》《太陽のルデラル /2024》《命の寝床 /2023》、油彩作品一点、陶器作品複数を出品している。
関連リンク
更新履歴
- 2024.10.20
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