HASSELBLAD HC 35mm F3.5
ヘビーウェイトのHシリーズ広角レンズ
ハッセルブラッド HC 35mm F3.5のレビューと写真作例
目次
ギャラリー
レビュー
1.使用感
ハッセルブラッド HC 35mm F3.5は、FUJINONブランドのレンズを格安で購入したので、シャッター速度の上限は1/800秒で、ハッセルブラッドXシリーズでレンズを使用するための2つのアダプター、X H Lens Adapter(以下、XHA)、XH CONVERTER 0.8(以下、XH08)を介してXシリーズカメラに装着してもオートフォーカス(以下、AF)は使用できない。購入した後にレンズの状態を確認すると少しバルサム切れがみられるが、年代物だし値段も格安だからしょうが無いだろう。
XHAを使用して35mm判換算焦点距離28mmの場合、逆光下においても描写に問題は無く、Phocusを介して出力される画像は周辺部まで乱れなく結像し、周辺減光も見られないため、中判デジタルセンサー(44mm x 33mm)で使用するのに十分な性能があることがわかった。
XH08を使用して35mm判換算22.4mmの場合もXHAと同様の描写傾向であった。645中判フィルムサイズを(60mm x 45mm)をカバーするHCレンズなので、XH08フォーカルレデューサーで焦点距離を短縮してもその影響はほぼ感じられない。同じ焦点距離をカバーするHCD 35-90mmズームレンズでは、広角端の焦点距離35mmでは周辺減光が見られるため、HCレンズのイメージサークルの広さが実感できる。
所有しているレンズをカメラに装着してレンズ情報を確認すると、ファームウェアは9.0.0でシャッター回数は約1000回であった。
マニュアルフォーカス(以下、MF)時のフォーカスリングの回転は滑らかで、EVFのピント拡大機能を使うことにより問題なく狙ったピント位置で撮影ができる。
2.レンズ概要
ハッセルブラッド HC 35mm F3.5はハッセルブラッド Hシリーズカメラ用の広角・焦点距離35.8mmのレンズ。HCシリーズなので中判カメラHシリーズで使用する場合、センサーサイズ 40.2×53.7mmまでカバーし、そのとき焦点距離は約24mmになる。
- X H Lens Adapter*を使用した場合、焦点距離約29mm
- XH CONVERTER 0.8*を使用した場合、焦点距離23mm
レンズ単体重量が1kgでコンバータ(175g か 430g)とカメラ(766g)を足すと2〜2.2kgとなり、HCレンズをつけたX1D-IIとしては普通の重さになるが、HCD広角レンズなどと比べると、レンズ鏡筒は大きくレンズバランスのためか1kg以上の重さと感じる。35mmフルサイズセンサーのミラーレスカメラと比べると大きく重い。これは645中判フィルムをカバーするためとシャッター機構を内蔵しているためだ。645フィルム時代の広角レンズは35mmまでが標準的であった。これは35mm判換算で21mm相当となるため、これよりも広い焦点距離のレンズは魚眼レンズなど特殊なレンズに使われる焦点距離であった。
レンズ構成は複雑な10群11枚のレトロフォーカス型で、レンズの仕様書を確認するとレンズ性能はHC50mm1型と似ており、周辺部の画質低下がありそうなこと、歪みは外側で最大2%程度あることが読み取れる。HC50mmは周辺部の画質向上のためリニューアルされたが、HC35mmはリニューアルされなかった。主流センサーサイズとの兼ね合いから現在のレンズの性能で問題ないとの判断か?、新ズームHCD 35-90mmレンズの35mm域が十分な性能であったため?など、推測はできるが正式な情報は持ち合わせていない。
HC 35mmはレンズの仕様でハッセルブラッドHシリーズ、Xシリーズで、x1.7テレコンを使用することができない。レンズ後端のガードがテレコンと干渉するように作られており物理的に装着できない。同じ広角レンズカテゴリーのHCD 24mm、HCD 28mm、ズームレンズの35-90mmも同様のガードがありテレコンを装着できない。
FUJINONブランドの古いレンズでもLEICA S Typ007で使用するとAFで使用できるため、このレンズはLEICA Sで使用することが多い。
フジフィルムのGFXシリーズにも、H MOUNT ADAPTER Gを使用することにより、本レンズを装着可能である。その制限としては、レンズシャッターは使用できるが、AFに対応していない。
3.アクセサリー互換性
- Extension-Tube-H(H13/H26/H52)は使用できる。
- HTS 1,5 TILT AND SHIFT ADAPTERは使用できる。
- イメージサークルは中判フィルムサイズまでカバーする。
- Converter H 1.7x(x1.7 テレコンバーター)は使用できない。
4.AF対応について
HC/HCDシリーズレンズをマウントアダプター(X H Lens Adapter、XH CONVERTER 0.8)を経由してX1D,X1DII,X2D,907Xに装着しオートフォーカス(以下、AF)を動作させるには、レンズファームウェア19.1.0が必要である。レンズファームウェア19.1.0を適用するためには条件があり、ファームウェア18.0.0以降のレンズが必要である。古いファームウェアの17.0.0以前のレンズはファームウェア19.1.0を適用することができない。
Xシリーズカメラにおける、AF対応状況をまとめると以下の通りである。
- オレンジドット レンズ
- レンズにオレンジ色のマークがついた、通称オレンジドットのレンズは、レンズファームウェアが18.0.0以降であり、ファームウェア19.1.0に更新することによりAFが動作する。
- HC120、HC120-IIはハッセルブラッド社の制限により、ファームウェア 19.1.0でもAFは動作しない。
- 非オレンジドット レンズ
- AF可能なレンズ
- レンズファームウェア18.0.0以降の場合、ファームウェア19.1.0に更新してAFが動作する。
- 非オレンジドットレンズは、シリアルナンバーがVから始まる2010年以降に製造されたレンズの一部レンズがレンズファームウェア18.0.0以降となっている。
- AF不可能なレンズ
- レンズファームウェア17.0.0以前のレンズ
- シリアルナンバーがSから始まるレンズ(2000年~2009年に製造)
- フジノンブランドのレンズ
- AF可能なレンズ
上述にも例外があり、レンズの修理時にフォーカスユニット交換などで新しいファームウェアになっている場合もある。
ハッセルブラッド XシリーズでAFを使えるか否かは、シリアルナンバーから判断するだけでなく、カメラに装着して実際のレンズファームウェアを確認するのが最も確実である。
5.FUJINONレンズについて
HCレンズはフジフィルムブランド・SUPER EBC FUJINONのものがあり、HASSELBLAD HCカメラで使用できるが、最高シャッタースピードが1/800のレンズしかなく、最新の最高シャッタースピード1/2000と比べると表現の幅が狭まる。また、レンズファームウェアが古いため、XCDマウントカメラ・X1D、X1DII、907X、X2Dにおいてオートフォーカス(以下、AF)を利用するために必要なHCレンズ・ファームウェア19.1.0を適用することができない。
そのため2種類のマウントアダプター、X H Lens Adapter、XH CONVERTER 0.8を経由してXCDマウントカメラに装着してもAFは使用できない。
フジフィルムブランドのHCレンズは、ハッセルブラッドの修理サポート対象外で、フジフィルムによる修理対応も終わっているため故障時はどうすることもできない。フジフィルムブランドのHレンズは格安で売られているが購入時はそのことを意識する必要がある。ハッセルブラッドブランドのHCレンズであれば、古いレンズでもハッセルブラッドにて、有償だが修理対応してもらえる。
HCレンズは富士フイルム製造なので、X1D、X1DII、907X、X2Dと同じセンサーサイズの富士フイルムGFXシリーズもマウントアダプター(H MOUNT ADAPTER G)を用意している。こちらはMF(マニュアルフォーカス)専用となるが、カメラ側のメカシャッターだけでなく、レンズシャッターも使用できる。
仕様・比較
レンズ名 | HASSELBLAD HC 35mm | CONTAX ディスタゴン 35mm | LEICA ズマリット S 35mm |
焦点距離(mm) | 35.8 | 35.5 | 35 |
最大絞り | 3.5 | 3.5 | 2.5 |
最小絞り | 32 | 32 | 22 |
レンズ構成 | 10群11枚 | 8群11枚 | 9群11枚 |
最短撮影距離(m) | 0.5 | 0.5 | 0.55 |
レンズ長(mm) マウント面からの距離 | 124 | 108 | 122 |
レンズ最大径(mm) | 100 | 102 | 88 |
フィルター径(mm) | 95 | 95 | 82 |
重量(g) | 975 | 877 | 930/1030(CS) |
リリース年 | 1999 | 2013.10.10 | |
価格 | 2023年中古価格 150,000円〜 | 287,000円 2023年中古価格7万円〜 | 847,000円 979,000円(CS) |
参考文献・参考リンク
更新履歴
- 2024.9.9
- 2024.03.23:改稿
- 2022.03.23:初稿
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