パンケーキレンズ・ULTRON SL 40mm F2

パンケーキレンズ・ULTRON SL 40mm F2

ウルトロン 40mm F2 SL Aspherical のレビューと写真作例

目次

ギャラリー

  • 写真作例の撮影はSONY α900、FUJIFILM S3Pro、PENTAX K20D、SIGMA SD15

レビュー

Before imageAfter image

1.概要

ULTRON SL 40mm F2は、2002年にコシナがフォクトレンダーブランドで発売した一眼レフ(以下、SL)用レンズ。
比較的、レンズ長さが短くパンケーキを重ねたような姿から、パンケーキレンズと呼ばれる。

ページ題のマルチマウントは、このレンズが多彩なレンズマウントでリリースされたことに由来している(他のSLレンズも同じではあるけれど)。
リリースされたマウントは、M42、ニコンAi-S、キヤノンEF(EOS)、ミノルタ(ソニー)α、Pentax-K、Yashica Contax、オリンパスOM、ミノルタMD、キャノンFDなどである。

初期フォクトレンダーSLレンズは、電子接点はもたず、カメラ鏡筒は共通でマウント部だけ取り替えている。電子接点は持たずマニュアルで使用する。

最短撮影距離は40cmと、焦点距離10倍の法則にしたがったレンズになっている。後継レンズではクローズアップアダプターを同梱して最短撮影距離の短縮が図られた。最新モデルは鏡筒設計が見直されてレンズ単体で25cmまで寄れるレンズになっている。

レンズ構成は5群6枚のガウス型で、後端のレンズに非球面レンズを採用している。
レンズフードは、バヨネット・フードが二種類リリースされており、円筒型(LH-40S)と半球から四角をくりぬいたような形状(LH-40D)の二種類がある。

レンズ名のウルトロンは、過去のオリジナルULTRONのレンズスペックが50mm F2であることから、コシナ・フォクトレンダーレンズは焦点距離は無視して、開放F値が2付近のレンズにウルトロン・ブランドを用いている。

2.使用感

ULTRON SL 40mm F2は鏡筒のスタイリングが好みで、さまざまなサイズのイメージセンサーで利用した。

描写はコンパクトながら35mmフルサイズセンサーと積んだ、ソニー・α900の撮影結果を見てのとおり、写真周辺まできっちり解像しており、像に立体感もある。より小さいセンサーでも、センサーの個性を表現できるレンズだ。
おおきな癖のあるレンズではない。

レンズの操作性については、レンズの全長が短いためフォーカスリングの幅が狭くなっており、若干の使いづらさを感じるが慣れれば問題にはならない。絞りリングはレンズ付け根にあり、クリック感もしっかりしているため、不用意にまわってしまうようなことはない。

このレンズは35mm判フィルムもしくはフルフレームセンサーにおける焦点距離は40mm、それよりも小さいセンサーのカメラではセンサーサイズに応じてクロップされる。
使用していたカメラにおける35mm判換算の焦点距離は以下の通りである。

カメラ名メーカー名35mm判換算焦点距離
SD15シグマ(APS-C x1.7)68mm
GF1パナソニック(M4/3 x2)80mm
FinePix S3Proフジフィルム(APS-C x1.5)60mm
K20Dペンタックス(APS-C x1.5)60mm
α900ソニー(35mmフルフレーム)40mm
α700ソニー(APS-C x1.5)60mm

最初にM42マウント版を手に入れて、マウントアダプター経由で、上記カメラで使っていた。M42マウントは実絞りのみだが、非常につぶしがきくマウントだと実感できる。2024年現在であれば、ミラーレスカメラのEVFを使用する場合、実絞りでも何ら問題はない。

フジフィルム FINEPIX S3Proは、マウントのフランジバックの関係でM42マウントが利用できないため、ニコンFマウント版を別途買い求めた。

仕様にもあるとおり最短撮影距離が40cmとあと一歩踏み込めない。その欠点を後継レンズで改善されていることは嬉しいけれど、お気に入りだった初代のレンズ鏡筒と比べて、最新のレンズは鏡筒が大型化しており、コンパクトでは無くなっていることは残念だ。

3.まとめ

結論としてULTRON SL 40mm F2をまとめると、一眼レフ向けレンズとしては、癖の無い描写で安心して使用できる。後継のレンズは最短撮影距離が短縮されているが、鏡筒は大型化している。

仕様・比較

本レンズは外観と対応マウントを変更しながら現在も販売されている息の長いレンズだ。
このレンズは似たような名称で繰り返しリリースされているため、変遷がなかなか追いづらいため、仕様・比較の表に仕様をまとめている。
情報はコシナ公式サイト、配布されたリーフ(PDF)などから情報を転載した。
リリース順としてはSL、SLII、SLIIN、SLIIS or Bとなり、主な違いは以下の通りである。

  1. SLは電子接点を持たない完全なマニュアルレンズ
  2. SLIIはゴムローレットがちょっとチープな改良型、レンズマウントが整理され、ニコンAi-S(CPU対応)とペンタックスKAマウントに対応し専用クローズアップレンズが付属
  3. SLIINはニコンAi-S(CPU対応)とキヤノンEOS(電子接点あり)マウントに対応し専用クローズアップレンズが付属
  4. SLIIS or Bは、鏡筒が一新され大柄になったが、最短撮影距離がレンズ単体で0.25mに短縮
項目ウルトロン SLSL IISL II NSL IIS /SL IIB
焦点距離(mm)40
最大絞り2
最小絞り1622
絞り羽根9枚
レンズ構成5群6枚
最短撮影距離(m)0.40.380.25
オプション・クローズアップレンズなしあり
(0.45-0.25)
なし
レンズ長(mm)
Nikon Ai-Sマウント
29.524.537.5
レンズ最大径(mm)63.56363.666.3
フィルター径(mm)52
レンズマウント多くの一眼レフカメラニコン Ai-S
ペンタックスKA
キヤノンEF
ニコン Ai-S
キヤノンEF
ニコン Ai-S
CPU内蔵(Nikon Ai-S,EOS)なしあり
重量(g)255200180260
鏡筒色シルバー +ブラックブラックブラックブラック
リム色・ブラックかシルバー
レンズフードバヨネット式フード
LH-40S
LH-40D
ネジ式ドーム型フード丸型ネジ式フード LH-40IIS
備考ゴムローレット鏡筒が大型化
リリース年2002.052007.11.17(Nikon)
2007.12(Pentax)
2009.11(CANON)
2012.7.142017.9.7
希望小売価格(税別)45,000円50,000円53,000円60,000円

本レンズと同時期にリリースされたSLレンズは以下の7本である。

12mmと15mmはミラーアップして使用するレンズなので一般的な撮影に向いていない。実質40mmからはじまるレンズシリーズとなっている。後のSL IIシリーズでCOLOR SKOPAR 20mmCOLOR SKOPAR 28mmNOKTON 55mmとAuto Topkor 58mmを変更したNOKTON 58mmが追加され焦点距離のバリエーションが増える。

  1. ウルトラ・ワイド・ヘリアー 12mm(ミラーアップ専用)
  2. スーパー・ワイド・ヘリアー 15mm(ミラーアップ専用)
  3. Ultron(ウルトロン) 40mm
  4. COLOR HELIAR(カラーヘリアー) 75mm
  5. APO LANTHAR(アポランサー) 90mm
  6. Macro APO LANTHAR(マクロ・アポランサー) 125mm
  7. APO LANTHAR(アポランサー・アポランター) 180mm

ミラーアップ専用の2本以外はレンズデザインが統一されており、黒い鏡筒にフォーカスリングにシルバーのアクセントを入れたデザインは、クラシックとモダンが同居したデザインで好ましい。

項目ULTRONCOLOR HELIARAPO LANTHARMacro APO LANTHARAPO LANTHAR
焦点距離(mm)407590125180
最大絞り22.53.52.54
最小絞り1622
絞り羽根9
レンズ構成5群6枚9群11枚7群9枚
最短撮影距離(m)0.40.70.50.381.2
レンズ長(mm)
(Nikon Ai-S)
29.540.257.688.279
レンズ最大径(mm)63.57665.6
フィルター径(mm)52495849
重量(g)255250390690485
リリース年2002.052000.072002.032001.062003.08
定価¥45,000¥50,000¥55,000¥95,000¥65,000
  • 以下は初期にリリースされたコシナのフォクトレンダーブランド、一眼レフ向けレンズのリスト、15mmと12mmの2本は、ミラーアップして使う特殊レンズなので下表からは除外している。

参考情報

更新履歴

  • 2025.6.24
  • 2024.8.13
  • 2024.03.28:改稿
  • 2022.11.20:初稿

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