ヒルマ・アフ・クリント展・東京国立近代美術館

ヒルマ・アフ・クリント展・東京国立近代美術館

「抽象のはじまり?」

東京都千代田区北の丸公園にある東京国立近代美術館で開催された「ヒルマ・アフ・クリント展」の鑑賞レポート。

目次

ヒルマ・アフ・クリント展

概要

展示は5章で構成され、展示作品数は配布リストによると140点+関連資料。
すべて、ヒルマ・アフ・クリント財団から提供されている。

  • 1章 アカデミーでの教育から、職業画家へ
  • 2章 精神世界の探求
  • 3章 「神殿のための絵画」
  • 4章 「神殿のための絵画」以降:人智学への旅
  • 5章 体系の完成へ向けて

展示フロアーは券売所のある1階フロアーすべてを使った展示、図録などは展示出口の特設売店で販売している。

館内撮影は可能で、SNS等への投稿時の規定は以下の通り。

感想

リーフに描かれたビビッドな色彩に惹かれて鑑賞に赴いた。
事前の先入観はほぼ無し、各媒体の展レポートなども全スルー、結果としてこれはよかったと思っていて、鑑賞を迷っている人は各種情報無しにみるのがお勧め。入館料はけっこうお高いので事前検討したくなる気持ちも分かるけれどね。

というわけで感想へ。

今回の展示入口は館入口を突き当たった場所が入場口になっている。
近美は展によって館入口そばの右からの入場と直進して入場を使い分けられるのは面白い。

1章 アカデミーでの教育から、職業画家へ

このフロアーは地味目の作品で構成されており、少し意外な感じがしたけれど、誰しも画業のはじまりがあることを感じさせ、素描など普通の美大生っぽい作品が並んでいる。
そして、近美はここも抜かりなく、《スケッチ、子供たちのいる農場[『てんとう虫のマリア』]》は裏面に自動描画で描かれたと言われる部分を鑑賞できるように両面で展示しており、鑑賞者の興味を惹くようになっている。
作品近くいるスタッフに伺うと、このことを教えてくれて、この後はこのような作品が続きますとのことだ。

2章 精神世界の探求

2章は3章への橋渡しで、《ユリを手に座る女性》が職業画家としての到達点のように感じられる。

3章 「神殿のための絵画」

そして3章、本領発揮という感じで面白くなってくる。
こちらには小品のシリーズと中作品が展示され、リーフに描かれているビビッドな色彩と抽象的なフォルムがあらわれる。

細めの展示室を抜けた先の大部屋が展示最大の盛り上がりを見せる空間で、巨大な10の最大物を鑑賞したら、けっこうおなかいっぱい。とりあえずグルッとから椅子に座ってのんびり眺める。

今回は4面に、左から2作品、3作品、2作品、3作品と展示されており、作品は円環を為しているとのことなので、10角柱で環状にするか、横いっぱいに展示できる場所で眺めたい気持ちになる。海外では横いっぱいに並べた展示もしているみたいだ。
10角柱は展示壁のコスト問題かな?、横いっぱいはスペースの都合で1作品、縦3m x横2.5m 程度なので横を10倍して幅25m + αの空間が必要になる。国立新美術館のGallery 1E. 2,000 m² (34.2 x 59.5m)は十分に展示できそう。

その後は、小品の《知恵の樹》5作品、《白鳥》10点、3面の《祭壇画》を展示した小部屋がフィナーレの趣を醸し出している。3章の最後に総括のようなパネルが出てるくるため、ここで展示は終了だと思ったら展示は4章、5章へと続く。

4章 「神殿のための絵画」以降:人智学への旅5章 体系の完成へ向けて

4章から5章にかけては、展をたたんでいくように淡々とした小品の展示が続く。3章までの大作による盛り上がりに比べると地味な作品たちで、玄人受けするのかもしれないけれど素人には若干物足りない。

これは作家が精神的な世界により傾倒したためか、グループ創作が行き詰まったのか、作家の年齢と共に創作意欲が衰えためか、理由は不明だけれどクリントという作家のおだやかな晩年をみるようだ。
晩年は自作の編纂作業に時間を費やしていたとのことなので、作家本人にとっても余生的な時間と思われる。

最後は作家の年表が掲げられ、付随する本や切り抜きが展示されて展示は終了する。

まとめ

初期アカデミックから自身のスタイルの確立、そこをピークにくだっていく美しい正規分布をえがいており、これがほぼ年代順に作品を展示したた結果ということから理想的な作家の生涯の1つと思えた。

鑑賞環境は、見どころの大部屋は椅子もあるためゆっくりと鑑賞できる。
小さい作品の展示部屋は空間がタイトで鑑賞者が多いと若干見辛いけれど、人がいない作品からみていくスタイルで大丈夫な展示構成だ。
写真撮影可なので、スマホ、カメラのシャッター音が気になる方は遅い時間とか人の少ない時間を狙っていくのがお勧め。

最初にも書いたとおり、初来日や初見の画家は先入観無しで鑑賞するようにしている。
どんな展示も専門的な知識が無くても十分に楽しめるし、興味がわけば再見するときに情報を仕入れていくとより楽しく鑑賞できるはず。

ギャラリー

作品写真はウェブにたくさんあるのでここにはのせていない。
作家の創作活動のまとめ、プロの鑑賞感想はアートビートさん他、クリントの伝記映画も公開されており、情報は豊富に揃っている。

関連リンク

更新履歴

  • 2025.5.11

撮影機材

  • HASSELBLAD X2D +XCD28mmF4P
  • SONY NEX-7 +E30mm F3.5

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