描写変化の妙 APOQUALIA 35 F1.3

Ms-Optics APOQUALIA 35mm F1.3 SLIMをLEICA M-PとHASSELBLAD X2Dで使用したレビューと写真作例
目次
ギャラリー
- 写真作例の撮影はLeica M-P / HASSELBLAD X2D
レビュー


1.概要
アポクオリア 35mm F1.3は、2021年にMs-optics(宮崎光学)がリリースした焦点距離35mmのF1.3 大口径レンズ。
レンズ形式に4群6枚のガウス型を採用し、最短撮影距離は0.6mでライカM型レンジファインダーカメラは0.8mまで距離計が連動する。0.8mより短い距離は、目測、EVF、モニターで確認する。
フィルターは宮崎光学こだわりの逆付けタイプで34mm径を使用する。レンズフードはラッパ型で34mmの逆ネジが切ってあるので、フィルターを装着しその上から装着する。
絞り操作レバーの位置がレンズ鏡筒付け根にあるため、撮影時、収納時に不本意な絞り値の変更はなくなったのは良い点だ。
本レンズは沈胴鏡筒を採用し、レンズで沈胴させたときの厚みは10.2 mmとコンパクトで持ち運び時の収納性がよい。
このレンズは、2016年にリリースされた、APOQUALIA G 1.4 / 35を改良しわずかに明るくし、沈胴鏡筒を採用したレンズとなる。配付資料ではレンズ構成図はまったく同一なので、細部の調整でF1.3と明るくなっていると考えられる。
2.使用感
アポクオリア 35mm F1.3は、エルマー 50mmを一回り小さくしたような鏡筒だ。
フォーカスリングの位置はレンズの付け根にあり、鏡筒のもっとも大きな径をした部品なので、フォーカス操作はしやすい。
フォーカスリングのすぐ前にある絞り環は、少し奥まったところにあるため、意図しない変更はされないが、カメラを構えたまま絞りを任意の位置に変更するのは難しい。
絞り開放におけるピント位置について、二重像合致ではピント精度が問題となり、EVFでは本レンズの特性である絞り開放時のふわりとした描写となるため、EVFでピント位置の見極めがとても難しい。
このため、二重像の合致はほとんど意図したところに合うことは無く、EVFのピント拡大で合わせても本当に合っているかは疑わしい像が出てくることがある。
F2に絞ればずいぶん改善するが、明るい開放F1.3値はほとんど使えないと評さざるをえない。
上記については、宮崎氏が本レンズについて注意喚起をしている。MK Direct・ブログの2021年12月29日に記事があるためリンクを張っておく。日本語はリンク先を読んでいただければよいと思うが、英語版では拙訳を載せている。
- アポクオリア 35mm F1.3について(Ms-Opticsからのお知らせ)
アポクオリア 35mm F1.3の描写は前モデルの固定鏡筒の初代APOQUALIA 35mm / F1.4と同様に、絞り開放では四隅の減光が目立つ。絞り開放で逆光時には派手なゴースト・フレアと思われる妖しげな光が写ることもある。
レンズの沈胴機構を備えているが、レンズ自体がコンパクトなので沈胴させることはない。


HASSELBLAD X2Dの中判デジタルセンサー(44mm*33mmセンサー)で使用したところ、完全にイメージサークルが足りていない。絞っても変化が無いためX2D、GFXなど中判センサーカメラでで使うのは仕様範囲外の使い方となる。
絞り開放の画像で、どの程度の範囲が使い物になるかを検証したところ、X2Dのオリジナルピクセル11656x8742のうち、9045x6783が使用に耐えそうな範囲であった。センサーサイズに換算すると、34.1mm x25.6mm程度と計算できた。この計算から本レンズのイメージサークルは35mmフルサイズセンサー(36mm*24mm)にきちんと合わせてあることがわかる。
3.まとめ
結論としてMs-Optics APOQUALIA 35mm F1.3 SLIMをまとめると、従来の35mmレンズより少し大口径化したために、描写の軟化をまねき、絞り開放で使いづらいレンズとなってしまった。おそらくフィルム時代はこれでも許されたのだろうが、高画素デジタル時代には不良として認識されてしまった不遇のレンズだ。
F2に絞ると描写が激変するので、それを楽しめる撮影者であれば、文句なく使うことができる。
仕様・シリーズレンズ比較
項目 | APOQUALIA | APOQUALIA | APOLLON |
焦点距離(mm) | 35 | 35 | 36 |
最大絞り | 1.3 | 1.4 | 1.3 |
最小絞り | 16 | 16 | 16 |
絞り羽根 | 14 | 14 | 14 |
レンズ構成 | 4群6枚 | 4群6枚 | 4群6枚 |
最短撮影距離(m) | 0.6 ∞から0.8mまではカメラ距離計連動 | 0.6 ∞から0.8mまではカメラ距離計連動 | 0.6 ∞から0.8mまではカメラ距離計連動 |
レンズ長(mm) | 21 沈同時 10.2mm | 21 | 22 |
レンズ最大径(mm) | 50 | 50 | 50 |
フィルター径(mm) | 34 | 37 | 34 |
重量(g) | 72 | 85 | 80 |
フード | 専用・円筒ネジ込み式 | 専用・円筒ネジ込み式 | 専用・円筒ネジ込み式 |
マウント | ライカM | ライカM | ライカM |
リリース年 | 2021 | 2016 | 2023 |
参考文献・参考リンク
- Wikipediaによるガウス型レンズの説明
- Ms-Optics APOQUALIA 35mm F1.4・Shige’s hobby
更新履歴
- 2025.4.19
- 2024.03.13
- 2022.12.21
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