狭間の焦点距離 ELMARIT M 24mm ASPH.

狭間の焦点距離 ELMARIT M 24mm ASPH.

ライカ・エルマリート M 24mm F2.8 ASPH.をフィルムカメラ LEICA M6で使用したレビューと写真作例

目次

ギャラリー

  • 作例はLEICA M6 +KODAK E100VS +NIKON COOLSCAN ED Vを使用
  • 撮影場所は、静岡県の大井川鐵道
新金谷駅・Shin kanaya station
LEICA M6 ELMARIT M 24mmASPH.+KODAK E100VS
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レビュー

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1.概要

エルマリート M 24mm F2.8 ASPH.は1996年にリリースされたライカMマウント・焦点距離24mmの広角単焦点レンズ。RマウントにはELMARIT R 24mmがあったが、ライカMマウントの焦点距離24mmはこのレンズが初めてのリリースとなる。

主な仕様は以下の通りで、詳細な仕様は表に載せている。

  • 開放F値 2.8
  • レンズ構成 7群9枚
  • 非球面レンズ1枚
  • 絞り羽根 8枚
  • 最短撮影距離 0.7m
  • ライカMレンジファインダーカメラ距離計連動 0.7m
  • フード 専用角形フック止めフード
  • レンズカラーバリエーション シルバーとブラック

エルマリット M 24mmのMマウントレンズの6bitコードは、製造年代によって付加されているものと、付加されていないものが混在している。
6bitコードが無いレンズもマウント形状が新しいので、ライカサポートにて有償で変更が可能だ。
LEICA M8.2まではレンズ検出方法が6bitコードしか対応していなかったため、このコードに意味があったが、M9以降のデジタルM型ライカはレンズの検出をメニューから選択できるため、6bitコードはカメラ側の設定を6bitコード読み取りにしていると、レンズ情報を自動的に伝達できることがメリットになる。

2.使用感

エルマリート 24mmはレンズが作られた時代的なものも有り、フィルムでの描写が適しているように思われ、もちろんデジタルでも使えるが描写の解像感は現代レンズに劣ると感じる場面がある。

操作に関してはヘリコイドのグリスが適正であれば、フォーカスリングの動きがなめらかで心地よく、普段使いのスナップ、旅の記録など1本でまかなえるレンズだ。

24mmという焦点距離は、数字の並びのとおり28mmよりは-4mm広く少し余白を持たせられ、21mmよりも+3mm狭いため、広角感が薄らぐという、焦点距離の狭間を埋める絶妙なポジションだ。

手当たり次第にレンズを使う筆者のような場合は当てはまらないが、1本のレンズを長く使いたい撮影者の場合、21mm、24mmという選択はなかなか難しい。

広角レンズとして35mmをメインに使っている撮影者は、28mmをスルーして24mmに行くというのは一つの選択肢として考えられる。35mmから21mmを選択すると画角変化が大きすぎると感じるだろう。

広角レンズを28mmをメインにした撮影者は、つぎに考える焦点距離として24mmは中途半端な存在となり、画角が大きく変わる21mmを選ぶのが妥当だろう。

これは個人の感覚に大きく左右されるので、可能であれば試写をしてから購入するのがベターだ。デジタルカメラは試写のコストもほぼ0なので、気楽に試すことができる。

このレンズもすでに手元には無く、機会があれば再度使いたいレンズではある。
本レンズの中古市場における人気はそれほど高くはなく、状態によっては低価格の物を見かけることがあるが、2024年現在は他のライカMマウントレンズに吊られるように値上がりしている。

3.付加情報

ELMARIT 24mmに関連するレンズ

ELMARIT 24mmに関連するレンズとしては、ライカRマウントの焦点距離24mmは、MINOLTA MC W.ROKKOR-SI 1:2.8 f=24mm (1973)とほぼ同じレンズ構成の設計と言われるELMARIT R 24mmが1974年にリリースされ2000年中旬まで新品が売られていた。

また、同じ非球面レンズを採用したELMARIT M 21mm ASPH.は兄弟レンズで本レンズの1年後に販売された。この21mmと本レンズは2024年現在すでに販売終了している。

別格のレンズとなるが、LEICAはMマウントのSUMMILUXシリーズに力を入れており、SUMMILUX M 24mm F1.4 ASPH.が販売されているが、中古の安い物で約50万円、新品だと約100万円とかなり高額である。

後継レンズとして、ELMAR 24mm F3.8 ASPH.が発売されている。こちらは絞り開放F値が少し暗くなったが、鏡筒はコンパクトになっている。下図のレンズ比較ではELMAR 24mmが大きく見えるが、これはELMAR 24mmはフードを装着した図を使っているためである。

レンズ構成をみるとELMARIT M 24mmはMTF線図を見ると絞り開放では中央部にくらべると周辺部は悪くなっており、絞ると改善されていくが、絞ってもグラフの安定感にかけるところがある。これはあくまでMTF上のことなので実際の描写ではほとんど気にならない。

それにくらべて、後発のELMAR 24mm F3.8 ASPH.は後群を簡略化してコストを抑えつつ、前群のレンズを3枚にすることによって収差補正を積極的におこなっているように見える。ELMAR 24mm F3.8 ASPH.のMTF線図を見ると絞り開放から安定したグラフを刻んでおり、絞り込んでいくとさらにグラフの平坦さがあがっていく。

MTF線図は、ライカが配布しているレンズのテクニカルシートに記載がある。

レンズ構成図は各社のPDFより引用し、サイズはこちらで調整しているため、厳密ではない。

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焦点距離 24mmと25mm

ヨーロッパカメラの二大巨頭ライカとツァイスは21mmと28mmを埋める焦点距離に24mmと25mmをラインナップしている。VoigtlanderブランドはCARL ZEISSと同様に焦点距離25mmを採用している。

この狭間の焦点距離 24mmと25mmは、実際の撮影においては誤差の世界であり、三脚固定でレンズを変えて撮影したとしても、撮影結果をみてその違いはわずかだと言える。
それでもレンズ仕様に明示的に24mm、25mmと記されると、2本の間には大きな違いがありそうな気がするのは、ただのレンズグルメという病人の戯言だ。

Mマウントの焦点距離 24mm、25mm主なレンズは以下の通りである。

LEICA ELMARIT 24mm F2.8 Carl Zeiss BIOGON 25mm F2.8は、仕様書だけを見るとほぼ同じレンズに見えるが、レンズ構成にはそれぞれの会社の個性が見てとれる。

まず、ライカはこの時期から積極的に非球面レンズを取り入れ、このレンズも1枚非球面レンズを採用している。
それに対して、非球面レンズを採用していないCarl Zeiss BIOGON 25mm F2.8のレンズ構成は複雑で興味深い。
BIOGON 25mmの特徴的な中央の3枚貼り合わせレンズは非球面レンズを使用すると1枚で収まりそうと思える。

レンズ構成はレンズ設計思想のあらわれであり、最終的には描写の違いになる。描写の違いは撮影時の光線や空気感でかわってくるので、主観的になるが、淡さを感じるELMARITとキレのBIOGONというのが大雑把な感想だ。

レンズ構成図は各社のPDFより引用し、サイズはこちらで調整しているため、厳密ではない。

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この焦点距離24mmは1990年代後半から、レンズ設計の進化などにあわせて標準ズームレンズのワイド端に採用されるようになった。その前は28mm始まりがワイド端の主流で、その前は35mn始まりであった。古いライカの35mm始まりのズームレンズを使うと、かなり狭く感じてしまうので、自身がスマホを含め広角レンズに対して、かなり慣れ親しんでいると気づかされる。
さらにカメラのズームレンズは広角端の焦点距離を20mm始まりにするメーカーもあり、市場での売れ行き次第では各社追随するのであろう。
ズームレンズの場合、広角側は歪みがどうしても気になるため、20mmは少し画角を広げすぎているの印象はあるけれど、画像処理による補正の進化などにより今後は気にならなくなるかもしれない。

仕様・競合レンズ比較

製造者LEICALEICACarl Zeiss
項目ELMARIT ASPH.ELMAR ASPH.BIOGON
焦点距離(mm)242425
最大絞り2.83.42.8
最小絞り161622
絞り羽根8810
レンズ構成7群9枚6群8枚7群9枚
最短撮影距離(m)0.70.70.5
レンズ長(mm)4640.646.6
レンズ最大径(mm)585353
フィルター径(mm)E55E4646
フード12592(21mmと共通) フードカバー14041(21mmと共通)12465 (21mmと共通)レンズシェード 21/25mm レンズシェード 25/28mm
重量(g)388(シルバー) 290(ブラック)260260
リリース年199620082005
製造本数約7,000-
価格(税別)-¥320,000-¥110,000

参考リンク

更新履歴

  • 2025.4.2
  • 2024.03.21:改稿
  • 2023.12.16:初稿

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