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新型広角 ELMARIT R 19mm-II

Last updated on 2025-11-11

LEICA ELMARIT-R 19mm F2.8 2型をフィルムカメラLEICA R8とデジタル一眼レフカメラ CANON EOS 1Ds Mk-III、ミラーレスカメラ LEICA SL Typ601などで使用したレビューと写真作例

目次

ギャラリー

写真作例の撮影は以下のカメラを使用した。

レビュー

Before imageAfter image

1.概要

ELMARIT 19mm-IIはライカRマウント・焦点距離19mmの広角レンズ。
2代目のエルマリート 19mmは現代的な鏡筒をもち、立派な角形フードが付属している。

主な仕様は以下の通りで、詳細は表に載せている。

  • 開放F値 2.8
  • レンズ構成 10群12枚
  • 絞り羽根 6枚
  • 最短撮影距離 0.3m
  • フード 専用フック止め角形フード
  • フィルター装着 不可

レンズ先端に4種(NDx1、Or、YG、KB12)のフィルターを回転式で変更する機構が備わっている。

  • DMR(Digital Module R)で使用すると、19 x 1.37 = 26mm相当の焦点距離となる。
  • LEICA CL typ7323で使用すると、19 x 1.5 = 29mm相当の焦点距離となる。

2.使用感

ELMARIT 19mm-IIは歪みなどは広角レンズにしては、よく補正された広角レンズで通常使用には全く不満はない、フードをしていても逆光状態では怪しい色が出るときがあるため光線状態には気をつかう必要があり、絞り開放の撮影で周辺減光が目立つ場面もある。

最短撮影距離は広角レンズとしては一般的な30cmとなっており、被写体に寄った撮影ができる。

光学ファインダーで本レンズを使用していると、衰えた目とEOSのファインダーの相乗効果か、広角レンズ特有のピントあわせづらさをを感じる。以前使用していたLeica SLではEVFは拡大機能で確実にピントが確認できた。確実なピント合わせという点ではEVFは光学ファインダーを超えている。

新型は、旧型(タイプ-I)の19mm F2.8と比べると、コントラスト、逆光耐性もよくなっている。しかし、他のレンズと比べると全体的に渋めの発色をする印象なので、デジタルカメラの撮影結果であれば現像時に少し明るめに調整するとより見栄えが良くなる。

前述の通り、フィルターが装着できないため、使用時のレンズ保護はフードに付けるバヨネット式キャップが命となる。このキャップは、それほどがっちり嵌まるわけではないため、落として無くす可能性があるので注意が必要だ。紛失防止を考えるならば、不格好だがキャップに紐をつけて、ストラップと連結しておくと安心だ。

レンズ先端にネジ溝はなく、フード内にシリーズフィルターを入れることもできないため、フィルターは装着できない。

フィルム カメラLEICA R8

フィルムカメラLEICA R8で使うときはレンズの被写界深度が深いためファインダーでピントの山が掴みづらいことが多く、シャッタースピードに余裕がある場合は少し絞り込んでパンフォーカスになるように距離を設定して撮ることが多かった。

フィルムでの描写は使用したネガフィルムは若干解像度が足りない印象もあり、リバーサルフィルムの方が向いている印象だ。
モノクロフィルムはISO400のLomography Lady grey 400を使用したところ、粒状感が味にはなるがより繊細なISO100フィルムの方が向いていると感じる。

■デジタル一眼レフカメラ

Digital Module R(DMR)は1000万画素でセンサーサイズが35mmフィルムより小さいため、画像周辺部がカット(クロップ)されるため画像としてみた際の描写はよくなる。しかし、カットし分だけ焦点距離が長くなり、焦点距離19mmはセンサーによる換算係数1.37をかけることにより、35mmフィルム判換算距離は26mm相当となる。
DMRで使える高価格レンズの中では、SUPER ELMAR R 15mm、SUPER ELMARIT R 15mmに次ぐ広角レンズで、その2つのレンズと比べるとレンズサイズが小さいため、街中のスナップや風景写真に利用できる。解像感も申し分なく、歪みもそれほど感じられないため、使い易い広角レンズとなる。

CANON EOSシリーズは35mmフルフレームセンサーのEOS-1Ds Mark-III、APS-HサイズセンサーのEOS-1D Mark-IVとAPS-CサイズセンサーのEOS 7Dで使用した。

この中でまったく問題なく使用できるのはEOS 7Dのみだ。
よりセンサーの大きな2つのカメラは無限遠で撮影するとき、ミラーが戻るときにミラーボックス内の接触センサーに検知されカメラがエラー(Err20)を生じて撮影が完了しないことがある。そのときは無限遠で撮影後に素早くヘリコイドを短撮影距離の方向、たとえば3m程度の位置に移動するとエラーが解消され撮影が完了するが、この方法はイレギュラーな使い方なのでお勧めはしない。また、すべてのレンズとEOSシリーズで同様の動作をするとは限らない。

また、同様のエラーが発生するのは、手持ちのレンズで確認したかぎり、広角側レンズが厳しくELMARIT-R 19mm-II、SUPER ANGULON-R 21mmF4、VARIO ELMAR-R 21-35mm、ELMARIT-R 24mm、SUMMILUX-R 35mm F1.4、SUPER ELMARIT 15mm等が使用できない。

広角で使用可能なのは、SUPER ELMAR-R 15mmmとELAMARIT-R 28mm(初代、2代目)が使用できている。

実用上難点はあるがEOS-1D Mark-IVは35mmフィルム判換算距離は1.3倍の換算係数をかけると25mm相当の焦点距離、EOS 7Dは35mmフィルム判換算距離は1.6倍の換算係数をかけると30mm相当の焦点距離となる。

この3つのカメラは約1600〜2000万画素のイメージセンサーを搭載しており、センサーサイズが35mmフィルム判より小さいのでレンズ周辺部をカット(クロップ)し、レンズ中央の描写のよいところだけを抜き出すため、広角レンズで問題となる周辺減光の影響はほとんど見られない。また、レンズ中央部は歪みの影響を受けづらいため整った描写をする。このため、解像感、歪みにおいて焦点距離15mm付近を含んだ広角ズームレンズとくらべて上質な画像を得ることができる。

Leica-SL(Typ601)& LEICA CL type

LEICA SL Typ601、LEICA CL typ7323は2400万画素のイメージセンサーを搭載しており、35mmフルフレームのSLは焦点距離19mm、APS-CサイズセンサーのCLは35mmフィルム判換算距離は1.5倍の換算係数をかけると29mm相当の焦点距離となる。

ミラーレスカメラで使用する場合、電子ビューファインダー(EVF)の部分拡大機能により、一眼レフカメラと比べてピント位置を性格に決めることができるのが大きな利点だ。とくに広角レンズは一眼レフカメラのファインダーではピント位置が分かりづらい場合が多いため、EVFを使用するメリットが大きい。ライカ以外のミラーレスカメラSONY α7Sii、SONY α NEX-7で本レンズを使用しており同様にEVFの便利さを実感している。

撮影結果は両カメラともに中央部は問題なく、周辺部になるほど若干の乱れがあらわれるため、LEICA SL Typ601のほうがセンサーが大きな分だけ周辺画質が悪くなる。

LEICA SL typ601LEICA CL type7323はライカ純正マウントアダプターLeica R-Adapter L(16076)を介して使用した。Leica R-Adapter L(16076)を使用するとROM端子付きレンズは登録された情報がカメラに受け渡され撮影画像データのExifにレンズ情報として自動的に記録される

■HASSELBLAD X2D-100C

HASSELBLAD X2D-100Cは中判デジタルセンサーを搭載したミラーレスカメラで、センサーサイズは35mmフィルム判よりも大きく、35mmフィルム判にたいする焦点距離の換算係数は0.8倍となっており、イメージサークルが中判デジタルセンサーをカバーしていれば、15mm相当の超広角レンズとなる。しかし、残念ながらELMARIT 19mm-IIの イメージサークルは35mmフィルムサイズがが限界となり、中判デジタルセンサーの範囲をカバーしない。

下図右はもっとも外側が中判デジタルセンサーの撮影範囲で画像の周辺部はイメージサークルが足りないため黒く潰れている。点線内側が周辺減光などを除いた画像として問題のない範囲となる。

LEICA ELMARIT R 19mm +HASSELBLAD X2D-100Cみなとみらい・Minatomirai

3.まとめ

結論としてELMARIT 19mm-IIをまとめると、珍しいライカ設計の広角レンズで、新型は旧型の19mmよりは間違いなくよい描写をする。

2000年代の一眼レフカメラ向け広角レンズと比べると鏡筒はコンパクトにまとまっているが、フィルムカメラの時代につくられたレンズなので、デジタルカメラで使用すると現代の最新レンズと比べると各収差補正に甘い部分も見られる。

購入に関しては、中古市場で強気な価格で売られていることも見かけるため、予算に合う価格で巡り会えたら購入するというスタンスをお勧めする。

仕様・考察など

ライカRマウントの広角レンズは、多くのレンズで設計を他社に依頼している。15mmの2本は旧型がツァイス、新型がシュナイダー、魚眼の16mmはミノルタをベース、21mmの2本はシュナイダーとなっている。この焦点距離19mmは初代、2代目ともにライカの設計だ。

4種の回転フィルターは、スーパー・エルマー R 15mm、スーパー・エルマリート R 15mm、フィッシュアイ・エルマリート R 16mmなどと同様だ。カラーフィルターはフィルムカメラ時代に人工照明などの日中とは異なる光源下で色補正をおこなうためのもので、デジタルカメラは色修正が容易なので使用することはほとんどないだろう。

2016年発売のCARL ZEISSの最新広角レンズ MILVUS 18mm F2.8とレンズ構成を比較した。
MILVUS 18mmはDISTAGON 18mmの流れを汲んでおり、YASHICA/CONTAX時代のDISTAGON 18mm F4(1967年)、CARL ZEISSのDISTAGON 18mm F3.5(2008年)をへてMILVUSにいたる。

カール・ツァイスは焦点距離15mmと21mmの間を埋めるレンズとして18mmを採用している。それに対してLEICAは15mmと21mmの間を一眼レフカメラのRマウントは19mmを採用した。広角レンズで1mmの違いなので風景を撮影する場合も大きな違いは見られないだろう。

ライカMマウントでは18mmを採用しているので、19mmに特別こだわりがあるわけではないようだ。

新たらしい2型のELMARIT R 19mmは1990年発売なので、年代的に比較するならば もっとも古くて長く現役を務めたDISTAGON 18mm F4がふさわしい気もするが、絞り開放値の仕様が同じF2.8の最新レンズ MILVUS 18mmとくらべてみた。

MILVUS 18mmは12群14枚のレンズ構成で、特殊ガラスレンズ4枚、非球面レンズ2枚と2016年設計らしく贅沢な作りになっている。1990年とすでにオールドレンズにはいるELMARIT R 19mmは10群12枚のレンズは球面レンズのみで構成されている。

レンズは数値性能で語るものではないが、両社が配布しているPDFの性能指標を見ると、最新のMILVUS 18mmは各種性能においてELMARIT 19mmを上回る数値をしていることが読み取れる。これは設計製造年代の違いから当然の結果と言える。

Before imageAfter image
項目ELMARIT II型MILVUS
焦点距離(mm)1918
最大絞り2.82.8
最小絞り2222
絞り羽根69
レンズ構成10群12枚12群14枚
最短撮影距離(m)0.30.25
レンズ長(mm)6070.0(NIKON-F)
レンズ最大径(mm)7190
フィルター径(mm)77
重量(g)560675(NIKON-F)
フード125462144-505 バヨネット・花形
マウントライカRCANON-EF(ZE),NIKON-F(ZF-2)
製造年1990-20052016〜
製造本数5,900?
ELMARIT-R 19mm F2.8 レンズ仕様書(英語)

参考情報

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更新履歴

  • 2025.11.10
  • 2025.4.9
  • 2024.8.20
  • 2024.02.17:改稿
  • 2022.02.21:初稿

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