遙かなるイタリア 目黒区美術館

遙かなるイタリア 目黒区美術館

「戦前の行動派画家」

目黒の目黒区美術館で開催されている、「遙かなるイタリア 川村清雄と寺崎武男」を鑑賞した感想。

目次

「遙かなるイタリア 川村清雄と寺崎武男」

概要

本展は目黒区美術館、千葉市美術館、NPO安房文化遺産フォーラム、個人蔵の作品で構成されており、全105点(一部資料は複数点をまとめて1点としている)展示されている。

展示はプロローグ、川村清雄(全6章)、川村関連資料、寺崎武男(全12章)、寺崎関連資料の5つの部屋となっている。

本展は全作品が撮影可能となっている。

感想

川村清雄は江戸から昭和初期を生きた人、寺崎武男は明治から昭和の中頃を生きた人で、イタリアに留学していたという共通点から本展は企画されている。両画家の作品はどこかで見たことはあるけれど、まとまった作品をみるのは初めてだ。

展示は川村のパートと寺崎のパートに別れているので、川村から感想を綴っていく。

川村の部屋は入口そばにカナレット(ジョバンニ・アントニオ・カナル)ヴェドゥータ(Veduta =都市の景観をきわめて精密かつ大規模に描いた絵画または印刷物)の銅版画が展示されている。これは川村が留学中に買い求めて持ち帰った品とされており、当時の版画は今でいうポスター的な位置づけと思われ、観光地に行った土産に買ってしまうという行動は今も同じようで微笑ましい。

カナレットヴェドゥータは2024年末にSOMPO美術館でみた「カナレットとヴェネツィアの輝き」に展示されており、過去の鑑賞が繋がっていく感覚は鑑賞をしている楽しみの1つだ。

もう一点印象的だったのは、《鸚鵡(オウム)》1910-34、真っ赤な漆の板に白いオウムが描かれた作品で、赤と白のコントラストが展示会場でひときわ輝いていた。

さらに川村は書籍装丁の仕事もしていたようで、川村の手掛けた本が数冊展示されていた。中には、泉屋博古館でみてきた「爵」を表紙にあしらった「詳解全訳漢文叢書 孟子」至誠堂が展示されていた。

「詳解全訳漢文叢書 孟子」泉屋博古館「爵」を比べると、「詳解全訳漢文叢書 孟子」の表紙は目の丸い「爵」が描かれていることがわかる。

Before imageAfter image

寺崎の作品の中で目を惹いたのは、ヴェネツィアの著名な建造物を水彩&パステル、銅版、石版など多彩な手法で描いた作品群。これらは写真を撮る感覚で風景を切り取っており、画家の視点がそのまま映し出された臨場感ある作品だ。
こちらもSOMPO美術館で展示されていた作品と記憶がオーバーラップして、同じ場所でも画家によって捉え方が異なるところが興味深い。

展示室奥の六曲一双屏風の《天正遺欧使節》の2作品と、模写・ヴェロネーゼ作《レヴィ家の饗宴》、なども画家の力量を見せつけられる素晴らしい作品だった。

また、寺崎は筆まめな方のようで、逗留先で買い求めたと思われる絵はがきで日本宛の手紙をたくさん残している。
それらには観光名所の写真が使われており風情がある。しかし、旅先で手紙を出す人も減り文化の流行廃りを感じる。
今の時代に河原温が生きていたら、〈I GOT UP〉という作品は、チャット、DM、電子メールでおこなわれていたのだろうか?

まとめ

近代絵画もそれなりに見ているつもりだけれど、作家にフォーカスした展示は情報量が多いと感心した。
感想を書くために両者について簡単に調べたところ、川村は書籍やWikipediaを含めそれなりに情報があるけれど、寺崎に関してはほとんど情報が無いことに驚く。

ギャラリー

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更新履歴

  • 2025.6.3

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