LEICA VARIO ELMARIT SL 24-90mm
光学式手ぶれ補正搭載標準ズームレンズ
ライカ バリオ・エルマリート 24-90mmのレビューと写真作例
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目次
ギャラリー
- 写真作例の撮影はLEICA SL typ601
レビュー
1.使用感
バリオ・エルマリート SL 24-90mm1は、LEICA SL typ6012を使っていたときに購入した。レンズの描写については特に驚きを感じるほどのことはないが、最近のズームレンズはよくできているなと感心する画像を得ることはできる。
購入したけれど、このレンズの稼働率が低かった理由は以下3点となる。
- 90mmより望遠を使うときは、アポ・エルマリート・90-280を使う
- 35mmより広角を使うときは、スーパー・エルマー・16-35を使う
- 35-90mmの間は、ライカRマウントの単焦点を使う
上述のように、このレンズのカバーしている範囲は、他の所有レンズで代替できてしまうことが主な理由で、あえてこれを持ち出すモチベーションがわかなかった。しかし、このレンズしか持っていない撮影者には重宝するレンズになる。
全長140mm、鏡筒径88mm、重量1.14kgの堂々としたレンズで、LEICA SL typ601などの大柄なカメラと装着した際の姿形はよいが、持ち運び時に収納するカメラバックは大型の物が必要で、手持ちで運ぶ際はとても重たい。マウントが同じLマウントなので、本レンズをLEICA Tに装着してみたが、レンズとカメラのバランスが悪く、通常使用することは無かった。
このレンズを含め、ライカAFレンズの怖いところはモーターの故障で、保証期間をすぎると修理金額が高額で修理期間もかかることだろう。ライカのAFレンズは中古市場でモーターの壊れたレンズを散見され、完動品でも今後の修理費を考えると怖くてなかなか手が出せない。本レンズはすでに手元にはない。
2.レンズ概要
バリオ・エルマリート 24-90mmはライカSL用のオートフォーカス(以下、AF)標準ズームレンズで、標準ズームレンズにしては珍しく、光学式手ぶれ補正を搭載しており、その恩恵は焦点距離の関係から望遠端の90mmである程度感じるが、広角端の24mmでは感じることはなかった。
レンズ構成は、15群18枚と現代レンズの典型的な多レンズ構成で、リアフォーカスを採用しフォーカス速度の高速化とフォーカス時にレンズ長は変化しないインターナルフォーカスとなっている。フォーカスリングはレンズ前方にあり距離指標がないことからフォーカスリングは物理的な機構ではなく、回転を電気信号に変えてフォーカスが動作しているはずだ。
中央後寄りの1枚の非球面レンズは手ぶれ補正の役割をになっている。
前玉はズームリングと連動してズーム時に鏡筒が伸びることで焦点距離が変化する。テレ端の90mmがもっともレンズ長が伸びる状態で、操作した感じからズームリングと鏡筒は機械的に連動していると考えられる。
AF合焦速度はなかなか高速で、LEICA SL typ601で撮影した際、AF合焦速度が遅くて困るような場面は無かった。AF合焦精度はカメラ側のセンサーの問題もあり、一概に評価しづらいが一般的な風景や人物が被写体では迷ったり外すことは無い。藪の奥にいる猫や鳥などの難しい被写体の場合は撮影者の意図通りには合焦しないが、MF割り込みで対処可能である。
ライカは標準ズームレンズとして万能に使えるように企画したレンズだと思うが、街中で使うには大きく目立つので、人混みの少ない風景撮影、スタジオ撮影など、落ち着いた空間での撮影に向いている。
3.競合レンズ
Lマウントアライアンスにおいて、35mm判フルサイズカメラ対応の標準ズームレンズは、シグマから3本、パナソニックから2本、ライカから2本リリースされている。
35mm判フルサイズ向けLマウントレンズはライカ SL typ601が発売された当初こそ、本ズームレンズとズミルックス SL 50mmしかなかったため、これを選択する必要があったが、2022年にシグマOEMと思われるF2.8通しのズームレンズ「Vario-Elmarit-SL 24-70 f/2.8 ASPH.」が低価格にてリリースされ、カメラバンドルレンズの座も奪われたため、本レンズの新品市場での役目を終えたと考えられる。
本レンズがリリースされたとき、ライカのオリバー・カルトナー氏3が「ズームレンズなのでF値が変化するのは合理的で当然」と述べていたのが印象に残っているが、F値通しのレンズをラインアップしたのは、F値が変動しない=高級レンズという慣習がマーケティング的に有効なのだろうと感じさせる。
その弊害として、ズームリングの回転方向がちぐはぐなことになっており、本レンズは従来のRマウント時代のライカ・ズームレンズに倣い、ワイド端から右回転でテレ端になる。シグマ製ズームレンズとそのシグマOEMと思われるズームレンズは、シグマ方式のズームレンズ回転方向であるため、ワイド端から左回転でテレ端になる。
器用な人には問題ないだろうが、若干不器用だと自認する筆者にとっては、この違いは戸惑うところである。パナソニックのLマウントズームレンズは、ライカと同じワイド端から右回転でテレ端になる。
また、赤バッチレンズには高価格という面ががあるため、シグマ純正のズームレンズは、同スペックでより安価に購入できる。2000年代のシグマレンズは物としてのクオリティ、撮影画像の品質も上がっているため、こちらを選択することも十分に検討に値する。
また、パナソニックのLマウント向け交換レンズ、Sシリーズ市場での存在感は薄いが必要な焦点距離は揃っており、ズームリングの回転方向がライカと揃っているというメリットもあるため、こちらも代替候補になる。
過去の言はおいて、しれっと新レンズを投入してくるところにミラーレスカメラへのライカの割り切りを感じる。35mmフルサイズのLマウントレンズについては、この傾向が加速しており、単焦点レンズ以外はほぼシグマレンズのバッチ変えとなっている。
これは、一眼レフのライカ S マウント用レンズは自社開発だったのとは対称的である。今後リリースが予想される、中判ミラーレスではどのような戦略をとるのか非常に興味深い。
仕様・比較
Items | VARIO ELMARIT 24-90 *1 | VARIO ELMARIT 24-70 *1 | SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art *1 | LUMIX S PRO 24-70mm F2.8 *1 |
焦点距離(mm) | 24-90 | 24-70 | ← | ← |
最大絞り | 2.8-4 | 2.8 | ← | ← |
最小絞り | 22 | ← | ← | ← |
絞り羽根 | – | 11 | ← | ← |
レンズ構成 | 15群18枚 | 15群19枚 | 15群19枚 | 16群18枚 |
最短撮影距離(m) | 0.3-0.45 | 0.18-0.38 | 0.17-0.34 | 0.37 |
レンズ長(mm) | 138 | 123 | 120.2 | 140 |
レンズ最大径(mm) | 88 | ← | ← | 91 |
フィルター径(mm) | 82 | ← | ← | ← |
レンズ手ぶれ補正 | あり | なし | ← | ← |
重量(g)・レンズのみ | 1140 | 856 | 745 | 935 |
リリース年 | 2015.11.28 | 2022.05 | 2024.05.20 | 2019.9.25 |
定価(円・税別) | ¥650,000- | ¥350,000- | ¥180,000- | ¥221,000- |
初期ライカ製・Lマウントレンズ
レンズ名 | SUPER VARIO ELMAR | VARIO ELMARIT | APO VARIO ELMARIT | SUMMILUX |
焦点距離(mm) | 16-35 | 24-90 | 90-280 | 50 |
最大絞り | 3.5-4.5 | 2.8-4.0 | 2.8-4.0 | 1.4 |
最小絞り | 22 | 22 | 22 | 22 |
レンズ構成 | 12群18枚 | 15群18枚 | 17群23枚 | 9群11枚 |
最短撮影距離(m) | 0.25- | 0.3-0.45 | 0.6-1.4 | 0.6- |
レンズ長(mm) | 123 | 138 | 238 | 124 |
レンズ最大径(mm) | 88 | 88 | 88 | 88 |
フィルター径(mm) | 82 | 82 | 82 | 82 |
レンズ手ぶれ補正 | 無し | 有り(3.5段分) | 有り(3.5段分) | 無し |
重量(g)・レンズのみ | 990 | 1,140 | 1,710 | 1,065 |
リリース年 | 2018.05.10 | 2015.11.28 | 2016.04.29 | 2016.12.28 |
定価(円・税別) | ¥760,000- | ¥650,000- | ¥820,000- | ¥770,000- |
参考文献・参考リンク
更新履歴
- 2024.6.29
- 2024.03.10
- 2023.09.02
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- 「LEICA SLリリース時インタビュー(日本語)」 ↩︎