宮崎ゾナーの極み SONNETAR 50 F1.1

Ms-Optics SONNETAR 50mm F1.1をライカデジタルレンジファインダーカメラで使用したレビューと写真作例
目次
ギャラリー
- 写真作例の撮影はLeica M-PとLEICA M10
レビュー


1.概要
SONNETAR(ゾンネタール) 50mm F1.1はMs-optics(宮崎光学)が2013年にリリースした明るい標準レンズ。
その源流としてMs-Optics初のオリジナルレンズ MS-MODE-S 50mm F1.3があり、本レンズはレンズ径を大きくするなどの改良で、開放絞り値をF1.1の明るさに改良した。
レンズ名称、SONNETAR(ゾンネタール)は本レンズから用いられている。
主な仕様は以下の通りで、詳細は表に載せている。
- 開放F値 1.1
- レンズ構成 4群6枚
- 絞り羽根 14枚
- 最短撮影距離 0.85m
- ライカMレンジファインダーカメラ距離計連動 0.85m
- フード 専用の逆ネジ・ネジ込みフード
- レンズカラーバリエーション シルバー、ブラック、ブラックペイント
- レンズ長36mm
- レンズ最大径55mm
- 重量190g
- レンズフィルター 55mmだが通常と逆方向に装着。
2.使用感
SONNETAR 50mm F1.1はMS-Optics(宮崎光学)の大口径標準レンズ。
名前のとおりレンズ形式にゾナー型を採用し、4群5枚で後玉2枚が貼り合わせとなっている。古いゾナーは後玉3枚が貼り合わせになっているがMs-Opticsはコーティング技術の向上を踏まえて貼り合わせを2枚で済ませている。これは、CARL ZEISSのC SONNARが後玉3枚貼り合わせを採用しているのとは対照的な処理だ。
このレンズは2010年代のMs-Optics製品の中では、外観、写りなどクオリティが高いレンズの一つだ。
全長36mmと大口径標準レンズとしては極めて短いレンズで、径よりも長さが短いのはこの種のレンズとしては異例である。しかし、このコンパクトな設計故に周辺部の描写は少々厳しいものがあり、撮影シーンによっては周辺減光と像の乱れが気になることもある。そこは使い方の工夫で解決するべきであろう。
宮崎氏はゾナー型のまま絞り開放値 F1.0のレンズ設計をおこなった。しかし、宮崎氏が満足する性能が得られなかったため、50mm F1.0はガウス型のMS-ISM GA 50mm F1という形で実現する。
3.まとめ
結論として、SONNETAR 50mm F1.1をまとめると、Ms-Opticsのゾナー型・標準レンズの到達点だ。
作例をご覧いただいても分かるように、開放からコントラスト低下の少ないしっとりとした描写をするレンズで、Ms-Opticsの標準レンズの中ではもっともバランスが良い。
vs Voigtlander NOKTON 50mm F1.1
このゾンネタール 50mm F1.1と同スペックのレンズとして、フォクトレンダーのノクトン 50mm F1.1(重量:428g / レンズ長:57.2mm)がある。ゾンネタールはノクトンと比べて重量が半分、レンズ長は2/3と圧倒的にコンパクトである。
描写はノクトンはレンズ径が十分なこともあり、周辺光量は豊富で描写に余裕を感じる。
設計者・宮崎氏は「道具は現場に持ち運んでこそ生きる」とおっしゃっており、これは、でかくて重く持ち出しに躊躇するレンズよりは、ある程度性能は割り切りつつ軽さを追求することに意義があるという主張で、このゾンネタールは氏のレンズ設計ポリシーを端的にあらわしたレンズだ。
- レンズ構成図は各社の配付資料から引用し、位置とサイズはこちらで調整しているため厳密ではない。


Ms-Optics 標準レンズの歴史
- MS-MODE-S 50mm F1.3
- APOQUALIA-H 50mm F3.5
- MS-SONNETAR 50mm F1.1
- PETZ 57mm F2
- VARIO PETZ 57mm F2
- VARIO PRASMA 50mm F1.5
- ELNOMAXIM 55mm F1.2
- MS-ISM GA 50mm F1
- SONNETAR 50mm F1.3
中判デジタルセンサーカメラ
中判デジタルセンサーを搭載した、HASSELBLAD X2DでMS-SONNETAR 50mm F1.1を使用したところ、35mmフィルム判を越える箇所は、周辺減光と像の乱れにより実用できないことが確認できた。


仕様・レンズ比較
項目 | SONNETAR | NOKTON 50mm F1.1 |
焦点距離(mm) | 51.7 | 50 |
最大絞り | 1.16 | 1.1 |
最小絞り | 16 | 16 |
絞り羽根 | 14 | 10 |
レンズ構成 | 4群5枚 | 6群7枚 |
最短撮影距離(m) | 0.85 | 1.0 |
レンズ長(mm) | 35.7 | 57.2 |
レンズ最大径(mm) | 55 | 69.6 |
フィルター径(mm) | 55 | 58 |
重量(g) | 190 | 428 |
フード | 専用ラッパ型49mm逆ネジ込み | 専用円筒形 LH-7 |
マウント | ライカM | VM |
リリース年 | 2013.6 | 2009.6.29 |
価格 | ¥108,000 | ¥131,250 |
参考リンク
- Wikipediaによるゾナー型レンズの説明
- MS-ISM 1.1/50-GA・Shige’s hobby
- NOKTON 50mm F1.1・Shige’s hobby
更新履歴
- 2025.4.10
- 2024.10.12
- 2024.02.16:改稿
- 2022.04.06:初稿
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