初宮崎オリジナル MS-MODE-S 50mm

初宮崎オリジナル MS-MODE-S 50mm

ゾナーの現代解釈

Ms-optics MS-MODE-S 50mm F1.3のレビューと写真作例

目次

ギャラリー

写真作例の撮影はライカ M8.2とHASSELBLAD X2D

レビュー

Before imageAfter image

1.概要

MS-Mode-S Dual lens 50mm F1.3は、2006年にMS-Optics(旧:宮崎光学)が初めてリリースした、ゾナー型レンズを現代の技術でアレンジしたオリジナルレンズ。

レンズ構成は4群5枚、最短撮影距離は1mでレンジファインダーカメラの距離計に全域で連動する。

フィルター径は49mmで正位置でフィルターをねじ込む、専用のネジ込みスリットフードが用意されている。

レンズはレンズガラス部とヘリコイド+マウント部を分離することができて、マウント部はL39スクリューマウントとニコンS、コンタックスCマウントの2つが提供された。

販売も以下3形態で売り出された。

  • L39マウント版
  • ニコンS、コンタックスCマウント版
  • 両マウント同梱版

所有しているのは両マウント同梱版で最初から装着されていたL39スクリューマウントのまま使用している。
ニコンS、コンタックスCマウントの部品はあるけれど変更したことはない。

L39スクリューマウント版のヘリコイド+マウント部分は、Ms-opticsが市販の50mmレンズをL39スクリューマウント、Mマウント改造するときに使用する既成のMS-51.6が使用されている。

このレンズがリリースされた2006年は2000年初頭の藤澤商会、RICOHなどのL39マウントレンズブームが沈静し、COSINAがVoigtlanderブランドでレンジファインダー関連製品のラインナップを縮小していた時期で、レンジファインダーカメラの細々とした火が消えかからんとしていた時期にあたる。このレンズも知る人が知る存在で東京近郊の中古カメラ屋も在庫として持て余していた。この後、ミラーレスカメラによって、M/Lレンズの需要は爆発するわけだけれど、それはもう少し先の話だ。

2.使用感

MS-MODE-S 50mm F1.3のヘリコイドは従来から定評のあるMS-51.6でスムーズなフォーカスができ、距離計連動部分も正確に動作しておりレンジファインダーカメラの二重像によるピント合わせもまったく問題ない。

作例にあるとおり、描写も絞り開放はふんわりと柔らかく、絞れば端正な像をうみだす、Ms-optics・宮崎氏の理想をよく実現しているレンズだ。

中判デジタルセンサー 44mm x 33mmで撮影したところ、四隅がケラレイメージサークルは足りないことが分かる。しかし、33mm x 33mmはかろうじて使える程度には残っており、外隅の画像もそれほど崩れていない。35mm判フルサイズセンサーで使うには余裕のあるレンズだ。

このレンズを購入したことで、その後Ms-opticsレンズを購入しつづけることになる思い出深いレンズである。
当時はレンジファインダーカメラの需要が限りなく低い時期で、銀座のカメラ市で見かけて、カメラ屋のオヤジと価格交渉をして、けっこうお安く譲っていただいた。
しかし、時代は変わり「値切りはよろしくない。」と言われ忌み嫌われる世の中である。関西人の枕詞も使えなくなってきた。

このレンズは手組なのでゴミの混入などあるため、宮崎氏に清掃を依頼したところ、「このレンズは構造的に分解清掃は難しいのでやめておいた方がいい。」とやんわりと断られたため今も購入当初の状態で使用している。

3.まとめ

結論としてMS-MODE-S 50mm F1.3をまとめると、レンジファインダーレンズ冬の時代にリリースされたレンズ。Ms-Optics無名時代のレンズで製造精度も良くないため、レンズの個体差は大きい。中古を見つけたときは自分のカメラとの相性を確認した方がよい。

リニューアルされたSONNETAR 50mm F1.3は同じレンズ構成で外観、組み立て精度が良くなっている。

仕様・レンズ比較

MS-Mode-Sは概要に記載したように、レンズ構成4群5枚、絞り開放値F1.3のレンズである。本レンズは2022年にSONNETAR 50mm F1.3として再リリースされる。

MS-Mode-Sをリリーズ後、宮崎氏はゾナー型レンズをさらに大口径化するべく研究を続け、2013年にSONNETARの名前で50mm F1.1までスペックアップする。

さらに宮崎氏は絞り開放値 F1.0を目指してゾナー型で設計を繰り返したが納得のいくものは出来ず、2019年にガウス型のISM-GA 50mm F1.0をリリースすることになる。これはガウス型レンズによって存在の薄れていったゾナー型レンズの歴史をなぞるようで面白い。

SONNETARシリーズには、ライカMマウント向け以外に、PENTAX Q向けのSONNETAR 25mm F1.1がある。このレンズは初期にマイクロフォーサーズ向けに同じスペックで製造の企画があったけれど、それは試作品数本だけで製品化されなかった。製造用の部品を流用してイメージサークルの小さなPENTAX Q向けに150本ほど生産された。

カールツァイスからリリースされたC SONNAR 50mm F1.5は、絞り開放値がF=1.5とオリジナルと同じ値になっており、レンズ構成も後群の3枚貼り合わせを再現している。これは過去へのオマージュのためだ。Ms-Opticsの宮崎氏は後群の2枚貼り合わせにコーティングを施すことで旧来のゾナーと同じ性能が出せるように設計し、後群は2枚の貼り合わせにしている。

Before imageAfter image
項目MS-Mode-SC SONNAR
製造者Ms-opticsCarl Zeiss
焦点距離(mm)5050
最大絞り1.31.5
最小絞り1616
絞り羽根1210
レンズ構成4群5枚4群6枚
最短撮影距離(m)1m0.9
レンズ長(mm)3745
レンズ最大径(mm)5056
フィルター径(mm)4946
重量(g)110250
リリース年20062006
価格¥100,000-¥105,000-

参考情報

更新

  • 2025.5.16
  • 2024.02.15:改稿
  • 2022.01.26:初稿

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