ゲルハルト・リヒター展 2022

ゲルハルト・リヒター展 2022

【リヒターと反射する世界】(感想題)

東京と豊田市に2022年に開催された、ゲルハルト・リヒターの個展、ゲルハルト・リヒターを鑑賞した感想。

目次

概要

  • 展名:「ゲルハルト・リヒター展」
  • 東京展
    • 東京国立近代美術館
    • 2022年6月7日(火)~10月2日(日)
  • 豊田市展
    • 豊田市美術館
    • 2022年10月15日(土)〜2023年1月29日(日)

展示作品は、ゲルハルト・リヒター財団ワコウ・ワークス・オブ・アート作家蔵個人蔵で構成されている。

展は東京国立近代美術館豊田市美術館の2つを巡回した。

会場内は《ビルケナウ(写真ヴァージョン)》(68 [CR 937E])と 《フィルム:フォルカー・ブラトケ Film: Volker Bradke》(1966 16ミリの白黒フィルム 14分32秒・個人蔵)の2作品以外は写真撮影OK。

豊田市美術館展は作家蔵の《ムード Mood》が特別展示されていた。

感想【リヒターと反射する世界】

リヒターの作品はワコウ・ワークス・オブ・アートの小展示、現代美術の展示でみた程度で、はじめて多くの作品を一度に鑑賞する機会になった。

リヒターは時代ごとに多彩な作風で作品を作っており、そのなかでも今回はガラスや鏡を使った作品の「反射」にフォーカスして感想をまとめた。

鏡の反射は古くから哲学的テーマであり、様々な人が鏡によって像が反転する原理、そこに映る世界について考察を残している。
2025年現在、その原理については一応納得に行く説明にはあるけれど、それでもなんだかスッキリしないところがあり、鏡の反射現象は興味深い世界だ。そもそも論、視覚を含む感覚は人によって差が大きいため、鏡の反射現象についても万人をスッキリさせるのは無理なことかもしれない。

また、写真を撮っていると被写体との距離はつねに重要な要素の1つであるが、鏡の像を撮影するとき、ピント位置はつねに無限遠になることはとても面白い。近距離も遠距離もすべて圧縮される奥行を消失した世界。

余談はこのくらいにして感想へ。

《8枚のガラス》

  • 角度の異なる8枚のガラスが映し出す非日常、どこが映りこんでいるのか?覧る角度によってまったく異なる世界があらわれることがとても楽しい。
  • 本作周囲に配される作品は東京会場と豊田会場で異なり、豊田会場は《4900の色彩》《ストリップ》、東京会場《アブストラクト・ペインティング》となっている。両会場で映りこむ作品、来場者数の多少などシチュエーションの違いからおこる景色の違いを想像すると、両方を鑑賞すればよかったといまさらながらに思う。

《鏡》《鏡、グレイ》《鏡、血のような赤》《アンテリオ・ガラス

  • 最初の通路に展示された4つの反射する作品で、完全反射、灰色、赤色、半透明とそれぞれ異なる色彩をもち、鑑賞者と周囲を作品に映し出す。リヒターの反射する作品は飾り気がなく作品そのものはとくに覧るべきものは無い。しかし、作品から少し離れ鏡に映った移動する鑑賞者を眺めるとき、様々な人々が重なり合いつつも前後関係を無視してフラットに描写される。その光景は奥行を感じるリアルな世界とは異なる時間軸の世界と感じられる。

《グレイの鏡》

  • 《グレイの鏡》は、本展示におけるもっとも大きなサイズの反射する作品だ。それは周囲に展示される《ビルケナウ》と多くの鑑賞者をまるごと吸い込んで同一表面に閉じ込める。
    この大きな作品を通して見る反転した世界は、空間のフラットさがより強調されて鏡に写る世界は現実から乖離した別世界の様相が強くなる。
    これはパラレルワールドのようで、時間が分化するときのさまざまな可能性と現在という存在の不確かさを実感させる。

《頭蓋骨》

  • 《頭蓋骨》は鏡を含む作品では無いけれど、作品を覆うアクリル板が鏡になっていた。通常作品鑑賞時にアクリル板への映りこみは嫌がられる要素であるが、こうして意図せず周囲の空間を写し込んでいるのをみると映りこみを含めて作品と言う気持ちになる。

野外

  • 当日は☔️模様で、濡れた地面が鏡となり、行き交う人々、建物などを映し出しており、より本展を反射というイメージで捉える動機になった。

<画像をクリックすると拡大表示>

まとめ

内容は全139点と非常にボリュームのある展示で、1階会場はバラエティに富んだ展示で鑑賞に時間を使った。《8枚のガラス》と《グレイの鏡》の部屋はとくにおもしろかった。
しかし、鑑賞疲れからか2階、3階の《アブストラクト・ペインティング》、《日付》のシリーズは点数も多く割といい加減に鑑賞した。こちらもそれぞれの作品の違いをおっていくとより感じるものがあったかもしれない。

先述のとおりリヒターは時代ごとに多彩な作風で作品を作っており、「鏡(反射)」だけの作家では無い。しかし、本展は鑑賞したとき、作品の中に鏡を織り交ぜていることで、つねに鑑賞者自身を意識させるようになっていることがとても印象的だった。

開館直後に到着したこともあり、到着直後はそれほど混んではおらず、昼食をとったあとに展示室に戻ると、そこそこ人が増えていたので、早い時間に着いて鑑賞をはじめたのは正しい選択だった。過去の経験から地方会場は昼をすぎてから混むことが多い。また、本展は退場後に展示会場に戻ることができたため、朝の10時〜14時くらいまで時間をかけて鑑賞できた。

展示によっては途中退場不可の展もあり、その場合、10時や11時から鑑賞をはじめると、昼食の時間が微妙になるため、当日中の再入場を認めていただける展示はとてもありがたい。

余談

「ゲルハルト・リヒター展」の東京会場は混みそうだったのでスルーして、旅行がてら豊田市美術館まで鑑賞に行った。鑑賞当日はあいにく雨が降っていたがレンタカーを借りている都合上、神奈川県を朝の5時に出て、新東名高速を使い豊田市美術館に着いたのは開館の10時少しあとだった。

途中の清水サービスエリアで朝食を食べ、昼食は豊田市美術館のレストラン ル・ミュゼ(味遊是)でいただいた。

帰りは高速道路が渋滞する可能性が高いため、15時に豊田市を出た神奈川県に着いたとき19時をまわっていた。夕食は途中で購入したお弁当をうちで食べた。

今回はレンタカーのトヨタ・アクアで往復約600kmを走った。1リットルあたり25km以上走るため満タンでは700km位走れるため、途中寄り道をしなければ豊田市との往復も余裕かと思っていたら、借りた際の燃料が満タンから少し減っていた?、戻ってくる途中で燃料警告灯がついたので、高速道路のSAで100km程度走る5リットル給油した。豊田市は比較的ガソリンが安いため、到着地で給油してから帰ってくればより安全に帰れただろう。

関連リンク

更新履歴

  • 2025.6.13

撮影機材

  • HASSELBLAD X2D-100C +HASSELBLAD HCD 24mm +XH-Adapter

広告


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA