APO LANTHAR SL 125mm F2.5
大口径中望遠マクロレンズ
Voigtlander APO LANTHAR SL 125mm F2.5のレビューと写真作例
目次
ギャラリー
- 写真作例の撮影はハッセルブラッド X2Dとソニー・α7(ミラーレスデジタルカメラ)
レビュー
1.概要
フォクトレンダー・マクロ・アポ・ランサー(ランター) 125mm F2.5は最短撮影距離が18cmと短く寄れる中望遠レンズ。
フィルター径は58mmでフードをしていると隠れるが、フードが無いとおちょぼ口のような外観となるため、筆者としてはフードは必須だと考える。M42スクリューマウントの場合、レンズ位置を直上にする機能がないため、角形フードの位置がズレるという欠点がある。
2.使用感
フォーカス部分は太く(9cm程度ある)フォーカスリングはレンズ付け根に寄っているため、若干操作性に難があるが、スムーズなヘリコイドは気持ちよくフォーカス位置を調整できる。レンズ鏡筒は2段階で伸縮し最大マクロ位置になるとレンズ長が約2倍となる。
初期SLレンズの中でもっとも大きくて重く、鉄とガラスの塊感を感じるレンズ。マクロレンズとして十分に優秀で、ボケと解像度の案配はよく、中望遠マクロの中ではアポ・マクロ・エルマリート100mmとどちらを取るか悩ましい存在だ。その他、中望遠マクロにはミノルタの100mm、タムロンの90mmなど多くの個性的なレンズがあるので、可能な限り使ってみてもっとも自身の表現になじむレンズを選ぶしかないだろう。
3.付加情報
このレンズは3度購入しており、最初にM42マウント版をSIGMA SD10、SONY α900で使用した。
2014年にOMマウントの中古を格安で見つけたので購入し、SONY α7(ILCE-7)で使用した。
2023年にEFマウント版を購入し、HASSELBLAD X2Dで使用した。
EFマウント版はハッセルブラッドXとEFのマウントアダプターTECHART TCX-01を持っていたから購入した。レンズはMFレンズなのでAFが不動なのは承知して利用をはじめたが、X2DからXCD125mmとレンズ検出されており、IBIS(ボディ内手ぶれ補正)も動いているようで、一部の信号はレンズからカメラへ伝わっているが絞りは動かなかった。
所有していた当時のX2DとTCX-01では一部の情報が正しく信号変換ができていなかったと考えられる。2024年現在TCX-01のファームウェアが7.0へアップデートされたことで、動作する可能性はあるが保証はできない。
このまま売ってしまうのもしゃくなので、作例撮影のために電子接点にマスキングテープを貼り絶縁して使用した。TCX-01のファームアップのタイミングがわからないため、最終的にはこの組み合わせはあきらめ手放すことにした。
X2Dでは短期間の使用となったがEVFの拡大機能を使うとピント合わせは問題なかったが、絞り開放のピント位置はシビアで少しフォーカスリングを動かすとピントが狂うためEVFを長時間見ることになり撮影がしんどいこともあった。
CANON EOSの一部ユーザーによると、一眼レフタイプのEOSでピントあわせが苦しいとの意見も見かけたが、筆者が使用したSONY α900、SIGMA SDxxシリーズではとくに問題を感じることはなかった。
レンズの付属品は、ケース、角形フード、フードキャップで、中古品の場合フードが欠品していることもあり、後で入手するのは困難なため、本レズのスタイリングの完成度はフードがあってこそだと思うので、フードの有無については確認してからの購入をお勧めする。。
レンズマウントは、ニコンAi-S、ペンタックスK、M42、キヤノンEF、ミノルタAマウント、オリンパスOM、ヤシカ・コンタックスなど多くのマウント形式でリリースされている。
最後発のキヤノンEF版以外は電子接点を持たずマウント形状の変更だけをおこなっている。中古市場でよく見かけるのはNIKON Ai-Sで、それ以外のマウントはそれほど数が出ていないと考える。
マクロ・アポ・ランター125mmはコシナ・フォクトレンダーSLレンズの中で、後継レンズが造られていない無いレンズの一つだ。Carl ZeissブランドのAPO-SONNAR 135/2がこのレンズに比較的近いレンズ構成だが、焦点距離、最短撮影距離、F値が異なるためレンズの使用感としてはおおきく違うのではと推測する。
製造コストのためかレンズ硝材が手に入らないか、理由はわからないが今でも十分使えるレンズだと思うため、リニューアルバージョンが販売されないのは不思議である。
その他に後継がないレンズは75mmと180mm。
40mmと90mmは何代かにわたり後継レンズが作られている。
125mmの焦点距離を持つ単焦点レンズは手元にはLEICAのVISOFLEX用HEKTOR 125mmしか持っていないため、スペック比較するには適切な対象ではないとも思うが個人的興味のため記しておく。
レンズ名 | Macro APO LANTHAR | HEKTOR |
焦点距離(mm) | 125 | 125 |
最大絞り | 2.5 | 2.5 |
最小絞り | 22 | 22 |
レンズ構成 | 9群10枚 | 3群4枚 |
絞り羽根 | 9枚 | 20枚 |
最短撮影距離(m) | 0.18 | 1.2 |
レンズ長(mm) | 88.2(Nikon Ai-S) | 77(VISO-M) |
レンズ最大径(mm) | ⌀76 | φ63 |
フィルター径(mm) | 58 | 58 |
重量(g) | 690 | 728(VISO-M) |
リリース年 | 2001.06〜2007.03 | 1949〜1960 |
定価 | 95,000円 | – |
本レンズと同時期にリリースされたSLレンズは以下の7本である。
12mmと15mmはミラーアップして使用するレンズなので一般的な撮影に向いていない。実質40mmからはじまるレンズシリーズとなっている。後のSL IIシリーズでCOLOR SKOPAR 20mm、COLOR SKOPAR 28mm、NOKTON 55mmとAuto Topkor 58mmを変更したNOKTON 58mmが追加され焦点距離のバリエーションが増える。
- ウルトラ・ワイド・ヘリアー 12mm(ミラーアップ専用)
- スーパー・ワイド・ヘリアー 15mm(ミラーアップ専用)
- Ultron(ウルトロン) 40mm
- COLOR HELIAR(カラーヘリアー) 75mm
- APO LANTHAR(アポランサー) 90mm
- Macro APO LANTHAR(マクロ・アポランサー) 125mm
- APO LANTHAR(アポランサー・アポランター) 180mm
仕様
項目 | ULTRON | COLOR HELIAR | APO LANTHAR | Macro APO LANTHAR | APO LANTHAR |
焦点距離(mm) | 40 | 75 | 90 | 125 | 180 |
最大絞り | 2 | 2.5 | 3.5 | 2.5 | 4 |
最小絞り | 16 | 22 | ← | ← | ← |
絞り羽根 | 9 | ← | ← | ← | ← |
レンズ構成 | 5群6枚 | ← | ← | 9群11枚 | 7群9枚 |
最短撮影距離(m) | 0.4 | 0.7 | 0.5 | 0.38 | 1.2 |
レンズ長(mm) (Nikon Ai-S) | 29.5 | 40.2 | 57.6 | 88.2 | 79 |
レンズ最大径(mm) | 63.5 | ← | ← | 76 | 65.6 |
フィルター径(mm) | 52 | 49 | ← | 58 | 49 |
重量(g) | 255 | 250 | 390 | 690 | 485 |
リリース年 | 2002.05 | 2000.07 | 2002.03 | 2001.06 | 2003.08 |
定価 | ¥45,000 | ¥50,000 | ¥55,000 | ¥95,000 | ¥65,000 |
- 以下は初期にリリースされたコシナのフォクトレンダーブランド、一眼レフ向けレンズのリスト、15mmと12mmの2本は、ミラーアップして使う特殊レンズなので下表からは除外している。
参考文献・参考リンク
- OpticaLimits /Voigtlander APO-Lanthar 125mm f/2.5 SL – Review / Test Report
- HEKTOR 125mm LEICA WIKI
- 製品情報PDF
更新履歴
- 2024.03.28:改稿
- 2023.06.08:改稿
- 2023.02.18:初稿
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