SIGMA sd Quattro / Quattro H

独創の最新3層センサー搭載カメラ

シグマ・sd Quattro / Quattro Hのレビューと写真作例

目次

ギャラリー

  • APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM + sd Quattro H
  • 14-24mm F2.8 DG HSM | Art 018 + sd Quattro H

レビュー

  1. カメラ概要
  2. 使用感
  3. X3Fファイル
  4. DNGファイル
  5. sd Quattroに思うこと

1.カメラ概要

sd Quattro1は2016年7月、sd Quattro Hはそれから遅れること半年後の2016年12月にリリースされたミラーレスデジタルカメラ。

SD1 /SD1 Merrillが発売されてから約4年後のリリースで、シグマはカメラボディを諦めたのかと思っていたが、そうでは無く、レンズ交換式のQuattroシリーズは、1眼レフ形式を捨てEVF搭載し、シグマSAマウントのままミラーレスカメラとなった。

ボディデザインは、ミラー部分が無くなったためスクゥアになったが、フランジバックの長いシグマSAマウントなので、えんとつのようにボディから筒が生えている。これまた、とってつけたようなEVFはスペック上は236万ドット、視野率100%、倍率約0.96倍(50mm F1.4、∞、-1m-1時)と十分な数値である。

センサーと液晶類の消費する電力のため標準状態のバッテリー1個ではすぐにバッテリー切れをおこすため、その解決策としてバッテリーを2個搭載するバッテリーグリップが用意された。ボディの正面から見て左下の切り欠きはバッテリーグリップを装着することで埋められて、正方形状の巨大なカメラになる。このボディにシグマ自慢のArtレンズを付けると巨大さはさらに強調され、カメラの持ち運びにビリンガムの335クラスの鞄が必要だ。

第4世代Foveonセンサー2は2種類あり、レンズ一体型カメラのdp Quattroとsd Quattroで使用されている2,000万画素 +500万画素 +500万画素の3層構造を持つ、35mm判換算1.5倍となるAPS-Cサイズセンサーと、sd Quattro Hで使用される、2,550万画素 +640万画素 +640万画素の3層構造を持つ、35mm判換算1.3倍となるAPS-Hサイズセンサーである。

sd Quattroの撮影解像度は2,000万画素、sd Quattro Hの撮影解像度は2,550万画素とセンサートップの画素数が、撮影解像度となる。

2.使用感

sd Quattroシリーズは、SD1のセンサーより製造難度が上がった謎のセンサーを搭載したカメラ。1960万画素x3は画像処理が重いと開発者のインタビューには書いてあったが、変則的なセンサーの場合、今までの画像処理と異なる部分が多くソフトウェアの開発負担はあまり変わらないような気がした。sd Quattro-Hは、sd QuattroのセンサーサイズをAPS-Hサイズにスケールアップし、トップが2550万画素、その下は640万画素となっている。

撮影結果を出力した際のキレのある解像感あふれる画像はやはり侮りがたいものがあり、撮影結果は今でも十二分に通用する。

EVFは仕様上は満足な物だが、実際に使用すると、表示レート(リフレッシュレート、フレームレート)が低いためか、像の遅れが激しく目が疲れる。シャッターボタンを押したあとのブラックアウトの時間も長いため、同時代のソニー α7シリーズ、ライカ SL typ601のファインダーと比較するとあきらかに劣っている。

自身は短時間の使用だったので経験していないが、メカダストがセンサーに付着するという問題が取り沙汰されのも残念な話だ。

sd Quattro / sd Quattro Hは未完成のカメラと呼ばれても仕方がないと思う。
増えた画素によって、撮影後の処理時間は長くなり、バッテリーの持ちは良くなく、連続撮影するとセンサーに熱害の警告が出る。また、これは撮影者側の問題だが油断すると手ぶれのオンパレードであり、難物であったSD1よりさらに忍耐が必要なカメラに仕上がっている。
個人的には苦行になれたSIGMAユーザーだと自覚しているが、それでもなかなか厳しいカメラだと感じる。

現在Quattro Hはカメラボディが安くない価格で売られており、入手する際にはかなりの覚悟と出費が必要だ。ときどき安いsd Quattroボディを見ると再入手しようかと思うが踏み切れない。
古いSDシリーズは手元に残しているが、Quattroシリーズについては保留状態が続いている。
このページを創るために過去写真を現像していると、画質は悪くないんだなと後ろ髪を引かれることは事実である。

3.X3Fファイル

X3Fファイルは、R,G,Bの3色の情報を1ピクセル毎に保存しているため、通常のベイヤーセンサーの3倍のデータ量となる。

このX3Fを処理するSIGMA PHOTO PRO(以下、SPP)はSD9のころから使用しているが、不安定、動作が遅いと文句を言っていたが、2024年のM2 Pro搭載のMac miniで使用したところ、SPPの不用意なクラッシュはほとんど見られず、画像の処理速度も実用に十分な速度に達していることを実感した。PCのCPUパワー増大による処理速度向上の恩恵を感じる出来事であった。

フリーウェアのX3FをDNGに変換するユーティリティソフトも使用してみたが、使用した時期のバージョンではDNGに変換した後の画像をかなり処理しないとSPPと同じクオリティにすることが難しく、使いこなしが難しい印象だった。その後改良されているかは不明である。

DNG変換後の画像がSPPデフォルトと同等の画像を得ることができれば、他のソフトで微調整をするのが他のソフトウェアを使い慣れたユーザーには理想的な作業フローだが、そううまい話では無かった。変換ソフトは個人が作成したフリーウェアなので、利用者が文句を言う筋合いが無いことも確かである。

画像処理ソフトのAffinity Photoで現像ができることがわかったので、こちらのページでテストしてみた。こちらもSPPと同じ結果を得るためには、入念に調整方法を研究しなくてはいけないことはわかっているが、SPPがストレス無く調整した画像を出力できるようになったため、あまり深追いはしていない。SPPで出力したJPGをAffinity Photoで最終調整するのが今のところベターな作業フローだと考えている。

2024年現在、新規Foveonセンサーの開発は滞っているようである。今後、新しいX3Fデータに巡り会うことがあるのか、興味深く待っている。

4.DNGファイル

Quattroセンサー搭載カメラからRawデータに、従来のX3FとDNGデータの2形式から選択できるようになった。

dp Quattroシリーズの作るDNGデータは100MBになるため、撮影中のメディアへの書き込み速度は遅く、メモリーカード容量を45MB程度のX3Fより余計に容量を消費することになる。
SPPが快適に使える環境ならば、DNG記録にこだわる必要はないだろう。

DNGデータの容量が大きいのは、演算後の2,000万画素分のRGBデータと、演算前のB(青)2,000万画素、R(赤)500万画素 、G(緑)500万画素の両データを保存しているためかと考えたが、通常の2,000万画素のRawデータが20MB程度、演算前のX3F画像データが45MB程度なので、そのほかの付加情報を加えたとしても少し大きすぎる感じがする。

DNGファイルについては、企画提唱者のAdobe Systemsのサイトが参考になる。

5.sd Quattroに思うこと

sd QuattroはミラーレスカメラになったがマウントはシグマSAを引き継いだため、中途半端なカメラになってしまった。2012年にPENTAXがKマウントのままミラーレス化するというK-01で同じ試みをして、セールス的には大失敗した実績があるにもかかわらず、この形式に挑んだことは不思議でならない。しかし、2024年現在、K-01は生産数が少なかったためかプレミア価格で取引されているのは皮肉なものである。

2016年に自社開発のミラーレスマウントを開発して発売するのは無理と判断したことは賢明な判断だっただろうが、新センサーできちゃったから、とりあえずカメラを発売したいという欲求が抑えきれない、相変わらずのマーケティングではなく、自社の欲望に忠実なところにシグマスピリッツを感じる。

もちろんこれは結果論だが、2018年にはめでたくライカの提唱するLマウントアライアンスに加盟して、ミラーレスマウントを得ることができたので、2016年からの2年間はレンズ一体型のdp Quattroシリーズでしのいで、2018年のタイミングで満を持してQuattro Hセンサーを搭載したカメラをリリースしていればメーカー、ユーザーともに幸せだったと思わずにいられない。

Foveonセンサーで純正ライカレンズをAFで使える未来があったかもしれない。この未来は、Lマウントアライアンスが継続しているので、いずれフルサイズFoveonセンサーを積んだ、Lマウントカメラが発売されることを期待している。

2024年現在、シグマはLマウント向けカメラとしては、普通のベイヤーセンサーを採用して、メカシャッターレス、コンパクトボディという、スチル撮影よりも動画に振ったカメラを発売した。これも画素数を上げたモデルをリリースしただけで、後が続いていないので、シリーズの先行きは不明である。

第4世代Foveonセンサーが2016年に発売されて、2024年ですでに8年が経過している、デジタルカメラの画素数競争は終わりを迎えている現在、新しいセンサーとそれを搭載するカメラが本当に発売されるのか非常に興味深い。

仕様・比較

項目SD1SD1 Merrillsd Quattrosd Quattro H
カメラ有効画素数4,800万画素(総画素)
4,600万画素(有効画素)
(4,800×3,200×3層)
3320万画素(総画素)
2950万画素(有効画素)
4470万画素(総画素)
3860万画素(有効画素)
センサー第3世代
FOVEON X3®
(CMOS)
第4世代
FOVEON X3®
(CMOS)
センサーサイズ23.5×15.7mm
APS-C x1.5
23.4mm×15.5mm
APS-C x1.7
26.7mm×17.9mm
APS-H x1.3
マウントシグマSAバヨネットマウント
背面液晶3.0インチ・46万ドット3インチ・162万ドット
ファインダーペンタプリズム式一眼レフファインダー電子式ビューファインダー(約236万ドットカラー液晶)
バッテリーリチウムイオンバッテリー(BP-21 / BP-22)リチウムイオンバッテリー(BP-61)
外形寸法(mm)
幅 x 高さ x 奥行
145.5 × 113.5 × 80.0147 x 95.1 x 90.8
重量(g)約700g (電池除く)約625g (電池除く)
リリース年2011年6月10日2012年3月9日2016年7月7日2016年12月20日
価格(税別)Open
参考価格(70万円)
Open
参考価格(20万円)
Open
参考価格(¥81,000-)
Open
参考価格(¥126,800-)

オプション

  • 縦位置グリップ・PG-41
  • シグマSAマウントレンズ全種

参考文献・参考リンク

更新履歴

  • 2024.8.18
  • 2024.2.12:改稿
  • 2023.02.12:初稿

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  1. sd Quattro アマゾンアフィリエイトリンク ↩︎
  2. Quattroセンサーについては、シグマ社長のインタビューに詳しく説明されている ↩︎

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