コンパクト・テッサー MS−C.Z TESS 35mm

MS-Optics C.Z TESS 35mmをデジタルカメラで使用したレビューと写真作例
目次
ギャラリー
写真作例の撮影はLeica M-P
レビュー


1.概要
C.Z.TESS 35mm F3.5は、フィルム時代の京セラ製コンパクトカメラ、Yashica T*(もしくはKyocera T* )に搭載された3群4枚のテッサー形式を採用しているレンズ。
レンズはMs-optics(宮崎光学)によって、カメラから取り出したレンズをMs-optics共通ヘリコイドMS-35に移植し、ライカM型カメラの距離計に連動するように改造されている。
主な仕様は以下の通りで、詳細は表に載せている。
- 開放F値 3.5
- レンズ構成 3群4枚
- 絞り羽根 10枚
- 最短撮影距離 0.6m
- ライカMレンジファインダーカメラ距離計連動 0.8m
本レンズは、コンパクトフィルムカメラのレンズなので、Mマウントレンズとしてもとてもコンパクトにできておりレンズフードを付けない場合、厚みは9mm、重量は36gと2020年代のレンズではありえない大きさと重さになる。
レンズの銘板は改造した時期によって、本レンズのように「C.Z.TESS」であったり、「FOR TESSAR」と書かれていたり様々である。鏡筒は銀色と黒色があり、銀色は古い年代に改造のものでにL39マウント、黒色は最近改造されたものでMマウントである。
2.使用感
C.Z.TESS 35mm F3.5の写りは、デジタルの時代においても周辺減光が少し気になる程度で中心はシャープな描写だ。
センサー設計が古めの、LEICA M-P TYP240、SONY NEX-7で青空を写した場合、センサーへ斜めに入射する光の影響で画像周辺部に紫色のカラーキャストを起こすことがある。
この2つの欠点についてだが、周辺減光はレンズ径が小さいためある程度は仕方がない現象で、周辺減光するレンズと割り切って周辺が落ちるようなシーンを選んで撮影するなど撮影者の工夫が必要となる。
カラーキャストの回避は、モノクロームで撮影する。カラーキャストの発生しづらいセンサーのカメラで撮影する。撮影時に太陽光の入り具合を調整するなどがある。
また、露出を調整して周辺部の光を落とすことによって発生する周辺減光によってカラーキャストが目立ちづらくなる。そのため周辺減光をコントロールして撮影するとカラー撮影がやりやすくなる。
操作上の欠点としてはフィルターを装着すると絞りが変更できなくなる。これの対処は、絞りを開けたまま使うか決めた絞り値だけで撮影する割り切りが必要だ。
古いコンパクトカメラのレンズ利用方法として、Mマウントの距離計に連動するタイプは珍しい。Ms-opticsの改造レンズのほとんどは距離計に連動するためコンパクトフィルムカメラでは難しかった厳密なピント合わせが可能になるメリットがある。
3.まとめ
結論としてC.Z.TESS 35mm F3.5 改造レンズをまとめると、フィルムカメラに装着されたレンズを、最新のデジタルカメラで使用できることが最大のメリットだ。
写りに関しては、中央部の先鋭さはデジタル時代でも通用する写りだが、周辺部の描写についてはカラーキャスト発生の可能性と像の乱れから画質はあまり期待できない。このため、35mmフルサイズセンサーより、APS-C、マイクロフォーサーズなどの小センサーが向いている。
Ms-optics・コンパクトカメラレンズ改造リスト
Ms-Opticsでは、このレンズ以外にもコンパクトカメラからのレンズをライカMマウントに移植している。別ページにて紹介している、カメラ組み込みのレンズをライカMマウントとして使用できるようにしたMs-opticsの功績は大きい。この改造にも一部制約があり、レンズが鏡筒に固定されており、そのまま抜き出して、別ヘリコイドに組み込むことができるレンズに限られる。
改造不可能なレンズとして、RICOH GR1、GR21、KONICA BIG MINIなどは、レンズ構造から改造が難しいとのことで依頼を断られたカメラもいくつかある。
- レチナ付属レンズ
- ニコンミニ付属28mmF3.5
- ニコン35Ti、28Ti
- ニコン・ピカイチ付属レンズ
- フジ・ティアラ付属28mmF3.5
- ミノルタ・ハイマチック付属レンズ
- ヤシカ・エレクロト35付属レンズ
- キョーセラT-AFD等テッサー35mm F3.5
- コンタックスT2
- ライカ・ミニルックス・ズマリット 40mm F2.8
Kyocera Yashica T AF-D
Kyocera Yashica T AF-D(以下、AF-D)は、35mmフィルムカメラでプラスチックのチープなボディでフォーカスはオートフォーカスなので撮影者が介入する余地がほとんど無いカメラだ。
リンク先の使用記事「Kyocera Yashica T AF-D ヤシカなの京セラなの?」によるとAFの合焦精度はよろしくないようである。これはこの時代のコンパクトフィルムカメラが搭載しているAFの合焦精度の限界と考えられる。
レンズは購入時にレンズの抜き取られたAF-Dのボディが付属してきたので、フィルムカメラとしてAF-Dを使用したことはない。前オーナーもカメラが壊れたか、フィルムで使うことを諦めたためか、Ms-opticsへ改造を依頼し現在の形になっている。
それが、何らかの理由で手放した物が中古屋に流れた物を購入したことになる。
中古屋に実物を見にいくまでは、ボディのみのAF-Dが付いてくるとは想像していなかった。
レンズが抜かれたボディが返ってくるのは、Ms-opticsにカメラを送って改造を依頼すると、不要なボディを処分する旨を伝えておかないと返ってくる。
Ms-opticsに直接依頼したライカのミニルックスに装着されたズマリットをMマウントへの改造を依頼したとき、ミニルックスのボディが返ってきて、それも手元に残っている。多くのユーザーにとってはレンズを抜き取ったボディはほぼゴミなので、捨てられてしまうことも仕方がない。

仕様
項目 | 値 | 備考 |
焦点距離(mm) | 35 | |
最大絞り | 3.5 | |
最小絞り | 16 | |
レンズ構成 | 3群4枚 | テッサー型 |
最短撮影距離(m) | 0.6 | 0.8mまでカメラ距離計連動 |
レンズ長(mm) | 9 | |
レンズ最大径(mm) | 48.7 | |
フィルター径(mm) | 34 | |
重量(g) | 36 |
参考文献・参考リンク
- 「Yashica T AF」のスペックなどが記載されたサイト(英語)
- WikipediaによるZEISS TESSARの説明ページ
- Kyocera Yashica T AF-D ヤシカなの京セラなの?
- SONY NEX-7・Shige’s hobby
- LEICA M-P Typ240・Shige’s hobby
更新
- 2024.10.3
- 2024.02.15:改稿
- 2022.01.18:初稿
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