LEITZ ELMAR 9cm F4

沈胴式コンパクト中望遠レンズ

ライツ(ライカ)・エルマー 9cmのレビューと写真作例

目次

ギャラリー

  • 写真作例の撮影はソニー・α7Sii
  • 写真作例の撮影はHEXAR RF LIMITED +FUJIFILM 400

レビュー

レビューは以下の3項目について記載した。

レンズ概要

紹介するレンズ、沈胴式エルマー 9cm1954年ライカ M3とほぼ同時に発売された、焦点距離90mmのライカMマウント望遠レンズだ。

  • レンズ名が9cm表記になっているのは、製造当時のドイツにおける単位表記がcgs単位系・センチメートル (centimeter ;長さ)、グラム (gram ; 質量)、秒 (second ;時間) であったためと言われている。ニコンも昔のSマウントレンズはcm表記であり、9cmも90mmも同じ意味になる。

ライカ M3は50mmのファインダー枠しかないため、構図の設定は外付けのファインダーでおこなっていた。そのかわりライカ M3は、M型ライカのなかで最も高いファインダー倍率0.85倍を持っているため、この焦点距離90mmのレンズもそれなりの精度でピント位置を合わせられたのだろう。

沈胴機構はレンズ鏡筒に刻まれた溝とヘリコイド部の突起をスムーズに移動し、とても気持ちよくレンズを縮めることができる。しかし、カメラによってはレンズを装着した状態で沈胴すると、カメラの測光機器、フィルムボックス壁、センサーボックス壁と干渉するため、縮めると多少コンパクトになるとは言えカメラ装着時にレンズを縮めたいと思うことない。

レンズは外観写真を見てわかるとおり、レンズ先端に絞りリング、レンズ付け根にフォーカスリングがあり、その距離がかなり離れているので、フォーカスの最中に絞りを変えようとすると、一度構えを外してから変更することになるため操作性は良いとは言えない。

フォーカスリングにはレンズを無限位置で固定するためのロックボタンがあるが、マニュアルフォーカスのねっとりとしたヘリコイドはロックボタンがなくても、自重で自然に繰り出すようなことはないため、あまり意味のある装備ではない。
フォーカスリングを近接方向に回すと艶のある銀色の鏡筒がせり出してくる。最短撮影距離1mになると鏡筒が前方に10mm程度繰り出される。

フルサイズミラーレスカメラとフィルムカメラの撮影結果

これを書いている2024年においては、デジタルカメラはSONY α7SiiのEVFを使用してピントをあわせたため、ピント位置には不安はなかった。手ぶれもボディ側の手ぶれ補正機構で安心して撮影できる。

それに対して、フィルムカメラはファインダー倍率が0.6倍と広角レンズを主体として考えられたカメラ、ヘキサーRFを使用したため、ピント調節には少し苦労した。作例は、それなりにピントの合っている写真を選んでいる。

描写はデジタルカメラ、フィルム撮影の両方で大きな破綻はなく、ピント面の解像度は十分で前後のボケみも嫌な感じはしない。最短撮影距離は1mと焦点距離9cmのレンズとしては標準的で、ミラーレスデジタルカメラであれば、延長ヘリコイドを使うなどして短縮することが可能だ。
α7Siiの作例はすべて、延長ヘリコイドを使用してマクロ撮影したものである。

古いレンズのため、すでに曇っているレンズが多く手元にあるレンズも曇っている。しかし、作例を見てわかるとおりよほどの逆光でなければ、それほど描写に影響は出ない。

中判デジタルカメラの撮影結果

HASSELBLAD X2Dで使用したところ、写真下左のように空をいれて撮るとイメージサークは44 x 33mmの中判センサーに対して足りていないが、写真下右のように周辺部分を落とした場面であれば十分に使える。いずれも絞り開放だがピント部の画像の切れは素晴らしく、1億画素にも十分に応えている。

ハッセルブラッド X2Dは、カメラボディにメカシャッターを持たないため、電子シャッターで撮影している。

ライカMマウントレンズ → 富士フイルムGFX Gマウント変換アダプターを使用することにより、フジフィルムの中判デジタルカメラ・GFXシリーズでの使用も可能と考える。

HASSELBLAD X2D 3:2トリミング
HASSELBLAD X2D撮影結果

仕様

項目エルマーエルマリートズミクロン
焦点距離9(cm)
最大絞り42.82
最小絞り322216/22
絞り羽根1012
レンズ構成3群4枚3群5枚5群6枚
最短撮影距離(m)1
レンズ長(mm)
マウント面からの距離
7994110
レンズ最大径(mm)525366
フィルターE39E48
フードIUFOO組み込み
マウントM
重量(g)335330660
リリース年195419581957

参考文献・参考リンク

更新履歴

  • 2024.8.7
  • 2024.05.02

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