VディスタゴンとライカSのマリアージュ

HASSELBLAD V DISTAGON 50mm T*をLEICA S Typ007で使用したレビューと写真作例
目次
ギャラリー
レビュー


1.概要
ディスタゴン 50mm C T*は、正確な販売開始年代は不明だが、1957年以降に作られた古いハッセルブラッドVマウントレンズ。
所有している個体は鏡筒色がブラックのT*コートあり、566xxxxのシリアルナンバーから1973年の製造とわかる。レンズ鏡筒に「LENS MADE IN WEST-GERMANY」と刻印されている。
レンズの詳細な仕様は表に載せているが、主な仕様を抜粋すると以下の通りである。
- 焦点距離は35mmフィルム判で50mm
- レンズ構成は7群7枚
- 絞り羽根は5枚
- 絞りはハーフストップなしの、F4〜F22までほぼ等間隔
- 電気接点無し
- フィルター径は67mmで一般的なネジ込みフィルター
- フードは67mmねじ込み式の円形フード、プラフードのように見えるが金属製
マウントアダプターはライカ純正の以下のアダプターを使用しているが、レンズシャッターを駆動する機構はなくカメラとレンズを繋ぐ筒である。

2.使用感
Vマウント・ディスタゴン 50mm T*は、ライカ Sシリーズで使用すると45mm x 30mmの中判デジタルセンサーなので、0.8倍の係数がかかり35mm判フィルム換算で焦点距離40mm相当になる。
若干のカビの入ったレンズだが、撮影結果をみると逆光時においても顕著なフレアや乱れはないので通常の使用には問題ない。焦点距離50mmで6×6中判フィルムをカバーするイメージサークルを持っているため、LEICA Sシリーズでの撮影結果は、歪みなし、周辺減光もほぼなし、端正な映像が撮影できる。
最短撮影距離は0.5mと特別寄れるわけではないが、焦点距離40mm相当で撮影するには必要十分な近接撮影能力だ。
購入時にレンズ側低速シャッタスピードが不安定とのことを聞いているが、LEICA S typ007で使うかぎり、撮影はカメラ側のフォーカルプレーンシャッターを使用するため、内蔵しているコンパーシャッターに出番はない。
フォーカスリングは一番手前にあり、マウントアダプターを経由すると多少マシになるが、若干回しづらい。無限から最短の0.5mまで250度程度の回転角がある。
また、ハッセルブラッド Vマウントレンズのオールドレンズは鏡筒を含めすべてが金属製なのは物としての質感はよいが、重いこととフォーカスリングも金属製で細かなギザギザ加工があり、微妙なフォーカス操作を長時間していると指が痛くなる。
このレンズは2本目だが、すでに所有しているV プラナー 80mmのフォーカスリングも同様に金属製で細かなギザギザ加工があるので同じ問題をかかえている。
レンズはかなりの安値で購入したので、前述のとおりレンズ内側にカビが見えるため、そのうち綺麗にしてやろうと思っている。
3.付加情報
HASSELBLAD VマウントのCシリーズの広角レンズは40mm、50mm、60mmの3種があり、3本のレンズサイズを比較すると、焦点距離の最も短い40mmが前玉が大きくレンズも大柄で、60mmがもっともコンパクト、50mmはその中間的なサイズとなる。いずれも35mm判カメラで使うには少し大きいサイズだ。
HASSELBLAD VマウントのCシリーズレンズのDISTAGON 50mmは、シルバー T*なし、シルバー T*あり、ブラック T*ありの3種類を中古市場で見る。
7群7枚のレンズ構成はT*コートのない古いレンズから変化はない。
1982年発売のDISTAGON 50mm CF以降の、CFi、ZVレンズは8群9枚のレンズ構成に変わっている。
古いDISTAGON 50mmでも中判デジタルセンサーであれば十分な写りをしているので、どこが改良されているのか興味がある。
COSINAが製造したと思われる、カール ツァイス Carl Zeiss Distagon T* 4/50 ZV Classic [ディスタゴン 50mm/F4.0 ZV(ハッセルブラッド)マウント]は、DISTAGON 50mm CF、CFiと同じレンズ構成だ。
ZVシリーズは2008年に発売されて2010年ごろに特売開始にになるまで、市場の評価はそれほど高くなく、特売になるまでほとんど売れなかったが、銀色の印象的な外観からか、2025年現在はプレミア価格で売られている。
とくに広角レンズの50mmは人気が高い。このZVシリーズは、50mm、120mm、180mmが発売され、プラナー 80mmはラインナップに無かった。何故ラインナップから外れたかの理由はわからないが、他のZV Classicシリーズと同じ意匠のプラナー 80mmがあれば、ZVシリーズの売れ行きも変わったかもしれない。
下図はCARL ZEISSのレンズデータベースより引用した。C DISTAGON 50mmの図はPDFが粗かったため図を修正している。レンズサイズと位置はおおよそで合わせているため厳密な比較ではない。あくまでこの程度違うとイメージするための図だ。


LEICA Sとハッセルブラッド Vレンズのマウントアダプターは、LEICA純正以外にMetabones社から同様の働きをする「ライカS用 ハッセルVアダプター」が発売されている。ライカ純正にくらべると安価なことが特徴だ。
仕様
項目 | D50-C | D50-ZV |
焦点距離(mm) | 50 | 50 |
最大絞り | 4 | 4 |
最小絞り | 22 | 32 |
レンズ構成 | 7群7枚 | 8群9枚 |
絞り羽根 | 5枚 | 5枚 |
最短撮影距離(m) | 0.5 | 0.5 |
レンズ長(mm) | 100 | 92.3 |
レンズ最大径(mm) | 78 | 80 |
フィルター径(mm) | 67 | 67 |
重量(kg) | 885 | 790 |
フード | ハッセルレンズフード (63) ネジ込み67mm C-50mm~60mm Distagon レンズ 用 | 専用バヨネットフード |
マウント | HASSELBLAD-V | HASSELBLAD-V |
製造年 | ? | 2010~ |
参考リンク
- ZEISS製造終了レンズ・データシート
- HASSELBLAD C DISTAGON 50mm F4
- HASSELBLAD CF DISTAGON 50mm F4
- CARL ZEISS ZV DISTAGON 50mm F4
- カール ツァイス Carl Zeiss Distagon T* 4/50 ZV Classic [ディスタゴン 50mm/F4.0 ZV(ハッセルブラッド)マウント]
- ハッセルブラッド製造年を調べる方法について記述されたページ
更新履歴
- 2025.03.15