Last updated on 2026-04-15
2026年3月に箱根のポーラ美術館で鑑賞した「SPRING わきあがる鼓動」展の感想
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目次
展概要
- SPRING わきあがる鼓動
- 2025年12月13日(土)~2026年5月31日(日)・会期中無休会場
- ポーラ美術館 展示室1、2、3
展示構成
- プロローグ/大巻伸嗣
- 1. はじまりの山―箱根
- 2. ストーリーズ/イケムラレイコ、丸山直文
- 3. 地水火風/小川待子、パット・ステア
- 4. エコー/ツェ・スーメイ
- 5. 共鳴の旅―彼方へ
- エピローグ/名和晃平
出品作は以下の施設、個人からの貸し出しで構成されている。
- ポーラ美術館
- 箱根町立郷土資料館
- 静岡県立美術館
- 福富太郎コレクション資料室
- 府中市美術館
- 金沢21世紀美術館
- 個人蔵
- 作家蔵
感想「箱根を軸にアーティストの旅を魅せる」
プロローグ/大巻伸嗣
最初の部屋に展示された大巻伸嗣の本作品は2023年に国立新美術館で鑑賞したことがある。国立新美術館の展示は横幅が3倍くらいの真っ暗な空間で布が漂っていたが、こちらの展示は明るい部屋に箱根の森をバックにして布が漂っており、展示状況は大きく異なる。
国立新美術館で見たときは、つかみどころのない空間が脈打つようで抽象的な不気味さを感じたが、こちらで作品を見ていると中央部の布が盛りあがるとき、その形は箱根の向こうにある富士山のように見え、その形を具体的にイメージすることができた。
展示場所が変わると作品の印象がずいぶんかわることをあらためて気づかされる。

1. はじまりの山―箱根
箱根町立郷土資料館の浮世絵などで、箱根が景勝地として利用されていた歴史を見ることができる。そのなかで、杉本博司《富士図屏風、大観山》夕焼けの富士が特に印象的で、杉本の写真作品も多く見てきたが、ワイドな画面に描かれる空の淡い色彩と富士山と町並みのコントラストが見事で、作家の作品構成力の高さを存分に見ることができる。

2. ストーリーズ/イケムラレイコ、丸山直文
イケムラレイコは箱根の伝承を独特のタッチで連作として展示している。連作の一枚《神探し 口笛吹いていく》は、描かれた二人の旅人の表情がとてもいきいきしている。動物ではないイケムラレイコの作品を見るのは久しぶりな気がする。
丸山直文は仙石原のすすきをイメージした色彩が美しいペイントを展示している。

3. 地水火風/小川待子、パット・ステア
壁面のペイントはパット・ステアの作品で、床に展示された彫刻は小川待子の作品だ。
ステアのダイナミックな水流が描かれたペイントは箱根の滝を思い起こさせる。対照的に小川の落ち着いた陶器による彫刻は静かな森を感じさせる。
動のステアと静の小川を同時に展示することで、火山という荒々しい側面を持つ箱根を再現しているようだ。
以下引用を記載するが、ポーラ美術館のサイトにパット・ステア逝去という残念なお知らせが掲載されていた。
2026年3月、1960年代より現代美術の第一線で活躍を続けてきた画家のパット・ステア氏が逝去されました。このたびの報に哀悼の意を表するとともに、心よりご冥福をお祈りいたします

4. エコー/ツェ・スーメイ
ツェ・スーメイの作品は概要を公式ページから引用すると以下のとおりである。
アルプスの雄大な山岳風景を舞台に、チェロ奏者でもあるアーティスト自身が奏でる音が岩肌に反響し、空間全体へと不規則に広がっていく様を記録した映像作品
絵画的に加工された映像のなかで奏でられる音は、奏者が演奏を止めても反響が聞こえ続ける不思議な映像で、目をとじるとずっと演奏が続いているように感じられる。しかし、音によっては山に反響せずにすぐに消えてしまう音もあり、無音になったとき演奏されていないことがあることに気づく。
視覚が惑わされる作品はよく見かけるが、聴覚を惑わす作品は珍しく楽しく作品を鑑賞できた。
この作品は金沢21世紀美術館蔵とのことで、金沢21世紀美術館の現代アートコレクションの奥深さも感じられる。
この部屋は撮影禁止となっている。

5. 共鳴の旅―彼方へ
こちらの部屋は、多くの作家が共演している。
最初にアーティゾン美術館で絶賛開催中のモネ展で並べて見たかった作品群、《サルーテ運河》、《国会議事堂、バラ色のシンフォニー》、《睡蓮の池》、《セーヌ河の日没、冬》、《散歩》写真には入っていないが《サン = ラザール駅の線路》、6点が展示されている。
ポーラ美術館は19点のモネ作品を所蔵しており、今回の展示では展示されていなかった《ルーアン大聖堂》、オルセーが所有する《ルーアン大聖堂》と並べてみたい作品の一つだ。

青木美歌とルドンがコラボレーションした展示がこの一画にある。
退廃的な空気をまとったルドンと透明なガラスで生命を表現した青木のコラボレーションは非常に魅力的で、この組み合わせを選択したキュレーションはとても素敵だ。

アンゼルム・キーファー・《ライン川》は2025年に京都の二条城での個展「SOLARIS」で鑑賞した作品に近く、荒々しい絵肌、中央に見える黄金色はワーグナーの「ラインの黄金」をイメージだろうか。

エピローグ/名和晃平
最後の部屋は、名和晃平《PixCell-Deer》が2体展示されている。一つはポーラ美術館の所蔵作品でもう一体は個人蔵とのことで、この作品を飾った部屋を想像すると、よほどの広さがないと圧迫感が勝ちそうで、こうして美術館で見ている方が性に合っていると感じた。

まとめ
ポーラ美術館のある「箱根」をキーワードに、時代を問わず作品を展示している。
所蔵のモネはいくつか展示されていると思っていたが、6点展示されていた。また、杉本博司、青木美歌、キーファーを鑑賞できたのはうれしい驚きで、初めて見る作家として、ツェ・スーメイ、パット・ステアも印象的な作品を展示していた。
全体的に好みの作品が展示されており、訪問してよかったと思える企画展だ。
参考情報
- ポーラ美術館・SPRING わきあがる鼓動・特設ページ
- ポーラ美術館・SPRING わきあがる鼓動・概要ページ
- ポーラ美術館・公式ページ
- 大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ・国立新美術館展紹介ページ
- クロード・モネ ― 風景への問いかけ・アーティゾン美術館公式ページ
- 「アンゼルム・キーファー、ソラリス」展・二条城特設会場
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撮影
- HASSELBLAD X2D-100C +XCD 28mm F4P
更新履歴
- 2026.4.1

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