ART OF THE REAL 鳥取県美術館

「日本海側で近代+現代をみる」
2025年3月30日に鳥取県倉吉市に開館した、鳥取県美術館・オープニング展示「アート・オブ・ザ・リアル時代を超える美術-若冲からウォーホル、リヒターへ-」を2025年5月23日に鑑賞したレポート。
目次
アート・オブ・ザ・リアル時代を超える美術-若冲からウォーホル、リヒターへ-
概要
- 展名:アート・オブ・ザ・リアル時代を超える美術-若冲からウォーホル、リヒターへ-
- 会期:2025.3.30~6.15
- 場所:鳥取県美術館
展示は6章+エピローグで構成され、展示作品数は配布リストによると165点。
所蔵品、国内美術館、作家蔵、所有者非公開の作品で構成されており、すべて国内にある品と考えられる。
- 1章 迫真と本質
- 2章 写実を超える(写実を越えて)
- 3章 日常と生活
- 4章 物質と物体
- 5章 事件と記憶
- 6章 身体という現実
- エピローグ 境界を越えて
展示フロアーは券売所のある3階と2階フロアーを使った展示、図録などは1階の入口横の売店で販売している。売店の隣に軽食と喫茶の店がある。2階と3階はテラスを設けて休憩用の椅子があり、周辺の眺望も楽しめる。
企画展は3階の専用企画展示室と2階のコレクションルーム1と2で展示されており、展示室以外はフリーゾーンなので、3階の企画展示室に入場する際に、2階のコレクションルーム1と2に入るチケットを渡される。また、コレクションルーム3と4で開催されているコレクション展に入場するためのリストバンドを装着した。
館内をきちんと確認してなかったので、コレクション展をやっていたコレクションルーム3と4は見わすれた。
それでも企画展で満足したのでよしとする。
館内撮影は可能で、展示も一部撮影可能で撮影不可の作品は作品キャプションにカメラマークに斜線の入った撮影禁止の印がある。
感想
2025年3月現在、都道府県の設立した美術館が無い都道府県( *1)は山形県、鹿児島県、鳥取県だ。
3県の1つ鳥取県に2025年3月30日に県立美術館が開館した。
残りの2つのうち山形県は財団が運営する美術館・山形美術館がほぼ県立施設の役目をおっており、鹿児島県は設立に向けた活動はしており、この2県に県立の美術館はできるのか?興味深い。
- *1:大阪は複雑で大阪市が運営する美術関連施設は多いけれど、明確に府立と言える美術館があるかは調べてもよくわからない。
余談はこれくらいにして感想へ。
本展は先に述べたように6章+エピローグの7構成、会期を3つにわけ展示替え、場面替えがあり訪問した5月23日は最後の展示替えが終わった第3期にあたる。
1章 迫真と本質
展示は見たことの無い虎図、土方稲嶺《猛虎搔背図》所有者非公開から始まり、前半は主に日本画の名品がならび、高橋由一《鮭図》笠間日動美術館は高橋由一《鴨図》山口県立美術館の2つは高橋由一好きにはたまらない。
日本画を過ぎると、部屋中央に船越圭《冬の本》所有者非公開(撮影不可)、奥に満田晴穂《識<八識>》作家蔵など現代作家が現れる。
ここで一番見たかった須田悦弘はいずれも作家蔵を3点展示で《サザンカ》《雑草》は鑑賞したけれど、2階ひろまに展示された《椿》を見わすれた😭、またしても須田マジックに翻弄される。作品リストを片手に館内を廻っていたけれど、作品リストの「2階ひろま」という記述を見落として作品を覧た気分でスルーしてしまった。
美術館で2階ひろま付近を撮影した写真を確認すると辛うじて《椿》が写っているのを見つけた。これはきちんと探さないとみつからない。



2章 写実を超える(作品リストに印刷された章題は「写実を越えて」)
長沢蘆雪《富士越鶴図》所有者非公開は、画題のとおり連なった鶴が不自然に圧縮され尖った富士山脇を飛んでいる作品、蘆雪の愛らしい動物画と印象が異なる作品で蘆雪の奥深さを感じる。
本作は2023年の中之島美術館「特別展 生誕270年 長沢芦雪 ー奇想の旅、天才絵師の全貌ー」にも展示されたようで、調べると蘆雪関連の展によく貸し出されているようだ。
古めの日本画を越えると、古賀春江《海》東京国立近代美術館、G・クールベ《まどろむ女(習作)》鳥取県立美術館、藤田嗣治《横たわる裸婦》京都国立近代美術館の壁面からA・ジャコメッティ《ディエゴの胸像》豊田市美術館へ続く展示は壮観。
こちら所蔵のやなぎみわ《Windswept Women2》鳥取県美術館は、モノクロームのインクジェットプリントで高さ3m以上の大作だ。大きさだけで無く作品モティーフ、装飾の額縁を含めたトータルのインパクトがスゴイ。撮影不可。

3章 日常と生活
鳥取県美術館が所有する目玉のウォーホル《ブリロボックス》と《キャンベルスープ缶》と他館から借りたウォーホル作品をまとめて展示。

4章 物質と物体
こちらは現代作家でまとめられ関西地区の公立美術館から貸し出された作品が多くを占めている。
カール・アンドレ《亜鉛と亜鉛のプレーン》滋賀県立美術館は、靴のまま作品上を歩ける展示をしており、作家コンセプトに忠実だ。
G・リヒター《抽象絵画 648-1》国立国際美術館は、2m x 2mの大型作品で地味な色使いの作品に囲まれて派手な赤がいっそう目を惹く。

3階展示はここで終了。本展は一度退出すると再入場不可で注意が必要だ。
5章 事件と記憶
ここから会場が2階に移るため、階段を降りて移動する。2階展示室入口にて3階で受け取ったチケットを渡す。
何度も覧ている東京国立近代美術館 山下菊二《あけぼの村物語》、藤田嗣治《アッツ島玉砕》この2作品は存在感が群を抜いている。両作品を竹橋では無い空間で覧るのは新鮮だ。
兵庫県立美術館 安井仲治の作品は、今のイスラエル・パレスチナ問題を意識せずにはいられない作品。
こちらの作品はプリントで東京国立近代美術館にも収蔵されている。

6章 身体という現実
こちらはジャコメッティ《男》国立国際美術館、ベーコン《スフィンクス》豊田市美術館からはじまり、塩田千春《バスルーム》東京国立近代美術館(撮影不可)の映像へ続く。
他には、イヴ・クライン、高松次郎、ソフィ・カル、石打都、草間彌生、河原温など、現代美術の鑑賞者にとってなじみ深い名前が並ぶ。ここは撮影できない作品が多いけれど見どころは多い。
今回の展示は3章とエピローグ以外は、東京国立近代美術館が作品を貸し出しており各章で展示の中核を担っている。

エピローグ 境界を越えて
エピローグは、所蔵のやなぎみわ2作品(撮影不可)程度でそれほど興味を持てる作家の展示は無かった。
ここも部屋を出ると再入場できない。

喫茶店
美術館に到着が11時前だったため、鑑賞の前に1階にあるGARDEN By Sevendays cafeでお昼ご飯をいただいた。税込み1320円のカレーと200円のスープをいただいた。食事の量は一般的な成人であれば十分だろう。
11時まではモーニングで、トーストとコーヒーのセットも提供している。また、テイクアウトのお弁当も売っていた。

売店
喫茶室隣の売店では図録やグッズが売っている。売店前に、森村泰昌《モリロ・ボックス》所有者非公開が展示されており、これは企画展の展示品の1つだ。

まとめ
新設の県立美術館ということで全国の公立美術館をはじめ多くの作品が鳥取に集結している。
普段見ることができない組み合わせの展示もあり、近所に住んでいたら3つの会期すべてを見にいきたくなるほどよい展示だった。とくに3階のボリュームが大きく時間と体力を使い、2階は流し気味でコレクション展は見わすれた。
鳥取県美術館がコレクション蒐集を始めた時期のは最近なので現在は小粒な作品も多い。これから評価される作家を積極的に探して受け入れて、10年後、20年後に独自のコレクションが構築されることを期待する。
ギャラリー
関連リンク
- 鳥取県美術館・公式情報
- ART OF THE REAL アート・オブ・ザ・リアル時代を超える美術-若冲からウォーホル、リヒターへ-・公式情報
- 美術展ナビ・鳥取県美術館開館レポート・やなぎみわ作品写真あり
- 東京国立近代美術館・安井仲治ポートフォリオ
- artscape アート・アーカイブ探求 山下菊二《あけぼの村物語》
- 国立国際美術館・Gerhard RICHTER・抽象絵画 (648-1)
- 絹本著色猛虎図・とっとり文化財ナビ
- 鹿児島県立美術館設立を考える会
更新履歴
- 2025.5.25
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