LEICA ELMAR 9cm RIGID
固定鏡筒・中望遠レンズ
LEICA ELMAR L 9cm F4のレビューと写真作例
目次
ギャラリー
- 写真作例の撮影はソニー・α7Sii
レビュー
1.概要
固定鏡筒エルマー 9cmは1933年に発売された、焦点距離90mmのライカ L39スクリューマウント望遠レンズだ。
- レンズ名が9cm表記になっているのは、製造当時のドイツにおける単位表記がcgs単位系・センチメートル (centimeter ;長さ)、グラム (gram ; 質量)、秒 (second ;時間) であったためと言われている。ニコンも昔のSマウントレンズはcm表記であり、9cmも90mmも同じ意味になる。
レンズ構成は3群4枚、絞り羽根は10枚、最短撮影距離は1mとなっている。
L39スクリューマウントなので、Mマウントカメラで使用する場合は、M/L変換リングが必要となる。
2.使用感
レンズは外観写真を見てわかるとおり、レンズ先端に絞りリング、レンズ中央部に幅広のフォーカスリングがありフォーカスの操作性はよい。
写りに関しては、以前使用した沈胴式エルマー9cmと違いはない。1933年ですでにこの完成度なので、トリプレットエルマー 90mmが発売されるまでこのままだったこともうなずける。
他の90mmも同様だが焦点距離9cmを越えるとM型ライカの二重像合致式のピント合わせはピント精度に不安がある。
ミラーレスデジタルカメラ、SONY α7SiiのEVFを使用した場合、ピント拡大機能によりピント位置に不安はなかった。望遠レンズで問題となる手ぶれもボディ側の手ぶれ補正機構で安心して撮影できた。
描写はデジタルカメラでは大きな破綻はなく、ピント面の解像度は十分で前後のボケみも嫌な感じはしない。最短撮影距離は1mと焦点距離9cmのレンズとしては標準的で、ミラーレスデジタルカメラであれば、延長ヘリコイドを使うなどして短縮することが可能だ。
α7Siiの作例の一部は延長ヘリコイドを使用してマクロ撮影したものである。
古いレンズのため、すでに曇っているレンズが多く手元にあるレンズも曇っている。しかし、作例を見てわかるとおりよほどの逆光でなければ描写に影響は出ない。
3.付加情報
・VISOFLEX
固定鏡筒のエルマー 9cmはフォーカス部とレンズ部を分離できるが、エルマー用のVISO(ビゾ)ヘリコイドリング、「OUAGO」(16467、16467N)に装着したところ、無限遠に合焦させることはできず、無限位置が2m程度で合焦する近接撮影レンズとなる。
以前使用したトリプレット エルマー 9cmは同様にレンズ部とフォーカス部が分離でき、レンズ部を「OUAGO」に装着するとVISOレンズとして無限遠から使用できたが、このレンズは手持ちの「OUAGO」に適合していない。「OUAGO」は以前購入した際にトリプレットレンズに適合する「OUAGO」を探した記憶があるため、レンズの製造年代によって同じコード名の「OUAGO」も異なる仕様が混じっていると考えられる。
ミラーレスカメラで使う場合、VISOヘリコイドを使う意味はほとんど無いが、VISOマウントに変換できると、M42マウントカメラでレンズを使用できるため、CANON、PENTAX、SIGMA、MINOLTA(SONY)の一眼レフカメラでレンズが使えるようになる。
そのためにVISOマウントへの変換を手持ちの機器で試したが、残念ながら無限遠が出る組み合わせにできなかった。古いエルマーレンズに適合する「OUAGO」を探す必要がありそうだ。
LEICA Wikiのエルマー 9cmの説明には、ヘリコイド16464(OTZFO)が使えると記述があるが、このエルマー9cmを直接装着することができず、延長チューブを足すと装着できるが、延長チューブを足した影響もあり、こちらも無限遠は出ないため近接撮影専用レンズとなる。
ヘリコイド16464(OTZFO)は、VISO エルマー 65mmとテレ・エルマー 13.5cm(135mm)で使用する。
・中判デジタルカメラ
センサーサイズ44mm x 33mmの中判デジタルカメラ、HASSELBLAD X2Dで使用したところ、写真下左のように空をいれて撮るとイメージサークは44 x 33mmの中判センサーに対して足りていない、これは沈胴鏡筒のエルマー 9cmと同じである。
絞り開放の撮影結果をみるかぎりピント部の画像の切れは素晴らしく、1億画素にも十分に応えている。
ハッセルブラッド X2Dは、カメラボディにメカシャッターを持たないため、電子シャッターで撮影している。
ライカMマウントレンズ → 富士フイルムGFX Gマウント変換アダプターを使用することにより、フジフィルムの中判デジタルカメラ・GFXシリーズでの使用も可能と考える。
仕様
項目 | エルマー (固定) | エルマリート | ズミクロン |
焦点距離 | 9(cm) | 90(mm) | 90(mm) |
最大絞り | 4 | 2.8 | 2 |
最小絞り | 32 | 22 | 16/22 |
絞り羽根 | 10 | 12 | 12 |
レンズ構成 | 3群4枚 | 3群5枚 | 5群6枚 |
最短撮影距離(m) | 1 | 1 | 1 |
レンズ長(mm) マウント面からの距離 | 79 | 94 | 110 |
レンズ最大径(mm) | 48 | 53 | 66 |
フィルター | – | E39 | E48 |
フード | – | IUFOO | 組み込み |
マウント | M | M | M |
重量(g) | 335 (MLリング込み) | 330 | 660 |
リリース年 | 1933 | 1958 | 1957 |
参考文献・参考リンク
- Leica Wiki ELMAR 9cm F4
- クラシックカメラ選書 19 ライカレンズの見分け方(朝日ソノラマ)・アマゾンアフィリエイトリンク
- 仕様の記載と仕様の違いが記述されており、レンズ描写への言及はない。
- 付録にレンズ構成図が載っている。
- ライカのレンズ (写真工業社)・アマゾンアフィリエイトリンク
- 沈胴式エルマーはP114に吉野信 氏のレビューあり
- 沈胴式エルマー9cm
- トリプレットエルマー 90mm
- テレ・エルマー 13.5cm
更新履歴
- 2024.1.10
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