CANON PowerShot G1X mark II
二代目ハイエンドコンパクト
PowerShot G1X mark IIのレビューと写真作例
目次
ギャラリー
レビュー
1.概要
キヤノン・PowerShot G1X Mark-II1(以下、G1X2)は2014年に発売されたカメラで、センサーサイズ1.5インチとフォーサーズ・マイクロフォーサーズカメラよりも大きなセンサーを積んだレンズ一体型デジタルカメラ。
パワーショット シリーズの最高クラスGシリーズの2代目カメラで、1.5インチサイズセンサー、24mm〜120mmの5倍ズームレンズ、後付けEVF、画素数は4:3のとき1310万画素となっている。
画像処理エンジンに「DIGIC 6」を採用し、レンズ構成は両面非球面レンズ1枚と両面非球面UAレンズ2枚を含む11群14枚で多層コーティングされている。レンズは約3.5段分の補正効果をもつ光学手ブレ補正機構(IS)を搭載し、最短撮影距離は広角端マクロモードで5cm、望遠端は40cmとなっている。レンズ前面には自動で開閉するレンズ保護シャッターが備えられている。
画像は拡張子CR2のRaw形式とJPGに対応している。最大解像度は4:3のRAWモードで4160 x 3120ドットを記録することができる。動画は最大解像度で1920 x 1080 (24 fps)。
フードは専用バヨネット式のLH-DC802、58mm径のフィルターを装着するにはFA-DC58E3が必要となる。この2つのオプションは排他使用となっており、両方を同時に使うことはできない。
バッテリーはNB-12L4で、以下仕様となっている。
対象製品 | PowerShot G1 X Mark II / N100 |
---|---|
形式 | リチウムイオン充電池 |
公称電圧 | DC 3.6V |
公称容量 | 1910mAh |
公称電力容量 | 6.8WAh |
充電時間 | 約3時間5分※ |
充放電回数 | 約300回 |
使用温度 | 0-40℃ |
大きさ | 約34.4×48.5×10.4mm |
質量 | 約35g |
カメラ本体の価格はオープン価格で、発売時の価格は9万円を少し上回る程度であった。
2.使用感
G1X Mark-IIは、G1Xの不満点を解消しているが、一部不満な点も残った、キヤノン二代目ハイエンドコンパクトカメラだ。ファインダーがなくなったことにより、G1Xよりよりコンパクトデジタルカメラの大きさに近づいている。ボディ外装はプラスチックだが表面処理でそれなりに高級感がある。
1.5インチセンサーはこのカメラが最後で、G5、G7、G9シリーズ5は1インチセンサーとなる。新型は中古の数が少なく新品価格が高値で安定しているため、センサーサイズの大きなカメラが好みであれば、G1シリーズは初代と、このMark-IIは比較的リーズナブルな価格になっているため、このカメラを選択してもよいと思える。
しかし、カメラの操作性については若干疑問を感じるところはあるため、癖を許容できるかもこのカメラを使い続けられるかの分かれ目になると思われる。幸い今のところ操作性に文句はありつつも、貴重な大センサーカメラとして日常のスナップに役立っている。
搭載された1.5インチサイズの大型センサーは、旧型のG1Xと比べて基本的な画質が向上し高感度特性もよくなっている。ズームレンズの焦点距離は24mmから120mmとなっており、広角端の24mmはほとんどの被写体で画角不足を感じるこはなく、望遠端も120mmあればほとんど不足することはない。焦点距離に関しては、G1Xの不満点を完全に潰していることで評価が高い。また、絞り開放F値がF2〜F3.9と明るくなっていることもこのカメラの良い点だ。
レンズの歪みは広角端からきちんと補正されており、四角いものを撮影しても顕著に気になるような歪みは見られない。広角端における最短撮影距離の5cmも寄れるレンズになったことは良い点だ。ただし、シームレスに最短撮影距離が使えるわけではなく、マクロ撮影する場合はカメラの設定をマクロモードにへっこうする必要があるのは面倒だ。
背面液晶は上180度、下45度の上下チルト式でバリアングルのような自由さがなくなったのは残念だ。チルト液晶のフレームは華奢で剛性感にとぼしく使っていて壊れそうに感じることがある。落とすのは論外だが、フレームを展開したまま落としたら、フレームは間違いなく歪むと思われる。
液晶サイズは3インチと大きく104万ドットの解像度はピント位置を目視で確認できる表示性能があるため不満はない。
EVFは外付け(EVF-DC1、EVF-DC2 )6となり、カメラに装着すると、後付けEVFカメラすべてに共通するが、カメラとの一体感はなく、カメラも大きくなってしまうのは仕方がない。当然、EVFを装着するとカメラ鞄への収まりもよろしくないのでEVFは一体化が望ましい。SONYのNEXシリーズやα6×00シリーズのようにカメラ左上にボディと一体化した形で搭載されるのがコンパクトなカメラにはベストな取付方法だ。
G1X Mark IIIのように、EVFを内蔵しているが一眼レフカメラのペンタプリズムのようにEVFの主張の強いデザインはコンパクトなカメラには似合わない。
EVF-DC2を所有しているが、カメラ自身の落ち着いて使えばそれなりに合うAFと、ピント位置は背面液晶で確認できるため、通常の撮影シーンでEVFが無くて困ることはほとんど無いので、EVFを取り付けることは、日中野外に持ち出すときくらいだ。
操作はG1Xに比べると改善されているが、レンズ鏡筒の2つあるリングの機能割り当ての制限がもっとも残念だ。
2つあるリングのうち、スムーズリングとよばれるクリック感の無いリングでズーム操作をしたいのだが、スムーズリングにズーム操作が割り当てることができない。
代替処置として、クリック感のあるステップリングに24,28,35,50,85,100,120と段階的に切り替わるステップズームを割り当てて使用している。それでも2つあるリングへの機能割り当てはもっと柔軟にしてもらえるとありがたい。
また、露出補正に関しては、MFモードを使用すると、鏡筒のダブルリングはフォーカスとズームで使うことになり、液晶横にある面状リングで操作する。この面状リングはあまり操作性が良いとは思えないので、G1Xのようにカメラ軍艦部に専用の露出補整ダイヤルが備わっていルほうが便利だ。
G1X2のデザインコンセプト上、軍艦部にダイヤルをのせることができなかったのかもしれないが、面状リングではなくEOS Rにあるようなボディに埋め込まれたサブダイヤルの方が操作性は良い。
ボディが小さいため、ボタンが窮屈なのは仕方がないが、MFボタンの位置は再考して欲しいと感じる。シグマの少し古いレンズのように、鏡筒の付け根の固定部分に、機械スイッチでAF / MF切り替えするのがわかりやすい。
動作については、電源を入れてから撮影可能になるまでは一呼吸置く感じがする。AF速度はそれほど速くなく、合焦精度も並みである。落ち着いて撮る分には問題ないが、とっさの場面では人間の思いに追従できないことがある。
撮影後の画像記録時間は2000年代後半の高画素機のようにRaw撮影すると5秒待つというようなことはなく、1300万画素のRAW +最高画質の jpeg記録が気付いたら終わっているので画像処理を担っているDIGIC6が優秀なことがわかる。
バッテリーのNB-12Lはキヤノン独自で、G1X2のほかにはPowerShot N1007というあまり売れなかったカメラにだけ採用されたバッテリーで、海外製の互換製品を見かけるが3000円程度しており価格は安くない。海外製のバッテリーでリスクを負うぐらいなら、純正品は6000円くらいなので、そちらを選択するのがベターだ。
バッテリーの持ちはそれほどよくはなく、予備バッテリーを持っていないと途中でバッテリー切れにあう。
3.競合との比較
以下は、G1X、G1X Mark IIで同じ文章である。
G1Xシリーズは、初代のG1Xから、G1X mark II(以下、G1X2)、G1X mark III(以下、G1X3)と三機種がリリースされているが、カメラ毎にコンセプトに違いが感じられる。以下、主観で要約した。
- G1Xはコンデジの延長線上の高性能カメラ
- G1X2はコンパクトミラーレスカメラを意識したサブカメラ
- G1X3は単独ですべてをまかなえるレンズ一体型カメラ
ボディデザインはG1X>G1X2>G1X3でG1Xがもっとも好みだ。
操作性、性能はG1X2>G1X=G1X3でG1X3の評価が低いのはレンズのテレ端が72mmと物足りないためだ。
最短撮影距離は、G1X2=5cm、G1X3=10cm、G1X=20cmとなっており、G1X3はセンサーサイズが大きくなったためだろうが、仕様的には後退している。
バッテリー型番が3機種ともに異なるのはユーザーとしては嬉しくない。3機種の年代が異なるためとはいえ、同じシリーズなら同じ型番のバッテリーが採用できるように、先を見据えてバッテリーサイズ屋電池容量の仕様を決めて欲しい。
G1XとG1X2のフィルター装着方法にも疑問があり、2つのカメラはフィルターをつけるために、フードと排他のフィルターアダプターが必要となっている。フィルターとフードが排他となっているのは問題だし、このフードもアダプターもカメラ毎に専用品となっており、カメラの販売終了後に入手するのはかなり面倒なことになっている。
G1X | G1X Mark II | |
フード | LH-DC70 | LH-DC80 |
フィルターアダプター | FA-DC58C | FA-DC58E |
このクラスのカメラであれば、PLフィルター、NDフィルターを使うユーザーも多いだろうから、あらかじめレンズ鏡筒先端に一般的なフィルターをねじ込むためのネジを切っておいて欲しかった。これは最新のG1X Mark-IIIで少し改善されている。
理想のG1X mark IVを下表右端に入れてみたが、G1X Mark IIを改良したG1X Mark IVを作って欲しいと願い、本稿を締めたい。
仕様・比較
項目 | G1X | G1X mark II | G1X mark III | G1X mark IV (希望) |
焦点距離(35mm版換算) | 28 – 112 mm (4倍) | 24 – 120 mm (5倍) | 24 – 72 mm (3倍) | 24 – 120 mm |
実焦点距離 | 15.1 – 60.4 mm | 12.5 – 62.5 mm | 15.0 – 45.0 mm | 12.5 – 62.5 mm |
撮影距離 | 20cm~∞ | 5 cm~∞ | 10 cm~∞ | 5 cm~∞ |
開放絞り値 | F2.8〜F5.8 | F2.0〜F4 | F2.8〜F5.6 | F2〜F2.8 |
絞り羽根 | 6 | 9 | 9 | 9 |
レンズバリア | なし | あり | なし | – |
フィルターオプション | FA-DC58C 58mm | FA-DC58E 58mm | なし 37mmねじ込み | 55mmねじ込み |
レンズフード | LH-DC70 | LH-DC80 | LH-DC110 49mmフィルター装着可能 | – |
画素数 | 1430万画素 | 1280 万画素(アスペクト比が3 : 2 時) 1310万画素(アスペクト比が4:3 時) | 2420万画素 | 1430万画素 |
センサータイプ | CMOS | ← | ← | ← |
センサーサイズ | 1.5 | ← | APS-C | 1.5 |
手ぶれ補正 | レンズシフト方式 4段 | レンズシフト方式 3.5段 | レンズシフト方式 4段 | ← |
ファインダー | 実像式ズームファインダー 視度調整範囲:-3.0 – +1.0 m-1 (dpt) 視野率:77% | 後付けEVF 236 万ドット 0.48型:EVF-DC1 0.39型:EVF-DC2 | 内蔵EVF 0.39 型 236 万ドット | 内蔵EVF 0.39 型 236 万ドット |
背面液晶仕様 | 3.0(TFT) バリアングル | 3.0(TFT) 上下チルト | 3.0(TFT) バリアングル | 3.0(TFT) バリアングル |
背面液晶解像度 | 92.2万ドット | 104万ドット | ← | 104 万ドット |
画像処理エンジン | DIGIC5 | DIGIC6 | DIGIC7 | – |
バッテリー | NB-10L | NB-12L | NB-13L | – |
メディア | SD メモリーカード SDHC メモリーカード SDHC メモリーカード | ← | ← | ← |
WIFI | なし | あり | あり | ← |
サイズ 幅 x 高さ x 奥行 | 116.7 x 80.5 x 64.7 | 116.3 x 74.0 x 66.2 (EVFなし) | 115.0 x 77.9 x 51.4 | 116.7 x 80.5 x 64.7 |
重量(g) *:本体のみ **:バッテリー+メディア | 492 * 534 ** | 516 * 553 ** | 375 * 399 ** | 450 * 490 ** |
リリース年 | 2012.3.9 | 2014.3.13 | 2017.11.30 | ? |
カラー | ブラック | ← | ← | ← |
オプション
- バッテリーチャージャー CB-2LG ¥5,500
- キヤノンフィルターアダプター FA-DC58E ¥2,750
- レンズフード LH-DC80 ¥2,750
- リモートスイッチ RS-60E3 ¥2,750
- 電子ビューファインダー EVF-DC1 ¥33,000
- 電子ビューファインダー EVF-DC2 ¥25,000
参考文献・参考リンク
- PowerShot G1X・キヤノン公式
- PowerShot G1 X Mark II・キヤノン公式
- PowerShot G1 X Mark III・キヤノン公式
- G1X Mark II アクセサリー
- KASYAPA / 204 コンパクトの枠を超えた新生『powershot-g1x-mark-ii』
- キヤノン「PowerShot G1 X Mark II」の実力を探る
更新履歴
- 2024.11.15
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