長焦点135mm APORIS 135

Ms-optics APORIS 135mm F2.4をデジタルカメラで使用したレビューと写真作例
目次
ギャラリー
- 写真作例の撮影は、LEICA M typ240、HASSELBLAD X2D、SONY NEX-6
レビュー


1.概要
APORIS 135mm F2.4は、MS-Optics(宮崎光学)が2017年にリリースした焦点距離135mmの長焦点レンズ。
主な仕様は以下の通りで、詳細は表に載せている。
- 開放F値 2.4
- レンズ構成 4群5枚
- 絞り羽根 16枚
- 最短撮影距離 1.6m
- ライカMレンジファインダーカメラ距離計連動 なし
- フード 専用逆ネジ・ネジ込み(58mm径)
- フィルター 58mm径・逆ネジ込み
レンズタイプは望遠タイプで明るさを求めたエルノスター型を採用している。
レンズにアポの名を冠したアポクロマートレンズとなっており色収差の除去にこだわった設計をするため、一部レンズにキヤノンオプトロンのフローライトガラス(蛍石硝子)が使用された贅沢なレンズとなっている。
レンズには58mm径・ねじ込み型の逆付けフードが付けられており、フィルターを装着する場合は、フードを外して58mm径のフィルターを逆付けで装着し、そこにフードを装着する形になる。
リリースされたレンズとは別に、レンジファインダーカメラの距離計と連動するレンズ鏡筒も企画されたが、ライカM型の2重像合致式のピント調整では絞り解放時にピントが正確に決まらないことと、レンジファインダーカメラの距離計連動機構をレンズマウント付近に組み込むと四隅にケラレが生じるためにお蔵入りになった。
また、ライカMマウント版以外にフランジバックの長いTマウント版がリリースされており、こちらはTマウントアダプター経由で各社の一眼レフカメラで使用することができる。
2.使用感
所有しているAPORIS 135mm F2.4はMマウント版で、Mマウント版はライカMの距離計に連動しないため、撮影にはM型デジタルライカにEVF2、VISOFLEX、VISOFLEX2の電子ビューファインダーを追加するか、ミラーレスカメラを使用する。
写りに関しては、35mm判で使用するにはまったく問題なく、後述する中判デジタルセンサーにおいて全面は使えないがセンサーの9割程度は使用可能だ。
レンズは細身で200mmと長さのある鏡筒となっている。
カメラに装着した状態は写真のとおり、レンズがピノキオの伸びた鼻のようにみえる。
下図の4カ所が操作部となっており、もっともカメラ側にフォーカスリング、コマ収差調整部、絞りリング、球面収差調整部となっている。
操作性はもっと使うフォーカスリングの幅が十分にあり回転角度も最短撮影距離の1.5mまで約180度あるので微妙なフォーカス操作ができる。
収差調整リングと絞りリングは適度なトルクがあり、撮影中に意図していない変更をすることはない。

レンズはHASSELBLAD X2D、ライカ SL typ601、LEICA M Typ240にEVF2を装着して使用した。それぞれの電子ビューファインダーで絞り開放から問題なくピント位置をあわせることができる。
レンズ名にアポを冠するためEVFに表示される画像は被写体周辺部に色滲みが見られることも無く被写体を近くで見ているように感じられる。
2020年台の高画素EVFを積んだミラーレスカメラであれば同様の操作感を得られるだろう。
レンズの使用しているキヤノンオプトロンのフローライト硝子は、これは大変高価の物だと、宮崎氏がおっしゃっていたのが印象に残っている。硝子調達の点からも追加生産は難しいかもしれないため、今後、レンズ評価の見直しなどで貴重なレンズになるかもしれない。
3.付加情報
宮崎式可変機構
本レンズは宮崎レンズ特有の描写をコントロールするための可変機構が搭載されている。
宮崎式の可変機構には以下の2つの種類がある。
- VARIO PETZ 57mm、VARIO PRASMA 50mmの球面収差(SA)可変機構
- SONNETAR 50mm、SONNETAR 73mmのコマ収差 可変機構
VARIO PRASMA 50mm以外のレンズは、この可変機構を使用するときはレンズを外して、レンズ後玉の位置を調整するため、野外で設定を変更するのはセンサーへのゴミの付着などから実施は躊躇われた。
このAPORIS 135mmは上記2つの可変機構を搭載しながら、レンズ鏡筒に調整用のレバーが設けられているため、レンズを装着したまま可変機構を操作できるようになっており、撮影時に可変機能の調整がしやすくなっている。
これは鏡筒サイズに余裕があるAPORISだから実現できたことだ。
焦点距離135mm
レンジファインダー向け、一眼レフ向けにせよ、単焦点レンズの焦点距離135mmは市場価値が低い。
ライカRマウント用のエルマリート R 135mmでも言及しているが、ズームレンズに飲み込まれた焦点距離であること、日常撮影では使いづらい焦点距というところが大きな原因と考える。
焦点距離135mmの単焦点レンズで異彩を放つのは、ライカのアポ・テリート M 135mmで、このレンズは、最新の135mmレンズであることと、新品がそれほど売れていないため、中古市場であまり見かけないこともあり、高価格を維持している。
本レンズもリリース時は10万円を超えており、それほど売れずにカメラ店でよくみる存在であった。しかし、リリース7年経過した2024年現在では中古市場で見かけることもなくなった。
- レンズ構成図は各社の配付資料から引用し、サイズはこちらで調整しているため、厳密ではない。


中判デジタルカメラ
HASSELBLAD X2Dで使用したところ、44 x33mmのセンサーのうち、横方向で約90%をカバーしている。
X2Dはカメラ側にシャッター機構を持っていないため、電子シャッターでの撮影となる。電子シャッターの撮影は静音性が高いが被写体のローリング歪みが発生する可能性がある。
フジフィルムのGFXシリーズカメラはカメラ側にシャッター機構を持っているため、ローリング歪みの心配をする必要が無い。


仕様・レンズ比較
項目 | アポリス | アポ・テリートM f3.4/135mm |
焦点距離(mm) | 135 | 135 |
最大絞り | 2.4 | 3.4 |
最小絞り | 16 | 22 |
絞り羽根 | 16 | 10 |
レンズ構成 | 4群5枚 | 4群5枚 |
最短撮影距離(m) | 1.6 | 1.5 |
レンズ長(mm) | 122 Mマウント面 | 104.7 Mマウント面 |
レンズ最大径(mm) | 60 | 58.5 |
フィルター径(mm) | 58 | 49 |
重量(g) | 366 レンズのみ 400 フード、フィルター、リアキャップ | 450 |
フード | 専用 円筒型58mm逆ネジ込み | 組込 |
マウント | ライカM距離計 非連動 | ライカM距離計 連動 |
リリース年 | 2017.05 | 1998 |
定価(円・税別) | ¥100,000〜 | ¥630,000 |
参考リンク
- Wikipediaによるエルノスター型レンズの解説
- キヤノンオプトロン
- フローライトガラス(蛍石硝子)
- ライカ アポ・テリートM f3.4/135mm ブラック
- ELMARIT R 135mm・Shige’s hobby
- 世界のライカレンズ 写真工業 11月号別冊 2000年11月30日発行・Ads by Amazon
- APO TELYT 135mmの荒木健氏によるレンズレポートがP98に掲載。
更新履歴
- 2025.4.7
- 2024.11.11
- 2024.7.28
- 2024.03.14
- 2023.03.14
広告
- ライカレンズ・Ads by Amazon
- Ms-optics・Ads by Amazon
- ライカ書籍・Ads by Amazon
- ライカ 135mm・Ads by Amazon
- Ms-optics関連商品・メルカリアンバサダー
- 世界のライカレンズ 写真工業 11月号別冊 2000年11月30日発行・Ads by Amazon
コメントを残す