SIGMA SD9

世界初FOVEON搭載一眼レフカメラ

シグマ・SD9 を使用したレビューと写真作例

目次

ギャラリー

  • 写真作例はAPO-LANTHAR 180mm F4 Close Focus SLを使用した。

レビュー

1.概要

SD9は2002年リリースされたシグマ製の第一世代Foveonセンサーを搭載したデジタルカメラ。
シグマ社以外が採用しなかったFoveon社(後にシグマによって買収され子会社となる)のFoveon 3層センサーを搭載した

第一世代Foveonセンサーは300万画素 x3で適正に出力できる実画素は300万画素だが、RGBそれぞれの生データを保管しており、データ量は通常の300万画素の3倍あり、現像ソフトウェアのSIGMA Photo Proで処理することにより、画素数を増やして出力することもできた。

ファインダーはフィルムカメラSA-7のものを流用しているようで、35mmフルサイズのファインダーで周辺部をマスクしたスポーツファインダーと呼ばれるファインダーを採用する。

SD9の電源部分は、カメラ駆動用の単三形電池を4本、もしくはCR-V3は2本と、カメラ制御用にCR-123Vを2本が必要だ。

2.使用感

SD9はシグマが初めて開発したデジタルカメラで初号機にしてはよくやっているが、正直不具合が多いカメラだった。

とにかく、このカメラは動作レスポンスにおいては忍耐の塊で、撮影後の現像も2000年代のPCでSIGMA Photo Proを使用するのはとても忍耐を要した。少々動作の遅いカメラを使ってもなんとも思わなくなったのはこのカメラを使ったおかげだ。

SD9が採用しているスポーツファインダーは、35mmフルサイズの流用なので、否定的な意見を目にすることもあったが、個人的には写らないところが見えるので、動体を撮影する際には重宝した。

このカメラの最大の難点は電源周りだ。カメラ駆動側の単三形電池は電池一本あたりの電圧が1.5Vを下回ると、カメラ駆動の電圧が足りなくなりカメラが動作しなくなるので、電池電圧1.2Vのニッケル水素電池はほとんど使い物にならなかった。

使い捨て電池でコストはかかるがCR-V3を2本使うのが動作安定上はもっともよかった。2024年現在、CR-V3の価格が上がり入手も難しくなってきたので、現在は単三リチウム電池を使用しているがこちらもいつまで入手可能かは不透明である。

充電式CR-V3も市場にはあるが、テスターで計測すると電池電圧が1.5Vを超える電池が多くカメラ基板やセンサーなど電気で駆動している箇所へのダメージが心配される。

カメラ制御に必要なCR-123Vはそれほど減らないので、リチウム電池を使っていて問題はない。

SD9の画質は2020年代においても使用目的に合致すれば十分に使える画像を得ることができる。
とくに色分離が求められる境目のはっきりした風景、野鳥は、ブレていない画像は当時のローパスフィルターを搭載した600万画素の画像とは一線を画していた。

時代が進んでセンサーの高画素化とローパスフィルターレスのベイヤーセンサーが出てくると、それほどFoveonにこだわらなくても良いかと思うようになったが、それでも同じ被写体を撮り比べると色分離はFoveonがよいため、歴代のFoveonセンサー機は一通り使った。

SIGMA BP-11
SIGMA BP-11 チャージャー

3.付加情報

SD9を語るとSD10と接続するので、以前は同ページにしていたが、2023年にジャンク品のSD9を回収したので、あらためて別ページをおこした。内容が一部重複しているのはそのためである。
ジャンクのSD9はやはりジャンクで、センサーが死んでいるのか、回路が死んでいるのか、まともな画像は出てこなかった。

SD9は2002年当時の一眼レフカメラの中で約20万円というエントリーレベルの価格で発売された。当時の一般的な撮影者であれば、フィルム一眼レフの資産があるため、CANON、NIKONを買うことが一般的な時代であった。

FOVEONセンサーの原理にひかれて、SD9を発売直後に上野のヨドバシカメラで購入した。
当時このカメラを買う好き者はそういないようでカメラ売り場の人から名刺をいただいた。
後述する電源周りの不具合でヨドバシカメラ上野にはちょくちょく連絡したが不具合の多さから販売店を通すのが面倒になり、直接シグマとやりとりするようになった。
シグマSAマウントのカメラなので交換レンズの入手に難があり大阪のカメラ屋から通販で買っていた。

この3層センサーの描き出す独特の描写はシグママニアを生みだした。一時期はネット掲示板で様々な情報が飛び交っていた。

シグマSAマウントは、フランジバックは異なるが形状はPentax-Kマウントと互換性があり、PENTAX のK-M42アダプターを介してM42マウントレンズを使うことができた。フランジバックはSAマウント=44mm、Kマウント=45.5mmと1.5mmの差があるけれど、M42マウントの古いレンズはオーバーインフのものが多くピント合わせで実用上問題になることは少なかった。
また、Penta-Kマウントレンズも絞りレバーなどの干渉物が無ければ、SD9/SD10装着でき使うことができた。

SD9リリースから少しすると、SA-M42マウントアダプター(CSM42)をリリースする趣味の人がいたため、それを利用すると正しいフランジバックでM42レンズを利用することもできた。
下写真の左写真の右の物は、LEICA R-VISOマウントアダプター 14167のライカ-Rマウント部をM42に改造した物、中古で購入したが、これによりLEICA VISOレンズがSIGMA SDシリーズで使えるようになった。Elamar 65mm Viso、Hektor 125mm VisoなどをSDシリーズで使っていた。
SA-NikonFマウントアダプターをリリースする人もおり、NIKON AI 85mm/F1.4を使っていた時期もあった。こちらは、SD9、SD10だけが持つマウント周囲の外爪を利用したアダプターであったため、SD14以降のカメラでは使えなくなった。SD9/SD10の外爪はシグマ自身も使わなかったオプションなので、廃止されるのも仕方が無いとは思うが、Nikon-Fアダプターが使えなくなったのは残念だった。
また、本カメラのSAマウントをCANON-EFマウントに改造するという計画もあり、少額出資してみたが計画は頓挫し出資金は返ってきた。今では考えられない牧歌的な時代である。

SIGMA-SA/M42マウントアダプター

SIGMA-SA/NIKON-Fマウントアダプター

本ページを作るために、久々にMacでSIGMA PhotoPro 6.8.2を起動してSD9画像を現像しようとしたらエラーでできなかった。Windows版では現像できたので問題はないが、それにしてもSIGMA Photo Proはかゆいところに手が届かないソフトウェアから脱却できないと感じる(フォルダ指定がルートになっているだけで落ちるなど)。SDシリーズの色に惚れながら、このソフトウェアのために脱落したシグマユーザーは結構いると思う。QuattroシリーズになってからDNGに対応しているのはうれしいが、DNGがX3Fと等価なのかわからないので気持ちの悪さはある。

SIGMA PhotoProだが、2024年にM2 Pro 32GBのMac mini *1ではSD1のX3Fを扱うぶんには快調に動作しており驚いた。CPUパワーの向上がSPPの処理速度に追いついたようだ。あいかわらず若干の使いづらさはあるが、以前よりは確実に快適に使えるようになったと感じる。 *1:アマゾンアフィリエイトリンク

仕様

項目SD9SD10SD14SD15
カメラ有効画素数1,029万画素(有効画素) (2,268×1,512×3層)1,406万画素(有効画素)
(2,652×1,768×3層)
センサー第1世代
FOVEON X3®
(CMOS)
第2世代
FOVEON X3®
(CMOS)
センサーサイズ20.7×13.8mm
APS-C x1.7
マウントシグマSAバヨネットマウント
背面液晶1.8インチ
低温ポリシリコンTFTカラー液晶モニタ
約13万画素
2.5インチ
約15万画素
3.0インチ
約46万ドット
ファインダーペンタプリズム式一眼レフファインダー
バッファメモリ不明不明正確な数値は不明SD14の2倍
画像処理エンジン名称なしTRUE II
バッテリーメイン
リチウムイオンバッテリー(BP-11)
3Vリチウム電池 (CR-V3) 2本
単3型リチウム電池4本
単3型ニッケル水素電池4本
単3型アルカリ電池4本

サブ
3Vリチウム電池(CR123Aタイプ2個)
リチウムイオンバッテリー(BP-11)
3Vリチウム電池 (CR-V3) 2本
単3型リチウム電池4本
単3型ニッケル水素電池4本
単3型アルカリ電池4本
リチウムイオンバッテリー(BP-21/BP-22)
記録メディアコンパクトフラッシュ
マイクロドライブ
コンパクトフラッシュ(32GBまで)SDカード(SDHCまで)
外形寸法(mm)
幅 x 高さ x 奥行
152mm × 120mm × 79mm 144 × 107.3 × 80.5mm
重量(g)約805g (電池除く)約785g (電池除く)約700g (電池除く)約680g (電池除く)
リリース年2002年2003年2007年11月2010年6月25日

オプション

参考文献・参考リンク

更新

  • 2025.1.5
  • 2024.02.12:改稿
  • 2023.10.12:初稿

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