M43の極限・LUMIX GM5

パナソニック製デジタルカメラ・DMC-GM5のレビューと写真作例
目次
ギャラリー
レビュー

1.概要
LUMIX GM5は2014年にリリースされた、マイクロフォーサーズというコンセプトを突き詰めたカメラ。
極小ボディにEVF搭載、写真撮影にファインダーが必須という世代に突き刺さるプロダクト。
背面ギリギリまで広げた液晶ディスプレイ、外観からはMINOLTA CLEの再来のように感じられる。
1600万画素のLiveMOS、0.2型116万ドットEVF、3インチ背面液晶を幅100mm、高さ60mm、奥行36mmのコンパクトボディに詰め込んでいる。詳細な仕様は以下表に載せている。
2.使用感
LUMIX GM5はこれを書いている2024年現在10年落ちのカメラとなる。しかし、1600万画素のセンサーをもち、普段使いには不満を感じることはない。しかし、オールドレンズとの相性はそれほどよくなく、怪しげな色が見られることもそれなりにある。
マウントアダプター遊びをする上でもっとも問題となるのは、電子接点のないレンズを装着した場合、メカシャッターが使えなくなることだ。撮影時は無音で静かになため、ほとんどの撮影で問題はないけれど、油断して撮影後にカメラを動かすとローリング歪みが発生する。
GM5に似合うレンズが少ないことも若干の不満で、マニュアルフォーカスでもよいので、焦点距離8mm〜12mm程度の極小レンズがあればよりGMシリーズを楽しめる。
手持ちのレンズではMs-optics(宮崎光学)の17mmが最広角で35mm判換算焦点距離では34mm相当になる。やはり35mm判換算焦点距離で24mm程度となるレンズが欲しい。
Kowaのプロミナーレンズは、8.5mm、12mmと良い焦点距離を揃えている。しかし、業務用レンズの転用でレンズサイズが大きくなっているのは難点だ。VoigtlanderのNOKTONシリーズもレンズが大きいため、GM5とのマッチングはよくない。
純正の12-32mmズームは微妙で、補正しないRawで撮影した画像はコンパクトズームレンズの粗が随所に見える。それ以外のマイクロフォーサーズシステムのレンズは、大きくて重いレンズが多く、GMシリーズにマッチするレンズが少ない。外観的にはズミルックス 15mm F1.7がもっともマッチしているように思える。
カメラの操作は、小さなボディにボタンとダイヤルを最大限に配置しており、窮屈だが操作性は悪くない。EVFも少し荒いが拡大表示するとピントの確認は可能である。
残念だったのは、このカメラ販売が振るわなかったことだ、リリースされた2014年はスマホのような大型モニターを見ながら撮るスタイルが主流になっており、EVF付きコンパクトなレンズ交換式デジタルカメラの人気はとてもニッチなものということを露呈させた。その後のPENTAX Q、NIKON 1も敗北したので、この路線はマニア以外には需要が無かったことは実証されている。
マイクロフォーサーズにおける、ミニマル+EVFというコンセプトはGM5のみで終了し、ファインダーの無いGM1系列のカメラがGF9、 GF10/GF90とリリースされたがほどなく終了し、このコンセプトのカメラはLUMIXの商品ラインから消えた。
2018年のGP+にGM5をぶら下げて、PANASONICブースに立ち寄って、「LUMIX GM5-2 (GM5-II)は出ないんですか?」尋ねたところ、「GF10/GF90が同じサイズなので是非こちらを」と勧められたけれど、EVFを内蔵していないカメラには興味が持てなかった。
オリンパス(現・OMデジタルソリューションズ株式会社)のPEN-Fがかろうじてこの系譜と感じる。しかし、GM5と比べるとボディサイズ(幅x高さx奥行 124.8×72.1×37.3 mm)は一回り大きくなる。
とてもニッチで需要なのは承知しているがボディサイズを維持したまま、PEN-F相当の画素数2000万画素、EVFを200万ドットにアップデートされたGM5の後継機がリリースされることを望んでいる。
継続してこそプロダクトは熟成するため現状はたいへん残念だ。
3.まとめ
結論としてLUMIX GM5をまとめると、PENTAX Q、NIKON 1よりセンサーサイズが大きく、レンズ交換が出来る貴重なカメラ。しかし、カメラマニアには受けたけれど一般ユーザーには訴求しなかった。
このカメラがマイクロフォーサーズの登場時に発売されて、FUJIFILM X100のように順調に改良・ステップアップしていれば、パナソニックの名機と呼ばれたかもしれない。発売時期と技術がマッチングしなかった悲しい事例だ。
余談 パナソニックのカメラ事業
2024年現在、パナソニックのカメラ事業は、Lマウントとマイクロフォーサーズの2本立てとなっている。
Lマウントは小型のSシリーズと廉価なレンズは少し売れたようだけれど、メーカーの稼ぎ頭である高価格帯のカメラとレンズは完全に失敗している。マイクロフォーサーズについては、カメララインナップが絞られ、ビデオ用途に振ってきている感があり、レンズの新規リリースもほとんど無いため、マイクロフォーザーズのやめ時をはかっているように感じられる。
客観的に見て、パナソニックにおいてLUMIX事業はお荷物になっているようで、LUMIXカメラ事業の終焉、事業分離は社内で検討されているように推測される。事業分離という手段には先達がおり、オリンパスからスピンアウトしたOMデジタルソリューションズ(以下、OMD)は、赤字続きで小資本の悲しさをふんだんに漂わせている。2024年現在、ボディは過去の焼き直し、レンズはOEM調達とほぼ独立カメラメーカーの体をなしていない。やはり大資本というバックボーンが無いとカメラ事業を続けることは難しいのだろう。LUMIXもスピンアウトすると同様の状態になると推測される。
LUMIXとOMDの合併があるのか?というのは難しいところだがパナソニックがある程度まとまったお金を手切れ金として出すのであれば、OMの株を持っている投資会社としても悪くない話だと思われる。しかし、競合他社が強力なカメラ事業において、弱者連合が生き延びるためには、合併前から売れる製品を開発しておき、合併時にドカンと発売するくらいの根回しが無いと難しいと思われる。
そもそも売れる製品を作るというのが難しいのは間違いない。
LUMIXでひさびさに話題になったのは、2024年のLマウントアライアンスカメラ、LUMIX DC-S9発表時に、パナソニック エンターテインメント&コミュニケーションの副社長執行役員、イメージングソリューション事業部の津村敏行 事業部長(肩書き長いな)の言葉として、「マイクロフォーサーズの利点を理解していただけるのは、むしろカメラに詳しい方々」に続けて、「カメラリテラシーの低い人々にとってマイクロフォーサーズは理解しにくい。」(引用元:BCN+R「「冷たい靴」を備えたLUMIX S9が物語る、カメラメーカーの苦悩と決断」)と表現し一部から顰蹙をかったけれど、表現としては炎上狙い(実際、少々話題になり掲載した媒体としては成功)ともとれる表現で好ましくないけれど、現状を的確に表した表現と言える。
ここで、仮にGMシリーズの後継として、LUMIX DC-S9がマイクロフォーサーズセンサー、高性能EVF搭載、ボディ内手ぶれ補正を搭載したモデルであった場合、販売価格がLUMIX DC-S9と同様の20万円程度になるのであれば、販売量を望めるだろうか?、商品として魅力があれば20万のプライスでも売ることは可能だ。しかし、GM5が10年前に10万円で失敗に終わっているため、同じ轍を踏まないとは言い切れないだろう。
いずれにせよ、パナソニックの社内的に過去にGMシリーズで失敗している経験があるため、商品企画としてGMシリーズのリバイバル企画を通すのは難しいだろう。
LUMIX DC-S9の企画が一定程度の成果を示すかは、2024年秋から年末くらいにはわかると思われるので、ニュースをチェックしておこうと思う。POSデータを公開しているBCNの2025年04月21日~04月27日ランキングで50位にも入っていないのでそれほど売れてはいないのだろう。
仕様・カメラ比較
項目 | GM5 | GM1 / GM1S | PEN-F |
カメラ有効画素数 | 1600万画素 | 1600万画素 | 2030万画素 |
レンズマウント | マイクロフォーサーズマウント | マイクロフォーサーズマウント | マイクロフォーサーズマウント |
撮像素子 | 4/3型Live MOSセンサー 総画素数1684万画素 | 4/3型Live MOSセンサー 総画素数1684万画素 | 4/3型Live MOSセンサー 総画素数約2177万画素 |
手ぶれ補正 | なし | なし | 5段 |
EVF | カラー液晶 ライブビューファインダー 0.2型・約116万ドット相当 | なし | アイレベル式OLEDビューファインダ 約236万ドット |
背面液晶 | 3.0型静電タッチパネル液晶(約92万ドット) | 3.0型静電タッチパネル液晶(約104万ドット) | 3.0型2軸可動式液晶 |
内蔵フラッシュ | なし | あり | なし |
バッテリー | DMW-BLH7 | DMW-BLH7 | BLN-1 |
外形寸法 幅 x 高さ x 奥行 (mm) | 98.5 × 59.5 × 36.1 | 98.5 × 54.9 × 30.4 | 124.8 x 72.1 x 37.3 |
重量(g) | 約211 (本体、バッテリー、メモリーカード含む) | 約204g(本体のみ) | 約427g(CIPA準拠 付属充電池およびメモリーカード含む) |
ボディカラー | 緑、赤、黒 | オレンジ、白、黒、銀 | 黒、銀 |
リリース年 | 2014.11 | 2013.10 | 2016.1 |
定価(税抜き・ボディのみ) | ¥90,000- | ¥70,000- | ¥150,000- |
オプション
- ハンドグリップ DMW-HGR1(シルバー/ブラック)
- サムレスト COTTA CT-SRGM001(シルバー/ブラック)
- Novoflexマウントアダプター Ads by amazon.
参考情報
- LUMIX GM5 公式ページ
- BCN+R記事「冷たい靴」を備えたLUMIX S9が物語る、カメラメーカーの苦悩と決断
- BCN+R デジタル一眼カメラ 週間売れ筋ランキング
- Lumix GM5買いました。レビューですヾ(*´Д`*)ノ
- Panasonic GM1, GM5貼り革キット・Aki-Asahi・https非対応サイトなので警告が表示される可能性がある
- MINOLTA CLE ・Shige’s hobby記事
更新
- 2025.5.7
- 2024.07.14:改稿
- 2024.05.20:改稿
- 2023.03.03:改稿
- 2022.04.11:初稿
広告
- ライカレンズ・Ads by Amazon
- LUMIX GM5・Ads by Amazon
- LUMIX GF9・Ads by Amazon
- LUMIX GF10・Ads by Amazon
- DC-S9・Ads by Amazon
- オリンパス PEN-F・Ads by Amazon
- DMW-BLH7互換バッテリー・Ads by Amazon
コメントを残す