EPSON R-D1
世界初デジタルレンジファインダーカメラ
エプソン製レンジファインダーデジタルカメラR-D1のレビューと写真作例
目次
ギャラリー
- 写真作例のレンズは、RICOH GR28mm、HOLOGON 16mmを使用した。
- ギャラリーのキャプションに詳細を載せている。
レビュー
1.カメラ概要
R-D1はエプソンが2004年にリリースした、600万画素のAPS-Cサイズセンサーを搭載したライカMマウント互換のデジタルレンジファインダーカメラ。
R-D1は時計を意識したアナログメーター、回転式の液晶パネルを装備するなど、のちのLEICA M8が実用重視のカメラであることとは対照的に遊び心あふれるカメラだ。
センサーがAPS-Cではあるが、カメラサイズをそれほど大型化せずにフィルムカメラのBESSAの機構にデジタル部分を収めたのはとても高い技術力だと感じる。
本カメラのRaw形式はエプソンオリジナルのERF形式となっており、搭載された600万画素センサーから3008 x 2000ピクセルの画像を作り出す。その容量は1枚あたり10MBであるため、2GBのSDカードを使用すると約200枚撮影可能である。
バッテリーは、小型のEPALB1(NP-80・フジフィルム、DB-20・リコー) *1を採用している。小型だが本カメラを駆動させるには十分な容量を持っており、連写のできないカメラという性格もあるが、2GBのSDカードで200枚を撮りきって、バッテリーが空になるということはなかった。エプソン公式サイトの情報では、撮影条件1で1000枚、撮影条件2で360枚と記載されている。
画像データ現像のソフトウェアもエプソンから無償提供されており、EPSON Photolierは2024年現在も公式に配布されている。
Windows版しかリリースされていない、なかなか使い勝手のよいソフトウェアでR-D1の撮影画像をPhotolierで現像していた。
2.使用感
R-D1はライカM8に先駆けること2年、2004年にエプソンから史上初のデジタルレンジファインダーカメラとして発売された。
2020年代にカメラをはじめた方にとっては、エプソンはプリンターメーカーとの認識が強いだろうが、2000年代のエプソンは、画像出力のプリンターだけでなく、画像入力のためのコンパクトデジタルカメラを製造販売しており、その延長上にこのカメラが現れた。
イメージセンサーは、この時代によく使われていた、APS-Cサイズの600万画素センサー、レンズの素性を生かすためにローパスフィルターもできるだけ薄く作られていた。ローパスフィルターへの対応は、後にライカ、ソニー、ペンタックス、リコーなどがローパスフィルターレスのカメラをリリースするが、2004年当時としては珍しい仕様であった。
このカメラを使うと600万画素だがさまざまなレンズの特徴をストレートに表現した画像を得ることができ、カメラは画素数がすべてでは無いことを実感させてくれる。
ファインダーやシャッターなどのカメラ機械部分は、コシナの技術が使われているようだが、シャッター最高速度は1/2000に引き上げられており、F値の明るいレンズにもある程度対応できる。
しかし、金属幕縦走りフォーカルプレーンシャッターは金属が干渉するような甲高い音がして、お世辞にも静かなカメラとは言えなかった。ライカもライカ M8、M9のシャッター音はうるさかったが、後継機になるほど静かになっていく。
APS-Cサイズセンサーは、35mm判のレンズの焦点距離をそのまま使うことはできないが、広角レンズなど周辺部の光量落ち、画質低下が見られるレンズでは、レンズの個性を一部捨てることにはなるが、中央部の画質のよいところだけを使えるメリットもあった。
例えば、HOLOGON 16mmを使用した場合(メーカーはホロゴンのようなカメラ内部に後玉が入り込むレンズの仕様は推奨していない。お約束だが使用は自己責任でカメラが壊れても誰も助けてはくれない)、周辺を削ってもそれなりに周辺減光は見られるが、LEICA M9などで問題となる画像周辺のカラーキャストは見られないので、24mmの広角レンズとして使用することができた。
また、カメラはミラーボックスがない特性を活かして、とても薄く、軽く仕上げられ、大口径の大柄なレンズよりはコシナ・フォクトレンダーの小さなカラースコパー系のレンズとよくマッチしていた。
このR-D1はレンジファインダーカメラにのめり込むきっかけになったカメラで、このカメラの病気であるファインダーの縦ズレを、メーカーで何度か調整しながら2005-2007年の3年間使用してLEICA M8に移った。
2020年代に入り、きちんと動作する中古も減って、市場で見かけることも稀になり、見かけてもずいぶん高価なため、もう一度使うことはないであろう。
2007年に手放した数年後、在庫処分のR-D1xを購入し撮影して感じたのは、カメラそのものが全く進化していないことで、LEICA Mデジタルと比べると残念な気持ちになった。
マイナーチェンジ版のR-D1sはセンサーノイズ低減のためにCCDに放熱板が追加されている。R-D1に放熱板はないが実用上不便を感じたことはない。また、R-D1xを使った限りノイズの乗り方はR-D1と大きな違いは感じない。連続撮影でCCDが熱を持つと結果は違うかもしれないが、そのような使い方はしなかった。
それとは対照的にライカはデジタルレンジファインダーカメラを進化させたが、2024年現在、本体価格が高価なこと、デジタルセンサーの進化とレンジファインダー機構の性能ギャップが広がり続けることが、レンジファインダー方式の限界を示しているように感じられる。
カメラの使い方は人それぞれだが、M型デジタルを使いながら、VISOFLEXや背面液晶でピント位置を毎回確認するのは、個人的にはあまりよい使い方とは思えないため、Mデジタルとは疎遠になっている。
3.未発の後継機R-D2
このカメラが惜しいのは、マイナーチェンジのみで終わってしまい、2代目となるR-D2が発売されなかったことだ。デジタルカメラの開発製造の費用が増大していくことに、カメラ本体が本業でないエプソンには事業継続が難しい判断だったことは容易に想像できる。
たとえば、レンジファインダーフィルムカメラを創っていた、コニカミノルタの直系であるソニーが、本機を継いでいれば、独自のセンサー、画像処理技術を持つソニーならではのレンジファインダーデジタルカメラができたように思う。
しかし、このカメラはカメラ部分にコシナの技術を多く用いているため、他社に権利を譲渡する場合、コシナの権利と技術をどうするかというところも問題になったのかもしれない。
コシナ自身で継続する場合はソフトウェア開発の問題が生じるし、コシナはこのカメラのリリース後、フィルムカメラのBESSAシリーズをやめてしまったため、レンジファインダーカメラのメカ部の設計や部品供給などに問題が生じることになったかもしれず、いずれの道でも継続は難しかったように思われるが、この稀有なカメラの後継が発売されなかったのは非常に残念である。
2017年にフランスのPixiiから、Mマウント互換のレンジファインダーデジタルカメラがリリースされた。PixiiはR-D1と同じくAPS-Cサイズセンサーから始まり、2024年に35mm判フルサイズセンサーを搭載した、Pixii Maxをリリースするにいたっている。
製造委託先の技術力向上などによりデジタルカメラの技術が比較的汎用に利用できるようになってきたとはいえ、このプロダクトの企画、設計、販売を継続しているのは素直にすごいと思う。日本には代理店がないこと、ユーロ建てだとかなり高価になるため、なかなか縁はないがいつか使ってみたいカメラの一つだ。
仕様・比較
モデル名 | R-D1 | R-D1s | R-D1x G |
有効画素数 | 6.1メガピクセル | ← | ← |
ファインダー | 等倍 | ← | ← |
最高シャッター速度 | 1/2000 | ← | ← |
バッテリー | EPALB1(NP-80、DB-20) *1 | ← | ← |
背面液晶 | 2.0型カラー液晶 23.5万画素 回転式 | ← | 2.5型カラー液晶 23万画素 固定式 |
記録メディア | SD | SD | SD/SDHC |
サイズ (高さ x 幅 x 奥行き) | 142.0 x 88.5 x 39.5 | ← | ← |
重量 (本体のみ) | 560 | ← | 570 |
カラー | ブラック | ← | ← |
リリース年 | 2004年 | 2006年 | 2009年 |
オプション
- 専用バッテリー:EPALB1
- 本革ケース:RD1SC1
- レンズ
焦点距離 | 名称 | 換算焦点距離 |
12mm | Ultra Wide Heliar 12mm | 18mm |
15mm | Super Wide Heliar 15mm | 22.5mm |
21mm | Color Skopar 21mm | 31.5mm |
25mm | Snap Shot Skopar 25mm | 37.5mm |
28mm | Color Skopar 28mm | 42mm |
35mm | Color Skopar 35mm | 52.5mm |
40mm | Nokton 40mm | 60mm |
50mm | Nokton 50mm | 75mm |
75mm | Color Heliar 75mm | 102.5mm |
90mm | Apo Lanther 90mm | 135mm |
参考文献・参考リンク
更新履歴
- 2024.8.15
- 2024.07.12:更新
- 2024.02.17:更新
- 2023.12.18:初稿
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