ビオゴンコピー? Jupiter 12 35mm F2.8

ロシア製・ジュピター 12 35mm F2.8をフィルムカメラとデジタルカメラで使用したレビューと写真作例
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目次
ギャラリー
写真作例は以下のカメラを使用した。
レビュー


1.概要
Jupiter 12 35mm F2.8はツァイスビオゴンのコピーと言われるロシア製レンズで、対称光学系の後玉の張り出しが特徴的なレンズだ。ビオゴンコピーについては参考情報いくつかのレビューへのリンクを張っている野で各自確認いただければ幸いだ。
主な仕様は以下の通りで、詳細は表に載せている。
- 開放F値 2.8
- レンズ構成 4群6枚
- 絞り羽根 5枚
- 最短撮影距離 1.0m
- ライカMレンジファインダーカメラ距離計連動 1.0m
- フード なし
- レンズカラーバリエーション シルバーとブラック


2.使用感
Jupiter 12 35mm F2.8の描写は、異形の大型でフィルム面に近い後玉を持つレンズとしては、それなりにまともな描写をする。
これは焦点距離が35mmということの影響も大きいと考えられるが、後玉がフィルム面に近いより広角な焦点距離21mmレンズのように、撮影結果に周辺減光やカラーキャストの問題はほとんど見られない。
しかし、中心部の解像度は高いが周辺にいくにしたがい像が緩くなる。周辺部分については崩れてしまうようにみえるシーンもある。この効果は主題を浮き上がらせるにはよいが、記録的な用途には不向きで像面の解像度が均一でない。このレンズの採用している対称光学系のおかげで直線部のゆがみが少ないだけに、周辺部の緩さが残念に感じられる。
また、絞り開放の撮影はF値2.8だが数値以上にピント面が薄くシビアに感じる。
ピント合わせを任意の位置でおこなってから構図変更のために撮影位置をずらすと、ピント位置もズレていることが多く、このレンズのスィートスポットの狭さが感じられるところである。
絞り羽根は5枚で奇数なので10条の光条を得ることができる。最短撮影距離は1mとバルナックライカの標準的な値でレンジファインダーカメラでは今一歩寄れないレンズとなる。ミラーレスカメラであれば補助ヘリコイドを使うことによってこの弱点を回避できる。
そして、この大型のレンズ後玉はカメラに装着時に問題になることがある。
ギャラリーで使用したカメラを見てわかるように、35mmフルフレーム(フルサイズ)センサーを搭載したカメラであれば、ほぼ問題なく装着できる。LEICA M8のAPS-Hサイズセンサーだがセンサー部分が35mmフルフレームセンサーを見越した設計で余裕があるため、このレンズを装着することができる。
LEICA M8で使用すると、小センサーの恩恵で描写が崩れがちな周辺部をクロップする効果があり、35*1.33=47mmとほぼ標準レンズの焦点距離となり、使い易いレンズとなる。
やはり問題となるのはセンサーサイズが小さい、APS-Cセンサー搭載カメラ、マイクロフォーサーズセンサー搭載カメラでは、センサーを囲むように存在する壁にレンズの後玉が接触して装着できないことが多い。
小センサーカメラに装着する際は、慎重にカメラとレンズが干渉しないか確認する必要がある。
個人的に確認したところでは、LEICA T typ701を含む、LEICA T、TL、CLシリーズ、SONY α NEXシリーズ、PANASONIC LUMIX GM5は装着できなかった。
より大きなセンサーである中判デジタルセンサーを搭載した、HASSELBLADのX2Dで使用したところ44x33mmをカバーするイメージサークルは無く、35mm判が限界であることがわかる。

3.まとめ
結論としてJupiter 12 35mm F2.8をまとめると、カメラに装着できる場普通に使えるレンズだ。その描写は中心部の先鋭さは現代レンズに劣らないが周辺部分では像の崩れが気になる。中心部に主題が来る被写体はよいがそうでない場合はあまり良い結果を得ることができない。
世界のライカレンズ Part2 140ページに菊池芳文氏がレビューを寄稿している。
仕様・考察など
ロシア産レンズはデッドストックが掘り起こされたり、新造されたりと、状態がよくわからないレンズが、ピンキリの値段で売られている。ジャンク覚悟で安価に買うか、実物を見てからの購入が無難と思われる。
実際、価格が安いので三回購入して、状態はまちまちだったが、絞り羽に油がしみてくるのはいずれの3本ともに見られ、ロシアレンズはわりと絞り羽に油がしみやすいように感じる。
油が固着して羽が開かない状態でなければ問題ないが長く防湿庫に入れていると、そのうち固まる気がする。
最初に購入したレンズはKMZ製で2本目と3本目のレンズはLZOS製だった。もう一社Arsenal製があるようだがこちらはみたことがない。
ロシアのL39スクリューマウントレンズは、20mm、28mm、35mm、50mm、58mm、135mmと焦点距離は揃っている。2010年代後半まではかなり廉価に販売されていたが、2020年代に入り他のライカマウント互換レンズ同様に価格が上昇しており、安いので試しに使ってみようという価格ではなくなっている。
- Russar MR-2 20mm
- Orion 28mm
- Jupiter-12 35mm
- Jupiter-8 50mm F2
- Jupiter-3 50mm F1.5
- Industerシリーズ 50mm付近
- Jupiter-11 135mm
項目 | Jupiter 12 | Biogon | C-Biogon |
焦点距離(mm) | 35 | 35 | 35 |
最大絞り | 2.8 | 2.8 | 2.8 |
最小絞り | 22 | ← | ← |
レンズ構成 | 4群6枚 | 4群6枚 | 5群7枚 |
絞り羽根 | 5 | ← | 10 |
最短撮影距離(m) | 1.0 | ← | 0.7 |
レンズ長(mm) | 30 | ? | 30 |
レンズ最大径(mm) | 51 | ? | 52 |
フィルター径(mm) | 40.5 | ←(0.5ピッチではない?) | 43 |
フード | – | – | 専用バヨネットフード |
リリース年 | 1950(L39)- | 1937(Contax) | 2008(VM) |
製造本数 | – | – | – |
重量(g) | 116 Walz hoodを装着 | ? | 200 |
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参考情報
- Overview of the Jupiter lens described on Wikipedia.
- 世界のライカレンズ Part2 140ページに菊池芳文氏がレビューを寄稿している。
- Review: Jupiter-12 35mm 2.8
- Jupiter-12 35mm F/2.8 Lens Review – Playing Russian Roulette with a Zeiss Copy
更新履歴
- 2025.8.9
- 2024.05.05
- 2023.12.30
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