SIGMA DP1, DP1s, DP1x
スナップシューターを期待し裏切られ
シグマ製コンパクトデジタルカメラ・DP1、DP1s、DP1x のレビューと写真作例
目次
ギャラリー
レビュー
1.カメラ概要
DP1シリーズは、デジタル一眼レフカメラのSD14 / SD15と同じ第2世代Foveonセンサーを搭載したコンパクトデジタルカメラで、無印:2008.3、s:2009.10、x:2010.9と約1年ごとにマイナーチェンジをおこなった。
記録画素数は450万画素 x3で実画素は450万画素だが、JPEG記録とSIGMA PhotoProでは画素を合成してより高画素の出力もできる。
DP1とDP2の違いはレンズだけで、DP1が16.6mm、DP2が24.2mmのレンズを積んでいた。
DP1、DP2シリーズのバッテリー型番は、BP-31で3.7V 1300mAhの仕様となっている。
DP1シリーズは画像記録にX3Fしか対応していないため画像処理はSIGMA PHOTO PRO(以下、SPP)のみとなる。
DP1sの改良点
- ISO感度50の追加
- ISO感度設定で「オート」を選択した場合、「ISO AUTO」と表示
- ホワイトバランス設定で「オート」を選択した場合「AWB」と表示
- オートブラケットの表示箇所を画面左上に変更
- MFモード時に表示されるスケールにft(フィート)表示を追加
- グリッド表示に画面表示ボタンを押すと、液晶モニターが「アイコン表示」、「グリッド表示」、「アイコン非表示」、「液晶モニター表示」、「液晶モニターOFF」の順に切り替え
情報ソース:デジカメwatch 2009年10月2日記事
DP1xの改良点
- 「QS」(クイックセット)ボタンの搭載
- 画像処理エンジン「TRUE II」の搭載
- 「カラーモード」の搭載
- 「マイセッティング」の搭載
- ボタンレイアウトを「DP2」と統一
情報ソース:デジカメwatch 2011年2月1日記事
2.使用感
Foveon特有のキレのある画像は、晴天下の光量のあるところで撮影した結果は今見ても十分に通用すると思うが、このカメラを使っていた当時メインの被写体としていた猫にDP1を向けてみたが悲しい結果しか得ることができなかった。
通常、猫は素早く動き、暗いところを好むなど、DP1殺しのシチュエーションが多く、昼間の日向で寝ている猫くらいしか撮れなかった。
発売前はとても期待したカメラだったが、無印DP1はとても動作が遅いカメラでカメラとして基本性能が初期のデジカメのようで使用には忍耐を要求された。
代表的な問題点としては、シャッターラグが大きい、液晶の追従性が悪い、オートホワイトバランスがいいかげん(Rawで撮れば後調整は可能)、バッテリーライフが短い、ISO感度を上げられない、手ぶれをしやすいなどがある。
こんなにコンパクトなカメラなのに、フィルム時代のRICOH GR1のようにカメラのコンパクトさを活かしてストリートスナップをするような用途には残念ながらまったく使えない代物だった。
よって、DP1は筆者にとっては落ち着いて風景をじっくり撮る用途でしか出番がなかった。しかし、それならば一眼レフを持ち出すほうがよい結果が得られるという矛盾を抱えることになる。
DP1、DP2シリーズはいずれの機種も電池持ちはよくなく、背面液晶のバッテリー表示が満タンでも電池電圧が足りなくなると突然死するという、SD9 / SD10と同じような症状を持っていた。
カメラの不良品も多く、時期によってはDP1を修理に出すとDP1xになって返ってくるという話も見聞きした。最初のDP1にせめてTrue IIを積んで、DP2シリーズとインターフェースを揃えた状態でリリースすれば、プロダクトの印象はそれほど悪くなかったと思うが、初代DP1 / DP2はリリース時期を煮詰めることができないシグマのやらかした歴史の一つだと感じる。デジタル一眼レフカメラのSD1でもリリース価格で煮詰めを誤った判断をして失敗していることも似たような事象だろう。
しかし、この時代にコンパクトデジカメのサイズにほぼAPS-Cセンサーを突っ込んだカメラをリリースしたことは素直に賞賛する。APS-Cクラスのセンサーを積んだカメラではライカX1が2009年、RICOHのGRが2013年発売であるため、2008年リリースの本カメラの先進性は際立っている。
筆者はDP1購入後にあきれて売り払ったが、その後DP1のマイナーバージョンアップ版DP1sはパスして、最終形のDP1xを入手した。Dp1xは画像処理チップがTrue IIになり、少しだけましなカメラになっていたが、DP1リリースから2年の時を経過してもそれほど使える代物にはならなかった。当時のシグマにはコンパクトデジタルカメラを成立させる基本的な要素技術が足りていなかったと思われる。
初代DPシリーズは発売から少したつとアウトレットのような形で中古市場に商品が流れ比較的安く買えた。2024年現在中古価格は上昇気味であるが、現在はシグマにて修理受付もされていないので、壊れたらおしまいとなっている。
カメラ本体の写真は、構図確認用にコシナ・ツァイスの25/28mmファインダーを載せている。外付けファインダーはシグマからの純正のビューファインダー、VF-11が販売されている。
外付けファインダーは構図を確認するだけでピント位置などカメラ側の情報は表示されない。
以前は純正バッテリー終売後に互換バッテリーを見かけたが、最近は互換バッテリーも市場から無くなっている(アマゾンに怪しげな互換品があるが怖いので紹介はしない)ため、中古のボディを手に入れた方はバッテリーの入手に苦労しそうな気がするので注意していただきたい。
3.X3Fファイル
X3Fファイルは、R,G,Bの3色の情報を1ピクセル毎に保存しているため、通常のベイヤーセンサーの3倍のデータ量となる。
このX3Fを処理するSIGMA PHOTO PRO(以下、SPP)はSD9のころから使用しているが、不安定、動作が遅いと文句を言っていたが、2024年のM2 Pro搭載のMac miniで使用したところ、SPPの不用意なクラッシュはほとんど見られず、画像の処理速度も実用に十分な速度に達していることを実感した。PCのCPUパワー増大による処理速度向上の恩恵を感じる出来事であった。
フリーウェアのX3FをDNGに変換するユーティリティソフトも使用してみたが、使用した時期のバージョンではDNGに変換した後の画像をかなり処理しないとSPPと同じクオリティにすることが難しく、使いこなしが難しい印象だった。その後改良されているかは不明である。
DNG変換後の画像がSPPデフォルトと同等の画像を得ることができれば、他のソフトで微調整をするのが他のソフトウェアを使い慣れたユーザーには理想的な作業フローだが、そううまい話では無かった。変換ソフトは個人が作成したフリーウェアなので、利用者が文句を言う筋合いが無いことも確かである。
画像処理ソフトのAffinity Photoで現像ができることがわかったので、こちらのページでテストしてみた。こちらもSPPと同じ結果を得るためには、入念に調整方法を研究しなくてはいけないことはわかっているが、SPPがストレス無く調整した画像を出力できるようになったため、あまり深追いはしていない。SPPで出力したJPGをAffinity Photoで最終調整するのが今のところベターな作業フローだと考えている。
2024年現在、新規Foveonセンサーの開発は滞っているようである。今後、新しいX3Fデータに巡り会うことがあるのか、興味深く待っている。
仕様・比較
項目 | DP1 | DP1s | DP1x |
カメラ有効画素数 | 有効画素:約1,406万画素 (2,652×1,768×3層) | ← | ← |
焦点距離 | 16.6mm F4 (35mmカメラ換算:28mm相当の画角) | ← | ← |
レンズ構成 | 5群6枚 | ← | ← |
撮像素子 | FOVEON X3®(CMOS)・20.7×13.8mm | ← | ← |
画像処理 | True | ← | True II |
背面液晶 | 2.5型・23万ドット | ← | ← |
ファインダー | なし | ← | ← |
バッテリー | リチウムイオンバッテリー(BP-31) | ← | ← |
外形寸法(mm) | 幅 x 高さ x 奥行 113.3mm × 59.5mm × 50.3mm | ← | ← |
重量(g) | 約250g (電池、メモリーカード除く) | ← | ← |
リリース年 | 2008年3月3日 | 2009年10月10日 | 2010年9月30日 |
価格 | 10万円(Open) | 54,800(Open) | 72,800(Open) |
オプション
- フード:HA-11 (リンク先はアマゾン・アフィリエイトリンク)
- ファインダー:VF-11(リンク先はアマゾン・アフィリエイトリンク)
- バッテリー:BP-31(終売)
- BP-31用 バッテリチャージャー:BC-31
参考文献・参考リンク
更新履歴
- 2024.8.17
- 2024.06.26:改稿
- 2024.03.27:改稿
- 2023.01.01:初稿
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