SUMMICRON R 35mm (Typ-I)

伝説の9枚玉とは呼ばれない

ライカ・ズミクロン35mm / F2(旧型)のレビューと写真作例

目次

ギャラリー

  • 写真作例の撮影はLEICA SL Typ601
  • 写真作例の撮影はCANON EOS 1Ds MK-III

レビュー

with LEICA R8

1.概要

ズミクロン R 35mm I型は1970年にリリースされ、約1.1万本製造された、焦点距離35mmのライカ Rマウントレンズ。

レンズ構成は7群9枚、重量は500gあり、絞り羽根は8枚だ。

紹介するI型レンズは1カム、2カム、3カムがリリースされている。
フードは角形の12509でシリーズ7フィルターを内蔵することでき、PLフィルター用の回転機構も装備している。フード 12509はエルマリート R 28mm(初代)、エルマリート R 35mm(2代目)と共通だ。

2.使用感

写りは設計が古いレンズなので周辺部に粗が見える
中央部の先鋭さとくらべると四隅の解像感はあきらかに落ちている。中央付近の主題を生かした場面で生きるレンズだ。35mm判全面において均質な画像を得たいときは、最新のレンズを使うのがベターだ。

このように写りは古いが前玉が大きく湾曲した姿は所有欲をそそる。

フードを外すと、先すぼみ(先細とも呼ばれる)でフード固定ピンがあり、ズミルックス R 50mm(最初期)、エルマリート R 28mm(初代)、エルマリート R 35mm(2代目)と近い意匠を持つ。

この時代のRレンズは量産工業製品デザインとは趣の異なる凹凸のある個性的な形状をしており、エルマリート R 19mm(初代)、エルマリート R 24mm、スーパー・アンギュロン 21mm F3.4、F4と並んでよいデザインだ。

所有しているレンズは3カムをROM端子付きに改造したレンズで、ebayでもそれほど見かけないので珍しいレンズと言うことになる。銀座の十字のついた黄色いお店で委託に出ていたものを購入した。

3.付加情報

  • HASSELBLAD X2D

35mm判でさえ、周辺部は甘いため、よりセンサーサイズの大きな、中判デジタルカメラ HASSELBLAD X2Dで使用した場合は、周辺減光はそれほど気にならないが、四隅の粗はより目立つ結果となる。

HASSELBLAD X2D 撮影結果
  • Mマウントズミクロン

Mマウント・初代ズミクロンは伝説の8枚玉などとたいそうな異名があるが、Rマウントの初代ズミクロンには、指したる異名も伝説も残っていない。II型よりあきらかにコストのかかった鏡筒は物としての所有欲をそそるが、Rマウントの一部マニアにしか人気がないところが、異名などがつきづらい要因の一つだと思われる。

  • 新型Rマウント・ズミクロン 35mm

後継のII型(新型)ズミクロン R 35mmは鏡筒がコンパクトになり、レンズ枚数が削減され重量は軽くなり、絞り羽根の枚数が削減されており、I型とくらべるとコストダウンしている。
このII型の発売は1976年でLEICA R3と同時期で、レンズ鏡筒のデザインはLEICA R3以降のカメラにマッチするライカRレンズにおけるモダンなデザインが採用されている。

  • 類似したレンズ

初代Rマウントのズミクロン 35mmは7群9枚のレンズ構成となっており、同様の7群9枚のレンズとして、COSINAがCarl ZEISSブランドの一眼レフ向けにリリースした、DISTAGON 35mm F2がある。

このDISTAGON 35mm F2は、2006年にCPU非内蔵のニコンFマウント、M42マウント、その少し後にペンタックスKマウントが発売された。
2010年にレンズ構成は同じでCPUを内蔵したニコンF、キヤノンEFが発売された。
2016年にレンズ構成は同じで外装とブランド名をMILVUSに変更し、CPUを内蔵したニコンF、キヤノンEFが発売された。

旧ズミクロンのレンズ構成図は、季刊クラシックカメラ No.17「特集 ライカの1眼レフ Rレンズ対Mレンズ」 のP51に記載があるので比べてみると、ズミクロン R 35mm(Old)は鏡筒全体にレンズが散らばる設計で、ディスタゴン(現:ミルバス)35mm F2は後玉にレンズを集めた設計になっておりまったく異なることがわかる。しかし、字面だけみると同じように見えるのは興味深い。

DISTAGON 35mm F2・図はZeiss公式PDFより引用

仕様

レンズ名SUMMICRON 35mm I型SUMMICRON 35mm II型DISTAGON 35mm
焦点距離(mm)353535
最大絞り222
最小絞り161622
絞り羽根枚数869
レンズ構成7群9枚6群6枚7群9枚
最短撮影距離(m)0.30.30.3
レンズ長(mm)61.557.572(Nikon-F)
レンズ最大径(mm)666663.4(Nikon-F)
フード型番12509Build inバヨネット式円筒フード
フィルター径(mm)シリーズ7(E48)E5558
重量(g)508
(フード+フィルター569)
430530(Nikon-F)
レンズマウントLEICA RLEICA RNIKON-F
製造本数11,31629,839
リリース年197019762006

参考文献・参考リンク

更新

  • 2025.1.13
  • 2024.02.26
  • 2023.06.14

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