LEICA SUMMICRON M 90mm (1st)
VISOFLEXに転用可能な大口径中望遠レンズ
ライカ・ズミクロン 90mm F2のレビューと写真作例
目次
ギャラリー
- ズミクロン 90mm F2の写真例(LEICA M9 +VISOFLEX 3型)
レビュー
1.使用感
ズミクロン 90mm F2のシルバー鏡筒は、Mマウント用の大口径中望遠レンズで、ここで紹介するフィルターサイズがE48のレンズは、鏡筒にシルバーとブラックがあり、レンズの光学部はMマウントヘリコイドにねじ込まれており、レンズ先端を持って回すとヘリコイドとレンズが分離する。
分離した先端のレンズ部分は、M型ライカを一眼レフカメラのように使用するためのビゾフレックスで使用するための専用ヘリコイドに装着することができる。
レンズはとても重みがあり、ガラスと鉄の塊りを感じるレンズだ。MマウントレンズとしてM型ライカカメラに装着するとレンズ側が重く重量バランスは良くない。
ファインダー倍率が高いカメラ以外では、90mmのファインダー枠は小さく、二重像合致式のピント合わせはピントあわせが難しい。そのため、本レンズはビゾフレックスヘリコイドにねじ込んで、M型ライカカメラにビゾフレックス機構を装着して、一眼レフカメラとして使用していた。2020年台であれば、ミラーレスカメラの高精細EVFを使用すればピント合わせは簡単だと思う。その場合、Mマウントでもビゾフレックスマウントでも使い勝手に差は無い。
結局、90mmを超える望遠レンズは、R型ライカのレンズが便利なのでM型レンズは処分してしまった。過去の写真を整理していると、ウェットな描写は現代レンズにはない味わいがある。本ページを書くために、レンズ仕様について調べていくと、一時嵌まったビゾフレックス沼に再び足を踏み入れそうになった。
2.レンズ概要
Mマウントのズミクロン 90mm F2は、1953年から製造されたMマウント用の中望遠レンズだ。
古いレンズにありがちな、レンズのモデルチェンジの変遷が複雑で、書籍などでの表記においても、レンズの世代表記などに揺れが見られる。これは、本レンズの発売がライカM3が発売される時期とかさなっており、多くのMマウントレンズが発売された時期なことも影響していると考えられる。
代表的な表記の揺れは、中古市場でときどき見かける、フード別付けの(フード型番:SOOZI)ズミクロンの扱いだ。このレンズのみ初代ズミクロン Mとする記述と、フード組み込みズミクロンのうちフィルター径がE48(48mm)のものは初代ズミクロンに含めるという記述がみられる。
下表に表記について1~4にまとめるが、レンズ構成でざっくりと分類しているのが表記1、表記2と3はビゾオプションの扱いによる分類、表記4は形状による分類となる。
初代 | 2代目 | 3代目 | 4代目 | 理由 | |
表記1 | フード別+E48+E49 | E55 | レンズ構成 | ||
表記2 | フード別+E48 | E49 | E55 | ビゾオプション | |
表記3 | フード別+E48前期 | E48後期+E49 | E55 | ビゾオプション細分化 | |
表記4 | フード別 | E48 | E49 | E55フード組み込み | 形状 |
3.ビゾフレックス
ビゾフレックスで本レンズを使うには、ビゾフレックス 2型の時代リリースされたヘリコイド(focusing adapter 16463・ZOOEP )を用意する必要がある。レンズ先端を16463・ZOOEPに装着するとビゾフレックス Mマウントのレンズとなる。
ビゾフレックスヘリコイド、16463(ZOOEP・シルバー)は、後述するエルマリート135mmに装着できないため初代ズミクロン専用と思われ、レンズにブラックバージョンがあるが16463のブラックは見たことがない。
この16463を眼鏡付きエルマリート M 135mmから取り外したレンズに嵌めようとしたが、ねじ込み部に邪魔な突起がありねじ込むことができなかった。
E49になった2代目ズミクロン M 90mm本体はブラックのみと考えられ、2代目ズミクロンをビゾフレックスで使用するためには、ヘリコイド・focusing adapter 16462・ブラックを用意する必要がある。このヘリコイドはエルマリート M 135mmで使用することもできる。
E49・2代目ズミクロンと眼鏡付きエルマリート M 135mmは、ズミクロンが1963年、エルマリートが1962年のリリースで同世代のレンズで、共通のヘリコイドでビゾフレックスに適用できることから、初代ズミクロンと、E49ズミクロンで世代をわけることの理由の一つになると考えている。
アダプター型番は2代目ズミクロン用が16462、初代ズミクロン用が16463と番号の逆転がおこっているのは少々不思議だが、この理由を説明する材料を持ち合わせていない。
三代目ズミクロンは、フィルター径がE55になりモダンな外観に変更された。レンズとヘリコイドと一体化し、分離してのVISOFLEXへ装着する機構は無くなった。レンズ構成もズミクロン R 90mmと同じものになっている。フードは組込み式で変わらないがフード形状はシンプルな段差のない1段の筒型フードになっている。
最短撮影距離を短縮する延長チューブOUEPOは黒と銀があり、ねじ込み式なので16463、16462のどちらにも使用できる。
参考リンクのLeica Wikiには、初代ズミクロン M 90mm、眼鏡付きエルマリート M 135mmなどで、VISOFLEXに装着する際はfocusing adapter 16464を使うように記載されているが、16464はエルマー65mmなどで使用するアダプターでズミクロン M 90mmは使えない。そのほか2代目ズミクロンの写真として最初期のSUMMICRON M90mmシルバーの外観写真が記載されているなど、Leica Wikiの記載も完全では無いと考える。
VISOFLEXマウントはフランジバックが長く様々なマウントアダプターを使うことができ、ライカ Rマウントアダプターを使用するとR型LEICAカメラで使用できる。ライカS(フランジバック 53mm)でM型ビゾフレックスレンズ(フランジバック 69mm・概算値)が使えるアダプターがあればよいと思うのだが、残念ながらL型ビゾフレックスレンズ用のマウントアダプターのみリリースされている。ライカSとビゾMで16mm程度の隙間があるため、どこかが作ってくれないのであれば3Dプリンターで作ることを考えよう。
仕様
項目 | 値 | 備考 |
焦点距離(mm) | 90 | |
最大絞り | 2 | |
最小絞り | 16 | |
レンズ構成 | 5群6枚 | |
絞り羽根 | 15枚 | |
最短撮影距離(m) | 1.0 | 全域カメラ距離計連動 |
レンズ長(mm) | 110 | マウント面からの距離 |
レンズ最大径(mm) | 66 | 三脚座を除く |
フィルター径(mm) | 48 | E48フィルター |
重量(g) | 660 | |
リリース年 | 1953年 |
参考文献・参考リンク
- SUMMICRON-M 90mm F2-1st@Leica wiki(English)
- SUMMICRON-M 90mm F2-2nd@Leica wiki(English)
- クラシックカメラ選書 19 ライカレンズの見分け方(朝日ソノラマ)・アマゾンアフィリエイトリンク
- 仕様の記載と仕様の違いが記述されており、レンズ描写への言及はない。
- 付録にレンズ構成図が載っている。
- ライカのレンズ (写真工業社)・アマゾンアフィリエイトリンク
更新履歴
- 2024.9.8
- 2024.04.30:更新
- 2023.6.6:ギャラリーと情報を更新
- 2022.9.1:初稿
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